第264話 翼竜
ポムと一緒にキャッキャウフフしているテホアとイニマを眺めている俺、クルトンです。
今日はテヒニカさんご一家を誘って王都外に狩りに来ている。
借りた荷馬車にムーシカを繋ぎ、かなりゆっくりペースで街道を半日ほど進んだ平原にテントを張る。
キャンプみたいな感じ。
勿論キャンプ地にするここは俺のハウジングを展開しているから安全面に問題は無い。
魔獣でも俺のテリトリーには入る事が出来ないのだから。
ここに来たのは子供たちの技能の訓練の為。
シンシアなど、今までは持っている技能を伸ばす事を訓練をしてきたが、テホアとイニマは大前提として技能をOFFにする制御を身に付けなければならない。
持っている技能をワザワザOFFにする訓練なんてした事無いから・・・俺のはスキルだから最初から機能としてあった・・・とりあえず自分の中にある技能を認識する事からだろうと適当な考えのもと、それならば静かな場所で精神統一、座禅の様な修行を子供たちと行おうと考えてここを選んだ。
訓練そのものは既に行っているが環境が変われば何かしらの切っ掛けがつかめる事も有るから。
ここは王都の喧騒とは無縁の場所、聞こえるのは草木が風を受けてこすれ合う音と ”『ガン!!』キュオーーン” 甲高い鹿の鳴き声・・・、なんだ?鹿?
似てるけどなんか違う。
音がした方を見てみるとハウジングの(見えない)外郭付近にバッサバッサしてる何かがいる。
・・・一応見て来よう、内側からなら安全だし。
・・・でっけえ鳥だ。
うん、鳥。
墜落と言うよりハウジングの境界線にぶつかって落下したな、これは。
ハウジングの境界は草食動物は往来を邪魔しない様に、肉食動物は小型の虫意外無条件で弾き出すように設定している。
あと俺達以外の人間。
コイツは・・・何だろう、前世似た様な鳥を見た気がするが・・・とりあえず壁に阻まれたって事は肉食、多分墜落した位置からしてポムや子供達を狙って来たんだろう。
ハウジング展開しててよかった。
しかしデカいな・・・翼幅ならグリフォンのポポを軽く上回る。
うん、でかい・・・。
(´・ω・`)ポク
(´・ω・`)ポク・
(´・ω・`)ポク・・
(´・ω・`)ポク・・・
( ・`д・´)ティーン!
捕獲決定!!
そうとなればまずはハウジング内に引っ張り込み俺へ紐づけ、支配下に置く為にさらに近付く。
通常ならハウジングの脇で転げまわっている都合の良い獣なんていないが、まさに今がその状態。
なら見逃す訳も無くサクッと捕獲。
鳥の足を掴むと一部設定を変更してハウジング内に一気に引っ張り込む、それと同時に俺に紐づけされこのデカい鳥の情報が脳内に流れ込んだ。
『翼竜(幼体)、雌、狂乱、重症(頭蓋骨骨折、右翼骨折、頚椎損傷)』
ブッ!!
死にそうになってんじゃんか、まずは治療をしないと。
いつも通りの治癒魔法を掛ける為に頭部へ手を置き・・・頭骨折して頚椎損傷してんのになんでヘッドバンキングばりに首振ってんだよ!命縮むちゅうの!!
頚椎も損傷しているなら一緒に治す!
首根っこを文字通り鷲掴みにして動きを止め、強めの威圧を向けて大人しくさせるとようやく治療に入る事が出来た。
いつからかラメが入ったようなキラキラした感じも追加された乳白色の光が、俺の手を中心に広がると鳥の中に吸い込まれていく。
発した光は際限が無いように鳥の体にどんどん吸い込まれ、ハウジングを展開した後だけに「ちょっと魔力もつかな」と心配しだした頃合いに治癒魔法のスキルから『治療完了』の合図が出た。
この時点で鳥は目を閉じ体を丸め呼吸も深く安定した状態で・・・寝てんじゃんかよ。
無防備かよ。
まあ良い、俺の支配下にあるのだから俺たちが寝ているうちに目を覚ましてもハウジング内なら危害は加えられない様になっている。
このままにしておこう。
「クルトンさん・・・このおっきな鳥さんなあに?」
テホアがイニマと一緒に俺に近づいてくる。
その後ろにはおっかなびっくりのご両親もついて。
ああ、これはね・・・うーんとなんだっけ?
『翼竜(幼体)、雌、睡眠中』
「ブッ!!」
見逃してた、翼竜ってか!!
このグンカンドリみたいなのが?
・・・ああ、そうだ。記憶に引っかかると思ったら、前世で見た野鳥のドキュメンタリー番組に出てきた『グンカンドリ』に似てるんだ。
大きさ全然違うけど。
「えーと、うん、実はですね。
この鳥みたいなのは翼竜です、うん、そうなんですよ。ビックリですね」
「「ヒッ!!」」
「えー!竜なの、本当に!!すごい、すごーい!」
「すごーい」
親御さんはビビっているが子供たちは無邪気にはしゃいでポムと一緒に翼竜の周りを走り回っている。
時々軽快なステップが混じる位テンション上がっている。
まあ、竜なんて見れないもんね、俺も初めて見た。
デデリさんはポポと飛んでいるとき時々見かけるらしいけど。
翼竜が起きてきやしないかとご両親たちはハラハラしている様に見えるが、ちゃんと「大丈夫ですよ」と伝え安心してもらう。
何だか訓練って感じでもなくなってきたなぁ。
今晩の食事の後寝る前に瞑想ぽい事やって終わりにするか。
いまだ翼竜の周りを楽しそうにグルグル回っているテホアとイニマ、そしてポムを眺めながら弓を取り出し、
晩御飯用にと向こうに見える今度こそ間違いないインパラの様な中型の鹿に狙いを定め、俺は矢をつがえた。
今晩は鹿のステーキにでもしよう。
鹿ならこの翼竜も餌としても問題ないだろう・・・多分。
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