第9話 会合3


 目を開けた仔犬は、ここが何処か判らないようで、戸惑うようにキョロキョロしていた。


「あはッ!可愛い~」


 双葉が変な声を出す。


 このように自分の感情をよく表に出すところも、モテる一因なのだろうと思う。


 仔犬は暫くすると、私を見つけたのか、胸元に飛び込んできた。


「悪意なんてなさそうだね~」


 撫でられ、気持ちよさそうに目を細める仔犬を見て、双葉。


「まぁ、この状況だけを見れば・・・」


 母も続く。


「・・・本心は判っていないのだろう?」


 和馬は反対意見らしい。


「まぁ、そんなもの後でいいじゃん」


 双葉は美玖の胸元に手を伸ばし、仔犬を撫でる。


 仔犬はその手を受け入れることなく、むしろ噛みついた。


「あれ?触れる・・・けど、痛いなぁ」


 しかし、手を引っ込めることなく仔犬の好きにさせている。


「・・・仮にその犬に悪意があった場合」


 そこまで黙っていた哲司が口を開く。


「掟に従い、美玖をこの家から追放する」


 掟にある、『悪意のあるものと契約した場合、家を追う』というものに従ったものだ。


「・・・判った」


 私は固い声で返す。


 仔犬はまだ、双葉の指をかんで遊んでいた。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「じゃあ、これで今日の会合は終わり。何か言うことはある?」


 神楽は見渡して言う。


「ないみたいだね。じゃあこれで・・・」


 そこで幽は手を挙げた。


 立ち上がりかけていた霊に睨まれる。


「何?」


「今日仕事でやりあった相手について」


 霊が急かすかのように畳を指で叩く。


「幽霊の類とは思えないほどの力の量、さらには生気も感じられない。如何にものようなものが町にいた」


 霊が興味を持ったらしく、指の動きを止める。


「へぇ」


「しかも、それと一緒にいて邪魔をしたのが、夕崎家の長女だ」


 部屋の空気が一気に引き締まる。


「・・・そうか、夕崎の長女が・・・」


 霊が呟く。


「中々、面白いことしてくれたね」

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