第3話 原井幽


「はぁぁぁぁ~~~~・・・」


 ようやく7限目が終わり、私は思わず机に突っ伏した。


「やっと帰れる・・・」


 思わず口から零れる。


「そんな、帰宅を願望してるみたいないい方しなくてもさ・・・」


 佳織が近づいて言ってくる。


「でも、明日は土曜日だから、今日はゆっくり寝れるんだよ?そんな最高なことないでしょ!?」


「ブラック社員みたいなこと言い出しちゃった・・・」


 佳織は呆れたように呟く。


「取り敢えず、帰ろう?帰りにカフェにも寄ろうよ」


「いいね。目覚めの1杯を・・・」


「あれ、夕崎さん、呼ばれてなかった?学級委員は放課後集まれって」


 近くにいたクラスメイトが教えてくれた。


「え・・・いつ言われた?」


「朝礼のとき。あ、もしかして、寝てたね?」


 私は恥ずかしくなり、思わず俯く。


「早く行った方がいいよ。場所は、多目的室」


「・・・ごめんね、佳織。カフェはまた今度になりそう」


「大丈夫だよ。また今度ね」


 佳織は笑って見せる。


 それを見て安心して、私は多目的室へ駆けた。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「あれ、夕崎さん」


 道中、呼ばれた声で振り返る。


 そこには、爽やかな笑みを浮かべる男子生徒が。


「原井君」


かすかでいいですよ」


「読めないのよ」


 思わず、私は返す。


 そんな彼はフフフと笑うと、


「夕崎さんも多目的室へ?」


「えぇ、まぁ」


「では、ご一緒に」


 周りにいた女子生徒から羨ましそうな声。


 双葉と同じく、幽も女子生徒からの人気が高い(多分顔のせい)。


 今日だけで2度も羨ましがられることとなった。


・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 終わったときには、既に日が暮れてしまっていた。


「送りましょうか?」


 幽はそんなことを言ってくる。


「大丈夫ですよ。まだ明るいので」


「しかし・・・」


 少しごねる彼を相手し、途中まで並んで帰り、私が曲がり角で曲がることにより、別れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る