第2話 夕崎美玖


 高校での昼休み。


 連日の演習の疲れから、私は机に突っ伏して眠っていた。


 演習は基本、夕方から始まり、日没、時には夜中まで行われることがある。


 夜中まで演習だった日の授業中は地獄で、1日中酷い眠気との戦いになる。


(そして高確率で負ける)。


 しかし、親から学校の成績の維持も命じられているため、授業中は一睡も許されない。


 だから、こうやって休み時間に出来る限り伏せ、授業中の居眠りを予防している。


「みーくーちゃん!」


 明るい声とともにやって来た机への衝撃で、私は夢世界から現実へと引き戻された。


 顔を上げると、ニコニコの笑顔で、クラスメイトの佐野佳織さのかおりが居た。


「佳織・・・起こさないでって、いつも言ってるでしょ」


「だって用事があるんだもん」


 言って、教室の入り口の方を指さす。


「呼ばれてるよ」


 見ると、これまたいい笑顔で双葉が待っていた。


 顔の影響か、クラスの女子生徒たちが少し騒いでいる。


「何の用?」


 出ていくと、双葉は笑顔のまま、


「お弁当、間違えて僕のを持っていってるから、取り替えに来たよ」


と言う。


 私はもう食べてしまっているのだけれど。


「あら、そう。美味しかった?」


 伝えると、彼はそんなことを言った。


 私としては、弁当の間違いに気づかないほど疲弊していることにショックなのだが。


「疲れてるみたいだね。父さんたちはあんな風に言ってるけど、無理しなくていいよ。ゆっくりしていればいいさ」


 双葉はそう言って、私の頭に手を置く。


 回りの女子たちが羨ましそうな声を上げた。


「・・・判った」


 彼は、私が席に戻るまで手を振っていた。


「お巫女さんの仕事って、そんなに大変なの?」


 座ると、佳織が聞いてくる。


「・・・うん、かなりね」


 私はただ、そう答えた。

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