第399話 「いや、結果NGだから俺が出てきた訳なんだが」
ようやくスキルではなくゲームシステムの新しいお話を加える事が出来ました。
長かった。
※※※※※※※※※※※
修練場を後にし下宿先に向かっている俺、クルトンです。
ポムとプルと一緒に徒歩で。
認識阻害の恩恵の下ではある為、俺たちに目を向ける者はいない。
しかしそこそこの人ごみの中なのに俺を避ける様に進行方向の道が開く。
いつもの通りゆっくり街並みを眺めながら目的地のマルケパン工房へ到着した。
認識阻害を解きドアを開け帰って来た事を告げる。
「クルトンです、ただいま戻りました」
「あら!おかえり」
店番をしていた伯母さんが俺にそう言った後、バタバタと店の奥に向かい皆に俺が帰ってきた事を告げに言ったみたい。
ほら、皆が集まって来た。
「よう、おかえり。今回はどうだった。
シンシアの報告は無事にすんだのか?」
アイザック伯父さんが聞いてくる、相変わらずシンシアの事が気になるみたい。
「ええ、陛下へのご報告は無事に済みました。
これ以上ない位のお言葉を頂けましたよ」
「そりゃ良かった、早く荷物を置いてゆっくりしな。
今晩はまた王都の話を聞かせてくれよ」
「ええ」と答えた後、店先に待機しているポム達を連れて改めて裏口から家に入る。
それから背負子をリビングに置いて荷物を解くと、お土産を降ろして他の荷物を自分の部屋に運ぶ。
ああ、なんだか落ち着く。
何だかんだ言って2年もお世話になった場所だ、そりゃそうか。
ベッドに横になると途端に意識が自分の内側に向かい、静かに眠りについていった。
・
・
・
「初めまして」
?だれだ
「お前だよ」
俺・・・俺自身って事か・・・ああ、あんたが『正己』か!?
シンシアの夢に出てきた。
「そうそう、自分の事だから良く分かるだろうさ」
そうだな・・・でも真っ暗で何も見えない。俺(正己)の顔も見えない。
「姿も実体も無いからな、それにもう気付いているんだろう?」
まあね、こうやって直接言葉を交わした途端に理解した。
お前は俺のスキルだろう?
「そう、スキルの情報思念体・・・と言った方が良いのかな。
思念体って表現の是非は置いといて、今回オリジナル(クルトン)に話しかけたのは訳が有ってね」
ほう、聞こうか。
「オリジナル(クルトン)である君の成長領域が一杯になってな、そろそろ次の段階に昇華しないと色々影響が出そうなんだよ」
もっと分かり易く言ってくれないか?
「『経験値』の蓄積スペースが一杯で溢れそうなんだ」
おお!レベルアップですか!?
これはレベルアップってヤツですか!
良いですよ、うんうん、やっちゃってください。
「いや、レベルアップじゃないよ、上級職へのクラスチェンジって方が近いね」
良いじゃないか、更なる高みへの挑戦。
胸が高鳴る。
「で、オリジナル(クルトン)の望みは?希望のクラスはどれ?」
真っ暗で何もなかった俺の目の前に昔懐かしいあのMMORPGの職業選択のダイアログが開く。
おお!ゲームっぽい。
ここに来てこんな展開、胸アツじゃないですか!
でもこのイベントって転生を自覚した辺りで消化されるもんなんじゃね?
もうちょっと早く来てほしかったよ。
「そう言うな、そもそも緊急事態じゃなかったら俺がオリジナル(クルトン)に話しかける事はなかったんだからな」
「あと、一言断っておくけどここはゲームの世界じゃない。
選択肢に有るクラスもこの世界の理法の制限を少なからず受けている事を認識しておいてほしい」
と言うと?
「例えば『死霊術師(ネクロマンサー)』
確かゲーム内では最強の一角と言われていた上級職だ。
条件さえそろえばチートと言われるくらい強力で、何度もナーフされた実績が有るクラス。
けどこの世界に使役する死霊(ゾンビ、スペクター)は存在しないし死者との交信を行う事も不可能だ。
つまりこの世界で『死霊術師(ネクロマンサー)』のスキルはその殆どが使用不可能、オリジナル(クルトン)の階位を上げるだけでほぼ何の効果も得られないクラスになっている」
ほうほう、それならおすすめは何だろう・・・ってか良く見ると俺の今はプレーン。
何のクラスも得ていない、つまり村人状態じゃないか。
いやー、新発見。
・・・いや、待て。『村人』なのに今まで良く戦闘スキルを発動できたな、何か矛盾してんじゃね?
「ホントになんでただの『村人』が魔獣を倒せるんだろうね?
現状に対して『世界』からお目こぼしが有ったかもしれないね」
まあ良い、結果オーライだ。
「いや、結果NGだから俺が出てきた訳なんだが・・・」
「ふう、とりあえず”おすすめ”だっけか・・・と言うより思い入れのあるクラスが有るんだろう?」
ああ、有る。良く分かってるね、流石俺。
そのMMORPGで俺が愛用していたクラス。
『竜騎士』
戦士からクラスチェンジできる上級職だ。
因みに竜を討伐する『ドラゴンスレイヤー』でも竜を駆る『ドラゴンライダー』でもない、竜の様に強い騎士の意味。
炎のブレスを吐くスキルは有るけど。
「・・・物理攻撃力なら狂戦士(バーサーカー)、防御力なら聖騎士、魔法耐性と魔法剣なら暗黒騎士。
魔法職なら範囲魔法特化の大魔導士にいわゆる”ファンネル攻撃”を再現できる召喚士、そして自然の摂理である気候を操る祈祷師。
それこそ万能職の勇者ってのも有るけど?
どれも強力なクラスでオリジナル(クルトン)が持っている経験値ならどれも選択可能だけど?」
いや、そのクラスはとても強力ではあったけど操作(コントロール)し辛らかったんだよ。
特性も尖っていたしスタミナや魔力のリソース管理も忙しなくて大変だった。
初心者に毛が生えた様な操作スキルしか持ち得ない俺にとっては操作が簡単で敏捷性、攻撃力、防御力のバランスが取れた初心者向けの上級職の『竜騎士』は・・・ちょっと表現が矛盾するか?・・・『オープンワールド』を堪能するのにとても便利で重宝したもんだ。
今世には太古の大災害に見られるエンドコンテンツの様なボスも居ない事だし。
「しかし一般職を飛び越えて上級職が選択できるって異常だよなあ」
そんな感想は良いから早う『竜騎士』にしてくだせえ。
あのカッコいい鎧も着たいし。
「ああ、もう一つ説明すると見た目は全く変わらないからな。
基本的には能力の上限値が世界につながるだけだ」
ん?つまり。
「経験値の蓄積領域の制限が解放される事で能力の上限が無くなる」
??
「そうだな、オリジナル(クルトン)の肉体の耐性が力の上限を決める事になる」
???
「・・・鍛える度に強くなる」
よっしゃーー!!!!!
頑張っちゃうよ、俺!
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