第4話 出会い
帰ってからの憂鬱な予定に、溜息をつきながら帰路を急ぐ。
今日も今日とて演習だろう。
毎日の演習は、私を億劫に、足取りを重くさせる。
「・・・帰りたくないなぁ・・・」
ポツリと呟く。
その声に返事をするものはいなくて、空しいが消えるものだと思っていた。
のに。
「ワン!」
元気のいい声が、道端から聞こえた。
何かと思い、目を向けると、そこには段ボールに入った真っ白な仔犬が居た。
「・・・捨てられちゃったの?」
「クゥン・・・」
弱々しく返事をする。
「フフッ」
何が面白いのか、少し笑ってしまった。
「一緒に帰る?」
「ワン!」
仔犬は元気よく鳴く。
鞄からタオルを取り出すと、仔犬を包み、抱え込む。
「窮屈だけど、我慢してね」
仔犬は指をペロペロ舐める。
父や和馬に見つかると面倒だから、双葉や母を巻き込もう。
もしくは時々お手伝いに来る佐川さんでもいいな。
私は仔犬の頭を優しく撫でる。
「ワン!」
またしても元気よく。
曲がり角を曲がったとき、偶々カーブミラーが目に入った。
家の塀に取り付けられたそれは、人の顔くらいの高さに取り付けられている。
そこに、人影が写っていた。
私の少し後ろに、真っ黒な人影が足を止めている。
そう言えば少し前から、ずっと居るような・・・
それに気づいた瞬間、私は駆けだした。
ストーカーだ。
何時から居たのだろうか。
叫んで助けを呼ぼうかと思ったが、恐怖で喉が竦んでしまい、声が出せない。
人影は私と一定の距離を保っているようで、距離を詰められることはないが、引き離すことは出来ない。
逃げつかれた私は、とうとう道の真ん中で何かに躓き、転んでしまった。
それを機に、人影は私との距離を詰め、目の前に立った。
膝からは血が滲んでいる。
「た、助けて・・・」
小さな、掠れるような声が、ようやく私の喉から絞られた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
少し前。
美玖と判れた直後の幽のポケットで、スマホが震えた。
「もしもし?」
電話口の向こうで、男の声が一言。
「仕事だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます