第347話 いつの時代も女性は強かで
出来た・・・今できうることをすべて詰め込んだテヒニカさん宅を見上げ感無量の俺、クルトンです。
頑張って床暖房も設置しちゃったよ。
大きさは我が家より一回りほど小さいが家族の人数の都合と言うだけで坪単価で換算したらおそらくこちらの方が圧倒的にコストがかかっている、間違いない。
「うわぁ・・・これが僕たちのお家?」
「お家?」
そう、今度お父さんたちと一緒に来た時にプレゼントするよ。
早速内覧会といこうか。
テホアとイニマを誘い玄関を開け、中に促す。
「本当にあなた、土木建築の事業でも立ち上げた方が良いんじゃない?
街道整備と砦の仕事なんか受注したら工期もしっかり貰えるし国の予算も付くし、えげつない程儲けるわよ、間違いなく」
パメラ嬢からそんな話も出るが・・・うん、そうだろうね。
でもそれ始めちゃうと多分その事業に俺が付きっ切りになっちゃうんだよな。
故郷の村周辺限定なら良いが、受けた王命を果たす為に今後国内を走り回る事になるだろうから無理だと思う。
「王命?」
ええ、国内の諸問題を解決して回って来いって話しです。
そんなに都合よく問題を見つける事が出来るか分からないけど、俺の見分を広げる意味も有るからと、そう陛下からのお言葉です。
期待されている様なんですよね、正直勘弁してほしいって思いもあるのですけど。
「そう・・・いつ頃になるの?」
秘密です。
問題の原因が犯罪者集団だった場合、王命を受けた者がいつ、何処に行くかと言う情報が知られてしまったら対策を立てられてしまうでしょう?
こういった情報は意外と広まるのが早いんです。
「挨拶くらいはしていきなさいよね」
無理ですね。
本当にこればっかりは家族にも伝えられないですから。
けど、テホアとイニマの訓練、教育が終了してからになりますし、そんなに間を置かずにちょくちょく故郷には戻って来るつもりですよ。
開拓の状況も確認したいし。
さて、皆が中で待っています。
取りあえず内覧会を執り行いましょう。
「ええ」
少し口数が少なくなった?パメラ嬢の背を押して俺も玄関をくぐって中に入った。
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玄関で内履きに履き替え皆と合流、一部屋づつ設備含めて説明する。
「何よこれ・・・この暖かさ。
クルトン、この床暖房?は家にも付けれないかしら」
出来ない事は無いけどお風呂(温泉)含めた水回りの工事が必要だから、ちょっと時間が掛かると思う。
家具とか室内の物一旦全部出す事になるから。
それからも母さんは床暖房にご執心で、床にうつ伏せになりながら「これ良いわあ~」ってずっと言ってる。
「お部屋がいっぱい!」
「いっぱい~」
テホアとイニマそれぞれの部屋と両親の寝室、リビングにダイニングキッチン。
お風呂にトイレ、そしてこの家にも屋根裏部屋(物置)と床下収納。
「ホント凄いわね、家より小さいけどずっと便利そう」
「これは・・・私たちの嫁ぎ先への嫁入り道具は『家』が良いんじゃないかしら?兄さん、どう思う」
材料有れば構わんよ。
通常、家を建てる時の一番のコストは人件費だから、変な話だけど俺が建てれば既に準備した結婚資金はほぼ丸々別の用途に使える。
何なら現金でそのまま持参金として渡しても良いだろう、特に都会でなら融通利くし。
「どうしましょう!これだけで私たち旦那様を選び放題じゃないかしら?」
「エフ、いくら何でもそれは無いわよ。
私たちより裕福な人たちはそんなので寄ってこないでしょう?」
「良いじゃない。分母は多い方が当たりも多いのよ」
こういったちょっとしたところで長女の性格が出るな。
容姿も性格もそっくりな双子の姉妹だが、姉のイフロシューネの方が少し現実的な感覚を持っている。
そしてそんな娘たちの会話を聞いて父さんは泣いている。
娘が嫁ぐその日を想像しているんだろう。
「でも二人ともそこいらの男より腕っぷしが強いからね。多分彼女たちに釣り合う男性を見つけるのはこのままじゃ厳しいと思うよ。
負けん気も強いし」
ああ、俺もクレスの意見に賛成。
ここからだと・・・コルネンか王都にでも婿探しに行かないと適齢期逃して一生独身だぞ、今から危機感持てよ君たち。
「「縁起でもない!二人ともなんて事言うのよ!!」」
「兄さんも人の事は言えないじゃない!」
「そうよ!そんな事言うならパリメーラ姫様は結婚できないって事でしょう?酷い!」
お前ら、話をすり替えるな。
俺の事は構わんで良いし、パリメーラ姫様は上級貴族で精霊の加護持ち(容姿端麗)なんだから何もしなくても求婚者が砂糖に群がる蟻の様に無限に湧いてくるんだよ。
デデリさんが睨みを利かせていなけりゃ加護持ち判明した時点で自称婚約者候補が山ほど押しかけてきたろうよ。
そもそも前提条件が平民の俺らとは段違いに高いんだから、あんまり失礼な事言うなよ。
(後でお小言頂戴するのは俺なんだから)
「そんな事無いわ、私も自分より弱い男はこちらから願い下げよ」
そうですか、そうなると姫様も婿探し大変ですなぁ。
適齢期の実力者だとラールバウさん位しか思いつかない。
あ、あの人も平民出身か。
他にもいるんだろうけど貴族の間では「知ってて当然でしょう?」って感じで、こちらから聞かないと教えてくれないから面倒なんだよな。
そんなこんなで・・・。
「ハッハー、僕たちの家!」
「まってー」
そんな話をしている最中もテホアとイニマは楽しそうに家の中を走り回り、母さんは床にうつぶせののまま俺を生暖かく見ていて、父さんは泣いていた。
何なのよ、このカオス感。
「ハハ、いつも通りだよ。
そう、昔のままさ、兄さん(笑)」
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