第338話 ジョン・ドウ(名無しの権兵衛)

いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。

筆者の俊足亀吉で御座います。


今回のお話で御座いますが、終盤に某北斗神拳継承者の台詞を引用しております。


問題ある様でしたら即削除、修正いたしますのでお気づきの点有りましたらアドバイス頂ければ大変有難いです。


この辺の加減は個人の感覚に頼ると痛い目見そうなので。


では『第338話 ジョン・ドウ(名無しの権兵衛)』をお楽しみください。

改めまして今後も本作へのお付き合い宜しくお願い致します。



※※※※※※※※※※※※※




親方の髪型、ギターの神様ことジ〇ヘンも真っ青の大きなアフロを見て笑いが止まらない俺、クルトンです。


肩を震わせ思わず”ブフォッ”と吹き出してしまっている俺に対し、両ご婦人たちは

「あら、良いじゃない!」

「ますます男前になったわよ」

とか言ってる。


マジか?


いや、アフロをディスっている訳じゃない。

前衛的すぎるこの髪型は流石にネタにしかならないと思ったんだが何気に高評価。


笑ってる俺の方が感性狂てるのかと心配になる。



「そ、そうかぁ?」

親方もさっき叫んでいたのが噓のように鏡を見ながらまんざらでもない感じ。


いやいや、本当に?ドッキリじゃないよね。

実は俺を引っかけてんじゃないよね?



俺が戸惑っているとご婦人たちと一緒に部屋を出て行って、お弟子さんに見せに行ってしまった。


え?って呆けていたら工房から「おおーー!」「すげー!!」「親方カッケー!」とか歓声が上がっている。


やべえ、俺は何か禁忌の扉を開いてしまったんじゃないか?

これが流行ってしまったら後のトレンドリーダーとして親方の名がコルネンの歴史に刻まれちまうんじゃないか。


落ち着け、俺。

そんなことは無い、流行っても一過性の物だろう。とりあえず今は工房内のこの騒動を治めないと。



「ちょっと隣の工房にも自慢してくるか」

ちょっと!親方やめてください!!

そのマスクは一応機密事項に引っかかりそうなんですから、

いや、作っておいてなんですが引っかかるからこの場で回収します!


盛り上がっている工房に慌てて割り込み、親方の顔からマスクをひったくる俺。

「なんだよー、もう」


すみません・・・こんなに盛り上がるとは予想外でして。

このマスクは俺の次の仕事の重要アイテムになるので他言無用でお願いします。


代わりにアフロのやり方教えるので。


「ん!あのイカス髪型の事か!?」

イカス?うん、実際似合う人がしたらカッコいいのは認めるけど・・・、結構手入れ大変らしいですよ。


「まったくもって構わんよ」

勢いで言ってしまったがそんなキラキラした目で見られたら・・・もうしょうがないですねぇ。


このおかげで俺はパーマ液の開発に取り掛かる事になってしまう。

自業自得なのだが仕事が終わらん・・・。




それから親方は髪を伸ばし始め、凡そ20cmになった頃合で念願のアフロにした時には工房にあの歓声がもう一度上がったとか・・・。


この出来事は、後に故郷に帰り厩舎で馬の世話をしている時、そんな時にカイエンさんから教えてもらったんだ。



それからオズドラさんからの連絡内容を領主様に伝える為に領主館に伺い、内容を説明し改めて今後の協力を求めた。

二つ返事で承諾してくれたよ。


「条件付きとはいえ治癒魔法師が4人も協力してくれるんだ、自領防衛の事を考えれば期待してしまうよ。

給金の交渉を進めないといけないね。そこは心配をしなくても大丈夫、十分な報酬を約束する」

何だか領主様ウッキウキだ。


それは俺も先方と交渉進めるうえで大変有難いのですがあくまでも第一優先は現状の生活の維持ですからね。


給金でいえば急激な所得上昇で支払う税金の金額から、彼らの正体に足が付くような事が無い様に配慮お願いします。


「その辺は上手くやるよ、なんたって私は領主だからね。

しかし、陛下のお耳には入れておく必要が有るだろうなぁ(ハァ)・・・。今まで4人の治癒魔法師を無駄にしてきたようなものだ、事情は理解できる所もあるだろうが本来なら協会への処分が必要になる事だよ。

それに今回の様なケースはこの4人にとどまらないんじゃないかな?」



そうですね、治癒魔法協会の運営方針に反発した人は過去に何人もいたでしょう。

見限って何も言わずに協会を離れていった人も居るでしょうね。

正式に治癒魔法師の登録を抹消した人も居るかもしれない。



「残念な事だ。

資源・・・と言ってしまうのは誤解を与えてしまうかもしれないが治癒魔法協会が人的資源を独占している状況、協会の影響下でしか治癒魔法師が活躍できない今の状況は極めて不健全だ。

明確に国益を損なっている」


なので諸々の事情を持つ治癒魔法師の受け皿としても対抗組織の設立は意味有る事だと思うんです。

この件には王都のセロウゼ伯爵やプサニー伯爵からの協力も取り付けていますし、王家や元老院からもこの活動にご理解頂いていますから。


「ふうむ、つまりカンダル侯爵家も本格的にこの件へ一枚かまないか?そう言う事かな」

話しが早くて助かります。


「確定じゃないけどもう4人の協力はほぼ間違いないだろうから・・・、そうだねどう転んでも当分は損失を受ける事はないだろう。

良いだろう手伝いなんかじゃなく、この件は当家もインビジブルウルフ卿に正式に人も資金も協力する事を約束しよう」


有難う御座います。


これでコルネンでの活動については、この領のトップである領主様が後ろ盾になってくれる事が確定したから大分やり易い。

次年度の予算にも何かしらの名目で予算が付くだろう。

徐々にだろうがうまく既成事実化して事業、組織を公表しここコルネンに浸透させる。

治癒魔法協会に対抗できるように成長させていかないとな。



しかし現状では(公開されている)治癒魔法師のほぼ全てを治癒魔法協会が掌握している事もあり、そう都合よく人員を確保する事は中々に難しかった。


その為、後にクルトンは王命を遂行するのに合わせ、地方に隠れ住んでいる、又は未だ見出されていない治癒魔法師の人材発掘をライフワークとして国内を行脚していく。


この活動は治癒魔法師の人員増加へ明確に影響を与え、後の『王立治癒魔法学校』設立の切っ掛けとなった。

しかし、この件で最大の功績者の1人であったはずのクルトン・インビジブルウルフの名は表舞台に出る事が無く、なぜか正体不明の男『ジョン・ドウ』の名前が創設者名簿に記録されていたそうだ。



この『ジョン・ドウ』なる人物はあらゆる時代のタリシニセリアン国内に度々現れ、その地域の困りごとを解決してはいつの間にか消えていなくなる。

その風貌は茶髪のオーガ(大男)として各地の伝承に残り、彼を祀る祠や祭事もその伝承と共に後世まで残っていった。



『俺の墓標に名はいらぬ』


「これは(前世の)物語の主人公の台詞でね。男らしくて、潔くてかっこいいじゃないか。

まあ、戦いで命を落とすのは御免だけどね」

後のクルトンの言葉である。


自分の名や名声ではなく、世に残るべきはその成果であるとの意味で使った言葉であったが、当時この言葉の真意を理解できた者は妻のパリメーラただ一人だけであった。

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