第374話 諜報と言う名の散歩
いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。
筆者の俊足亀吉で御座います。
突然で御座いますがR6年11月29日現在にて『X』(旧Twitter)のアカウントを作成致しました。
アカウント名『@syunkame555』もしくは『俊足亀吉』で検索いただければ確認できるかと思います。
まだポスト内容についての方向性は決まっておりませんが、カクヨムのアプリでは対応できなかった情報をポスト出来ればと考えております。
本作と合わせてご確認頂けれは幸いです。
以上、ご報告で御座いました。
重ねて今後ともクルトンの物語へのお付き合い、どうぞ宜しくお願い致します。
では『第374話 諜報と言う名の散歩』をお楽しみください。
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本当は色々会いたい人、挨拶に伺いたい人も居たのだけれど、今回も突然割り込んできた騎士の仕事に振り回されている俺、クルトンです。
この国の法律は周辺諸国と比較するとかなり寛大で融通が利いているそうだ。
国民の自由意思を可能な限り尊重する方針だそうで、建国時に来訪者セリアンから望まれた事でもあったらしい。
性善説を前提とした、封建国家でありながら俺から見てもかなり楽天的なその法律の内容。
それが今まで機能し、国が破綻しなかったのはひとえにこの世界の人類へ流れる精霊の血によるところが大きい・・・と、俺は思っている。
兵器としてのその本能が機能しているんだろう、程度の差は有れこの国の人達は法律を始めとして一般的なマナーに至るまで頑なと思える位遵守するんだ。
公共の福祉の為とは言え少々理不尽に感じる事ですら何の疑問も持たず妄信するその姿を見ていると、ネズロナス教国の信者ともなればどれ程の物になるのか・・・想像するだけで寒気を覚える程だ。
だが、悲しいかな少なくともネズロナス教国のサーカス団員達にとってはここタリシニセリアンの法は自国での”口約束”より下の扱いらしい。
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公演中のテントに忍び込み、人間観察と合わせて資料の物色を行っていると普通に彼ら、彼女らの声が耳に入って来る。
市民の目が無い場所での仲間内での彼らの会話は、自国以外の国民の事を『異教徒ども』、『俗物』、『言葉を話す猿』などと蔑み、侮蔑の言葉を隠さない。
何とも見下した酷い話を、さも楽しそうに仲間と話している。
彼らは母国語で話しているから、もしここ王都の住民から聞かれても理解できないと高を括っているんだろうな。
実際そうなんだがゲーム準拠の俺の耳はチャット内自動翻訳機能が仕事をしているんだろう、一字一句間違う事なく正確に理解できる。
うん、俺外国言った事無いから今初めて気づいた。
ベルニイスの大使さん達はちゃんとこの国の言葉を話してくれてたからね。
しっかしどうしようかな~。
あまり派手に動くと外面はとても良いこの人たちの事だから、市民を先導して犯人を捜し出し、結果俺を糾弾しかねない。
正直、俺が腹を括れば無視できることではあるが、今回はシンシアの婚約報告がある。
言っちゃ悪いが”こんな事”でケチを付けられたくはない。
君たちとシンシアなら圧倒的にシンシアの方が大切だし。
かといって俺のハウジングと制約魔法で彼らを縛るのも大変危険である。
何なら旅の途中の事故で全員消えて戴いた方が圧倒的に簡単に事は済むのだが、俺の倫理がそれを許さない。
想像でしかないが来訪者セリアンもそんな事は望まないだろう。
さてさて、とりあえず書類はスクショで全て押さえておくか。
パシャパシャとスクリーンショットを撮っているとこれまた気になる内容が有った。
ウリアム宝飾工房の記述が結構有る。
・・・ここまで多いとなると、今回は腕輪の件を調べに来たとみて間違いなさそうだな。
今のところ工房に出入りしている人たちの素性を調べている最中の様で、自分達に引き込みやすそうな人が要れば接触して情報提供を求めるんだろう。
これはウリアムさんにも伝えた方がいいね。
凡その資料を確認したが、念のためハウジングを展開する。
消費する魔力量は馬鹿にならないが俺が見落としている資料が有ってもおかしくない、それを探す為だ。
諸々紐づけされた物質、空間を検証していくと俺が拵えたムカデ型ゴーレムを3体見つける、王家の裏方の皆さんもちゃんとお仕事している様で。
俺の作品が有効活用されていて正直嬉しい、いやいや、今は自分の事に集中しないと。
あれから何点か資料を見つけたがメモ帳、個人の日記の類で、念の為中身を確認したものの有益な情報は無かった。
もしかしたら治癒魔法協会のメモリーの技能を持つ(であろう)女性の様な人が居るかもしれないが、そうなると居たとしてもどうしようもない。
陽はまだ高いが今日はここまでとしておこう、これからスクリーンショットを出力して検証を宰相閣下の部下に丸投げだ。
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「しかし、昨日の今日でよくこれだけの資料を押収できるな、いや写してきただけだったか・・・いやいやいや、それでもとんでもないな」
専門家が見れば何かのきっかけに気付くかもしれないと取りあえず帳票類や調査報告書の類は全部撮って来たから紙を大量に準備してもらって今俺が書き出している最中。
その横で宰相閣下が資料を見ながらつぶやく。
あと1時間もしないうちに出力は完了するだろうからその後の検証はお願いします。
「分かった、お前の話では腕輪の件を嗅ぎまわっていたのだろう?警戒度を最高まで高める必要が有るな。
想像したくは無いがウリアムを誘拐してそのまま国外に逃げられたら最悪だ。
彼は騎士でも衛兵でもないのだから、数人がかりでやられたら抵抗なんぞ出来ないだろう」
本当に。
彼らのおしゃべりの内容からしても此方側を劣等民族としてみてましたからね。
捕虜よりひどい扱い受けるかもしれませんし。
「そんなに酷かったのか?」
ええ、多分裏方の人達が録音してると思いますよ。
ゴーレムがあのテントに3体いましたから。
「そうか、なら後で聞いてみよう。
・・・今気付いたがクルトンは教国語が分かるのか?」
そうなんですよ、俺も今日気付いたんですけど分かっちゃうんですよね、これが。
「そうか・・・他の国の言葉は?」
試した事無いですけど多分大丈夫です。
勿論すべての言語が分かるかは何とも言えませんが。
「ふむ、それはお前の前世の記憶によるものか?それとも技能か?」
技能ですね。
本当に便利なもんですよ。
「それを聞いてはこれからの計画も修正が必要かもしれないな。
国内だけではなく海外でのお前の活動も検討した方が良いかもしれん、事によってはチェルナー姫様の外遊の護衛も考えておいてくれないか?」
流石にそこまでとなると・・・それって年単位で行動が拘束されるんじゃないですか?
旅は嫌いではないけど、どちらかと言うとのんびり畑でも耕して、必要な時に近くの森に狩りに出かける日常、そんな生活の方が性に合っている。
「まあ、海外にお前を出すリスクも相当なものになるからな、その辺も協議してからだからあまり気にしなくて良い」
うん飛行機とか鉄道が有ればもっと気軽に行けるんだろうけどね。
多分作れなくはないんだろうが現代日本で利用されているそれと同程度の品質、安全性を確保する事は絶対に無理だろう。
膨大な時間と労力、そして犠牲が必要になるだろうね、そんな世界はいつになるものやら。
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