第2話 おつかい
2おつかい
俺はカロン8才。
10才と嘘ついてハンター登録して2カ月が経った。年齢
みんなうすうす気づいているだろうに。ありがたや、ありがたや。
夕刻前、今日は仕事の〆はギルマスのお使いで孤児院に手紙を届けに向かっている。まさか俺を売るのか?って目で見たら違う違うと言われた。ホッ
ギルドは街の東、孤児院は街の西エリアの手前南より。小さい街だからあっという間。孤児院まであと少しの所で子供がいじめをしているような声がきこえる。どうやら孤児院の子を親なしだの罵っているようす。
角を曲がって目に入ったのは、小さい子供2人に対して、12才くらいのジャイ〇ンx1、スネ〇x2がいた。
俺の中のおっさんがカッとなって叫ぶ。
「てめえらなにしてんだ!」
びくっとして、ジャイ〇ンとスネ〇ズがこちらを見る。俺が小さい子供だと侮ったのか、おめーなまいきだと突っかかってくる。
「おめーら、自分より弱い者を相手に恥ずかしくないのか!」
うるせー!とジャイ〇ンが殴りかかって来たので、奴の拳と俺の頭の間に魔法で土の壁を出す「シールド」
そして頭を差し出す。
ガスッ
「いってーーーー」
瞬時に魔法を消す。ジャイ〇ンは痛めた拳を抱え泣きながら走り去る。それを俺は鼻息荒く見送り、子供たちのところに向かう。
「だいじょぶか。おまえら孤児院の子か。俺も孤児院にむかうところだからいっしょにいこう」
子供たちに手紙をひらひら見せ、手をつなぎ孤児院に一緒に歩いていく。
白髪七三の眼鏡おじいさん神父と赤毛の若いシスターに挨拶して、手紙を渡し先ほどの出来事を報告しておく。
お二人とも眉毛をハの字にして聞いてくれる。神様にお祈りして帰ることにする。
実はこの世界の神様のこと詳しく知らない。小さな村の出だし。転生した時の記憶がない。どこかの異世界小説のように神様にあってスキルをおねだりした、なんてことも覚えてない。
試しに小さな声で“ステータスオープン”といってみたが何も起きなかった。
今度時間ができたら神父様にこの世界の神様のこと聞いてみることにして、今日のところは
「生きてます。楽しみます。」
と神様に伝えてギルドに戻ることにした。
ギルドに戻ると街の大人やハンターのおっさんなどが何人もいてザワザワしてる。ジャイ〇ンがいる。その横のデケエおやじが、うちの息子を傷つけた野郎はどこのどいつだ!と吠えている。俺だね。
「こいつだ!」
ジャイ〇ンが俺を左手で指さす、痛ましい右手はむき出しにして被害者アピールか。
ここハンターギルド、ソンリッサ支部のギルドマスター、ソリコミ禿げのツンツン白髪頭をしたマッチョジジィ。こちらに顔を向け聞いてきた。
「カロン、おめーがこの子の拳を傷つけたのか?」
「うん」
ここで「でも、だって」は悪手。言いたいこともあるがグッとこらえて
言いわけをせずyesとだけ答える。
親父が鬼の形相でお前かーと睨んでくる。落とし前だとか何とかワーワーわめいてる。親父の演説が終わったところで一言。
「おっさん、なんで頭とか顔じゃなくて拳をケガしたんだと聞いたか?」
みんなが気づく、先に手を出したのジャイ〇ンじゃね?と。
それでもケガさせた方が悪いグチグチ言ってる親父。あ、こいつ素直に否を認められないタイプの奴か。理屈で責めても意味ないやつだ。めんどくせえ
「おめえのガキが小さい孤児院の子をいじめてたからだろうが!
自分の子供の目をしっかり見つめて本当かどうか聞いてみろ!おめーみたいな親がいるから乱暴な子に育つんだろうが!」
親父以上の怒りをぶつける。
言ってやったぜ!ムフー!
時間が止まる。
親父が静かにしゃがんでジャイ〇ンにぼそぼそ聴いている。時折うなずくジャイ〇ン。
ゴンッ
「すいませんでした。」
親父がジャイ〇ンの頭をつかんで下げさせ、自分も頭を下げる。おー、否を認めた。周りの圧が強かったからじゃないと信じたい。
「男が弱い者をいじめたらいかんな。ドリー、ポーションかけてやれ。」
ギルマスが締めて一件落着。ふぅ。これでジャイ〇ン変わるかなー?親が変われば変わるかなー?まぁいいか。あいつが変わるなんて期待せずに孤児院の子を鍛えてやるかな。先ずは俺か!? ぷぷぷ。
あーお腹空いた、と酒場に向かおうとするとムンズと襟首をつかまれて宙ぶらりんな俺。
「おめーはこっちだ」
と執務室に連行される。
ギルマスの執務室。ソファーに座らされ向いにギルマス、その後ろに職員のおじちゃんが立ってる。白髪眼鏡は神父様に似ているがこちらはオールバック。通称サブマス。こんな小さな街にサブマスは存在しない。俺だけがそう呼んでいる。
「で、どうやったらあんなケガになるんだ? ふつうの頭突きくらいじゃあんなにはならねーぞ」
あーばれちったかー。目を伏せ小さくなる。
「おぅおう、嘘はいけねーぞ。目を見て話せ」
ぎゃっ、俺のさっきのセリフを逆手に取られる。溜息一つ覚悟を決める。
「領主様に言わないって約束してくれる?」
「なんでだ?…まあいい約束してやる」
後ろのサブマスもうなずく。
「殴られそうになったから、頭にシールド張った。こうやって」
俺は小さな円いお皿型のシールドの土魔法を左頭頂部あたりに展開する。ギルマスが興味深そうにシールドをコンコン叩いている。
「おめー、おもしれーことするな。土魔法か?ここにストーン撃ってみろ」
席を立って壁際に
「ストーンボールでもいい?」
ストーンボールとはストーンの次に覚える魔法、野球ボールくらいの球をそれこそピッチャーが投げる速度くらいで射出する。俺の初級魔法はちょっと変則なのでお見せできないのでストーンボールを希望する。師匠には他人に見せるならストーンボールにしておけ、もっと大人になって強くなるまで他人に見せるな厳命されている。俺も席を立ちギルマスから遠ざかるように反対の壁際に立つ。
「ん、いいぞ」
弱めに撃つから衝撃を逃がしてねと言って手の平をギルマスに向け押し出す。
「ボール」
パアン、ゴン
ギルマスの手は強くはじかれ、ボールは斜め後ろの壁にあたる。
加減をしたつもりだが、ちょっと速かったかな?
「小僧…本気で撃ったらどれくらいの威力だ?」
「さぁ?ボアなら2発ってとこ(嘘、本当は1発。これも師匠の教え)」
ニヤリと笑うギルマス。怖えよその笑顔。
「で、なんで領主がでてくるんだ?」
「…土魔法使いは徴兵されるって聞いたから」
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