第346話 入植者の為に

今朝も良い天気だ。

ムーシカに跨り朝駆けしている俺、クルトンです。



向こうにはミーシカを駆るクレスも見える、相変わらず絶好調の様だ。


「ハッ!!」

そしてパメラ嬢もマーシカに跨りこちらに戻ってきたところ。


さて、気晴らしはこの位にして畑で朝仕事をしなければ。

今日はテヒニカさん達の住居を立てないといけないから、木材の切り出しも厩舎より気を使って選別しながらやるので時間もかかる。



朝仕事も終わり、朝食を取った後は直ぐに近くの『緑魔の森』まで木材確保の為出発。

何回か往復し、スキルに任せて(移動時間も併せて)3時間位でサクッと木材確保。

久しぶりに全力疾走したよ、俺が。


しかし以前は自宅を建設する為に二日かかった木材確保が、今はほぼ3時間で済むのか・・・こうして再確認すると1年の間で俺の力が成長している事がハッキリわかる。




「パリメーラ姫様、兄さんのこれってコルネンでも対して気にもされない事なのかしら?」


おい!イフ、何でタメ口なんだよ。

侯爵令嬢に失礼だろう!


「そんなわけないじゃない。変な能力で皆に認識されていないだけよ」


「そうよねぇ~」

エフ!だからタメ口!!



「構わないわ。生まれ年は同じらしいし、味方は多い方が良いもの」

味方?


「兄さん、それより村長に家を建てて良い場所聞きにいかないと進まないわよ」


おお、そうだ。

流石に人が住む建屋を建てるのだから場所はしっかり話を通して許可はとっておかないと。

後の資産のイザコザの原因になってもつまらない、近々4人入植してくる事も一緒に伝えてこよう。


「じゃあ早速行ってきます」

「「「行ってらっしゃーーい」」」






・・・速攻終わったでござる。

村長さん超ご機嫌でござる。


「空いてるところならどこでも良いぞ。ああ、道の邪魔にはならんところでな。

しかしそうか、そうか。4人も増えるか。しかもそのうち二人はあの子達なのか。いやー、特に子供が増えるのは有難い。

クルトン、くれぐれも心変わりを起させないよう注意して案内して来てくれよ、頼むぞ」


うん、大丈夫、俺が雇う従業員だから。

労働条件は超ホワイトだし。


あ、そうだ、一応今後の開拓事業についても伝えておこう。

具体的な時期は俺も聞いてはいないが間違いなく”開拓専門の業者”が大勢来るはずだ。

近々その辺の内容をしたためた書状を持って名代が来るだろう。



「お、おう・・・それはそれは。

クルトン、クルトン。ここはまだまだ小さな村だ、準備も直ぐには整えられん。

当然村内の調整は儂がやるが、お貴族様の相手はどうも自信が無くてなぁ。

幸いお前は騎士なのだろう?その際はお上と業者の調整役を頼まれてくれんか」


ええ、構いませんよ。


統率の取れていない作業員が村で好き勝手やるような事も無いとも言えません。

辺境の村民となめてかかるヤツがいてもおかしくないし。


陛下が直々に提案して俺に約束してくれた事だからそんな事は無いと思うが、念の為釘を刺しておいた方が安心だろう。


ある程度の荒事があった場合も想定して準備しておこうか。


後追いでの対処となれば事前の準備とは比較にならないくらい時間も労力もかかるからな、こういったのは早い方が良い。


うん・・・独房でも作るか。


「いや、いきなりそれはまずいんじゃないか?

まずは話し合いで」

そうですね、穏便に最初は(肉体言語で)話し合いですね。


「何か違う様な気もするが問題は起さないでくれよ、頼むぞクルトン」



村長さんとの話もサクッと終わったので直ぐに住居の建設に取り掛かる。

時間が押してるからな、今日中に完成させないとこの焦る気持ちが落ち着かない。


とは言ってもハウジングと木工スキルの能力に頼れば基礎工事も含めて4時間もかからないだろう。


建てるだけなら2時間もいらないが、その後の窓ガラスのはめ込みやドアの調整、水回りの据え付け、壁紙や家具の選定(俺の自作)と絨毯、寝具の準備にと建てた後にも細々作業が有るからな。



「ねえねえ、兄さんが建ててくれた家は機能的でとっても使いやすいんだけど、こうなんて言うか・・・つまらないのよ」

脇に寄って来たエフがそう俺に言ってくる。


なんて事を仰られる!否定はしないけど。


「だから内装は私たちがデザインしてあげようかなーなんて、どう?」

イフからの提案。


・・・良いんじゃない。

俺もその辺のセンスが無いのは自覚してるから。


でも使いにくいのは駄目だぞ。必ず後で手直しする事になるんだから。


「分かってるわよ。

でね、壁紙とカーテンだけでもかなり違うと思うの、兄さんこの辺も色々出来るんでしょう?」


まあ、出来るね。


「じゃあ決まりね!

パリメーラ姫様とテホア達とも相談して来る」


え、今から?

ちょっと!今日中に間に合うの、ソレ。


「大丈夫、大丈夫!」

とか言ってイフとエフが家まで走って行く。



ポカーンとしながら見送った後、そのまま周りを見渡す。

建てる場所は俺ん家から直線距離で50m位の所の空き地・・・いや、俺がさっき整地したところ。


取りあえずイフたちが戻って来るまで作業を進めよう。

まずは基礎工事だな。



基礎工事から始まり、外側はハウジング、スキル全開で拵えて見込み通り2時間かからず完成した。


これから内装だ。


何気に壁紙、カーテンはこの国では高級品。

特に開拓村みたいな辺境の村なんかでは無くても生活に支障が出ない物には基本お金を掛けないし、魔獣から襲われた時は家は放棄すること前提だから本来ならプレハブみたいに壁もペラッペラだ。

俺が建てたのは違うけど。


つまり壁紙、カーテンとか余計な物が家にあるって事は生活に余裕がある証拠。

俺的にはカーテンは窓からの風や強い陽を遮ってくれるし、断熱の意味でも必需品だと思うんだけどね。


因みに今はめ込んでいる最中の窓ガラスは上から下に行くに従い曇りガラスになる様に土魔法と風魔法で再現したサンドブラストでグラデーションを利かせた物、初挑戦だったが上手くいった。


これで人の目線の高さからは中が直接見えない、脚立でも使わなければ窓から覗かれる事も無いだろう。

家もこれに変えようかな。




「兄さーん!お待たせ」

ようやくイフたちがやって来た。



ふう・・なんとか今日中に完成させる事は出来そうだ。


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