第218話 摩耗する命
結局拵える宝石はルビー、幻影の付与魔法は深紅の古龍となりました。
古龍を見た事無いので近いうちに文献を調べようと考えている俺、クルトンです。
昨晩の晩餐の後、お茶を飲みながら幻影の内容をどうするのか話し合った。
最初にベルニイスに贈るつもりとの事で、「それであれば竜でしょう、あの国は自らの事を『竜の末裔』と言っておりますから」とコヌバリンカ妃殿下推しで古龍に決定した。
材料が有れば作るのはさほどでもないので、原材料となるベリリウムとボーキサイトの入手をお願いしました。
採掘できる鉱山は既に確認済みなので、王族からの依頼ならさほど時間もかからないだろう。
あとは作るだけだ。
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で、今日はと言うと・・・はい、午前中から内謁です。
もう少し余裕が欲しい。
騎士団宿舎に宿泊見込んでいたのだが「直ぐに呼び出せないであろう?」とか言われて王城内に泊まった。
部屋もベッドも最上級ではあるけれども内謁の事を考えると落ち着かなかったよぅ。
ポムは専用のふかふかクッションでぐっすりでしたよ。
執務室に入り早速いつもの三人が出迎える。
ソフィー様は今日はいないようだ。
出されたお茶に口を付けると早速陛下が聞いてきた。
「昨日の続きだが、お前が護衛した双子なのだがどう思った?」
また前情報なしで俺に聞いてくる。
昨日渡された案件には書いてあった事ではあったが、ふわっとした内容しか記載されていなくてかえって不安になったもの。
「どうと言われましても、珍しい体質の兄妹だな・・・としか」
「角付の魔獣に似ておらんか?」
魔素を魔力に変換する能力の事ですか?
まあ、そう言われればそうですけど俺の付与術式でも同じ事が出来ますよ、魔銀が使えればあの子らより高効率の変換術式も刻めます。
材料とコストが許せばその2倍、3倍規模の装置も拵えますよ。
「・・・まあ、お前に言わせればそうなのだろうが。しかしこのままじゃとあの子らは一生穏やかには暮らせん。
分かっておるだろう?
二人一緒という制約はあるが、お前の付与術式を施した物と同じ効果を得られるのだ。
戦場で騎士団員への魔力供給、充填がコントロールできるようになれば取れる戦術の幅が大きく広がる」
・・・。
「あの子らに限らず加護ではないにしろ特異な能力を持って生まれる者たちが過去にもいた。
その力が人に向けられることはほゞ無かったが、例外なく彼らは魔獣との戦場に投入された。
殆どの場合が戦況を好転させる強力な力だったからのう」
・・・。
「お前は実感ないかもしれないが、我々にとっては魔獣との戦いはどうしようもない理不尽との戦いでもある。
来訪者より授かった、より制御された『抗う力』も含めてその身に宿る強力な力は代償を必要とする。未来をつかみ取る為に求められるその代償は・・・自らの命である場合が殆どじゃ。
・・・気が付いたか?
間違いなくあの子らは力を使う度に寿命が縮んでおる。
そもそも精霊の半身を宿すだけの我々のこの身では、その力の負荷に耐えられんのじゃよ。
子供であれば尚更じゃ」
・・・俺に何をさせたいのですか?
「やってほしい事は二つ。
一つはあの双子たちに力の制御方法を叩きこむこと。
あと一つは身体能力の底上げ。」
あの子たちは未だ7つですよ。
しかもその内容だと両親から離れ、俺の元で訓練しないといけないのでは?
「お前の返答次第だが、あの家族にはコルネンに仕事を用意してやろうと思っている。
であればお前の弟子でも丁稚でも理由を付けて任せられるのではないか?
勿論、お前が開拓村に帰る時には開拓民として移住してもらうが」
そんな勝手な・・・。
「勘違いするでない、忙しく不便かもしれないが家族一緒に不自由無く生活できる環境を『王家』が用意すると言っている」
ああ、物は言いようだが見方によっては王家の後ろ盾がある様なものか。
前世の価値観に感情が引っ張られている俺の中ではまだモヤモヤするが、この世界の価値観ではなかなかの好条件での生活保障。
この際、俺の感情は一旦置いておこう。
あの兄弟たちの未来が最優先だ。
「分かりました、その仕事お受けいたします」
「うむ、そう難しく考える事もなかろうて。
何故かは分からんがお前の脇に居るだけで力の底上げがされるらしいからの。
お前の兄妹、シンシア嬢ならずともスレイプニルも影響を受けているようだし」
「では、治癒魔法協会にはこちらからも説明しておこう。
早めにケリを付けないと面倒だからな」
宰相閣下が気を回してくれます。
助かります。
「いやなに、これくらいはさせてくれ。
また我々を救ってくれたのだ、魔獣を討伐したのだろう?3頭も」
「これで合計8頭か!直近の3頭は騎士団との合同討伐と記録にはあったが報告書を読めば実質お前の単独討伐って事はハッキリしている。
しかしトロフィーがどんどん増えていくな(笑)」
相変わらずフンボルト将軍の声がでかい。
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それから腕輪と王笏の件について詳細報告を行った。
腕輪は試作した製作機械についての検証作業を引き継ぎ、俺の手を離れたところで問題なく製造できるか試験を行ってもらう。
それに並行して俺のハウジング内で加護持ちの方の協力のもと負荷試験を実施、これには俺も立ち会う。
この結果を持って製作機械へ情報をフィードバックし現状での最善を目指す。
王笏は陛下の魔力量等の身体能力を計測、その情報をもとに調整するだけだ。
作業を始めれば見通しが付く仕事だ。
「ならば王笏だけでも今済ませてしまうか」
そう言ってノリノリで椅子から腰を浮かせる陛下。
「少々お待ちください陛下。クルトン、実際どの位かかる?」
そうですね、作業を始めれば30分くらいでしょうか。
「随分早いな」
ええ、もう準備は済ませてきましたから。
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