第242話 前日に済ませる準備
内謁の日が決まりました明後日の午前11時から昼食をはさんで2時までだそうです。
ウリアムさんの正装も後宮の温泉も明日で始末付きそうでホッとしている俺、クルトンです。
「今日はこれからどうするの?」
ソフィー様からの問いかけ。
今日はウリアムさんの正装を作って明日の午前中に渡してきます。
午後は後宮で作業しようと思いますけど大丈夫です?
「ええ!問題ないわ、お願いね」
承知しました。
じゃあ、早速服を拵えるか。
生地や糸、ボタンなんかは既に何種類か購入している。
クラフトで糸から紡いで生地に仕上げる事も可能だけど、何でもやってしまうと経済が回らない。
お金が厳しかった以前はそうも言ってられない事情があったけど、今は市場から手に入れられるのは購入する事にしている。
お店の人とのつながりも出来て、そこから入ってくる情報もバカにならないし。
何か有れば助けてくれたりもしてくれる。
コミュニティーのつながりは大事だよね。
王城の俺の部屋に戻りテーブルの上へ道具と材料を準備、裁断縫製に取り掛かる。
服のセンスは俺には無いので作るのは記憶にある正装、燕尾服を作る。
確か前世では天皇陛下から叙勲を受ける時の正装は燕尾服だったと記憶していたから。
この世界でも問題ないだろうとの安直な考え。
シャツにジャケット、ベスト、パンツ、蝶ネクタイにカフスも準備。
胸のポケットからチラリとのぞくハンカチも。
この国の人達はわりとゆったりした服を着ているので、この手の服は窮屈だろうが見た目が斬新だし清潔感が有って良いんじゃないかな。
サクッと・・・さて、完成したしご飯食べて軽くトレーニングしたら風呂入りに行こう。
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「キッツいな、本当にこれで間違ってないのか?」
ええ、ばっちりです、親方似合ってますよ。
「あら~、男前になったじゃない」
キツイキツイとしかめっ面のウリアムさんだったが、奥さんから褒められてまんざらでもないようだ。
親方に今まさに燕尾服を着てもらっています。
やっぱり着る順序から何から一から説明しないとダメだった。
そりゃそうだよな。
辺境の村なんかだと下手すりゃボタン付いてる服を着た事ないって人も居るみたいだし。
一応奥さんにも着付けを覚えてもらって一通り終わると俺は後宮に直行。
明日の10時頃王城から馬車で迎えが来るのでそれまで準備しておいてねと伝えて。
思ったより今日のスケジュールキツイな。
これからハウジングで本格的に温泉掘削して浴室を二つ作るんだろう?男湯と女湯。
後宮に到着して設置予定の場所に行くと室内にも拘らず石材、木材等々山のように資材が積んである。
「さあ、これだけあれば足りるでしょう、しっかりした物をお願いするわ」
ソフィー様のそのお言葉担わせて作業のスタートが告げられる。
今日中に終わらせるつもりではいたけど・・・晩御飯前には完了させないとマズイ雰囲気。
大勢の加護持ちの方が見物にいらしている、既にお風呂道具を持参して。
地味にプレッシャーが強い。
さっさと済ませよう。
やる事は決まっている。
ハウジングを展開し先に浴槽含めた浴室、更衣室とそれに付随するロッカーっぽい設備を拵える。
シャワーヘッドが固定されているタイプだがシャワーもちゃんと設置。
シャワーヘッド部には水の流速を増す為の付与を施しているので、洗い流す時なんかのストレスは減るはずだ。
水圧足りずに”チョロチョロ”なシャワーはじれったくて。
この国では何気に石鹸に相当する体用の洗浄剤は一般的に使われている。
入浴その物が贅沢な事なのでそもそも頻繁に使うことは無いが、入浴時は平民でも普通に使う。
錬金スキルで石鹸も拵えようとしたがやめておいた。
なぜって?仕事が増えるから。
少なくても今抱えている仕事すべての目途が付いてから手を付けようと思う。
贅沢品で消耗品だから、そこそこのお値段で定期的な流通が見込めるだろう。
ビッグマネーの香りはプンプンするし。
「あら、何か私に話しておきたいことがある様ね、遠慮しなくていいのよ」
(ビクッ!)スンマセン、とりあえず大事な仕事に集中したいので、話しかけないでください。
「・・・良いでしょう、続けてください」
年の功って言うのかな勘が鋭いんだよね、ソフィー様は。
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”カポーーーン”
早速できたばかりの温泉に入っている。
高品質な資材が潤沢にあったことも有って大そう立派な物が出来た。
「グリフォンの石造、その口から流れ出る湯とは何とも考えましたな」
隣の知らんおっちゃんが話しかけてくる。
小柄で痩せ気味と言って良い体系なのにまんまる顔。
全体的な雰囲気は特徴のない・・・と言ってもこの国ではの話・・・おっちゃん。
ここに居るって事はこの人も加護持ちなのか?でも腕輪をしていない。
加護持ちの方達には温泉の効能はきついかも知れないと、
温泉に入るにあたって量産自動機の動作検証の為に試験生産した腕輪を先行して配布している。
勿論許可をもらったうえで。
なのでこのおっちゃんムチャクチャ怪しい・・・。
「はははは、仕事柄腕輪は少々邪魔でしてな。ほら」
足首にしてた。
書記の仕事をしているそうで、一日に書く文字数がハンパないので腕は出来るだけ負担掛けたくないそうだ。
立っての仕事も結構有るから、左手もノート持つので軽くしておきたいと。
そもそも一般人より身体能力が劣っているから、加護持ちにとっては体力的に結構キツイ仕事らしい。
確かに百科事典みたいなノートに書き込んでたもんな。
そんな人も居るんだ、参考になる。
これからはもっと小型、軽量化を進めないといけないな。
「誤解は解けましたかな(笑)
しかし、この壁画も素晴らしいですな、インビジブルウルフ卿が彫ったのでしょう?
芸術の才もおありとはいやはや」
因みに女湯には水瓶を女神が担いでその口から湯が流れ出ている。
女神のモデルは銀河鉄道9〇9のメー〇ルだ。
前世の銭湯を参考にしたので女湯とを仕切る壁には双方共に彫刻を施して銭湯絵のようにしたら意外と好評だった。
題材は文献で調べた時の歴史上の出来事をイメージして彫っている。
男湯は大災害との戦闘シーン、女湯は大災害後の救済の為に来訪者が降臨する様子。
それを前世の宗教画の記憶と重ね合わせて作っただけだから、構図は丸パクリなんだ。
俺のアイディアじゃないからその辺をちゃんと伝える。
「でも拵えたのはインビジブルウルフ卿でしょう?」
そうですけど、俺の良心が痛むんです。
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