第6話 契約
「なんで・・・?」
少し距離を取り、幽に向かって、私は聞く。
「何が?」
不思議そうに彼は聞く。
「なんで、契約してるし、『祓い』のことも知ってるの・・・?」
「何故かって?簡単なことだ。家系だ」
何でもないように答える。
「もういいか?早く終わらせたいんだ」
「待って、まだ聞きたいことが・・・」
言い終わる前に、幽は刀を振り下ろしてきた。
思わず後ろに飛びずさって避ける。
刀の先が腕を切り、そこから血が流れる。
「な、何するの!?」
「邪魔だ。俺の仕事の邪魔をするなら、貴様も一緒に始末するぞ」
言って再び切ろうとしてくるので、私は背を向けてエスケープ。
「・・・いくら逃げても仕方ないというのに・・・」
すぐに私の正面に回り込む幽。
「さぁ、すぐにそいつを・・・」
渡せ。
そう続けようとした途端。
「アオオオオオオオォォォォォォォォォォン・・・」
私の手の中で、仔犬が遠吠えを挙げた。
幽の言葉はそこで打ち切られ、周囲を規則正しく飛んでいた烏が輪を乱し、その大半が姿を消した。
「・・・何だ?」
少し慌てた様子で幽。
「そっか、そうだよね・・・」
私は手の中の仔犬を撫でる。
「君と、契約しちゃえばいいんだよね・・・」
本来、悪意があるのかどうか、調べることが先なのだが。
もうそんなことを考えている暇なんてなかった。
契約の方法は知っている。
意思を疎通させるか、あるいは・・・
「血印・・・」
呟いて、地面にサッと流れる血で幾何学模様を描く。
慌てて幽が止めようとするものの、仔犬が吠えて彼の邪魔をする。
そしてそこに、仔犬を乗せ、
「・・・契約・・・我が名は夕崎美玖。汝、我と血印を結び、番うことを誓え・・・」
「クゥン・・・ワン!」
弱々しく鳴いたかと思えばすぐに元気よく返事を返す。
これで契約完了だ。
「・・・余計なことを・・・」
幽の表情は、恐ろしいほどになっている。
元の秀麗な顔が勿体ない。
「・・・何だ?」
しかし、攻撃してくることはなく、彼は後ろを向いた。
「・・・仕事中だ・・・会合?いつから・・・今夜?判った。すぐに行く」
どうやら電話をしているわけでもなく、ただ暗闇と会話している。
「・・・覚えていろよ・・・」
そうしてこちらに言い放つと、闇の中に消えた。
後に残ったのは、孤独と暗闇。
結局、助かったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます