第216話 居心地が悪い
取りあえず食事をとっています。
相変わらずここの飯は美味くてインスピレーションが刺激される俺、クルトンです。
いや、ホント美味いよな。
他人に作ってもらう飯ってなんでこんなに美味いんだろう。
特にこのお茶、入れ方も抜群なんだよな。
「故郷の自慢のお茶ですのよ。嫁いで間もないころはこのお茶のお陰で寂しさもまぎれましたわ」
お話を聞くにコヌバリンカ妃殿下の故郷の特産はこのお茶だそうで、嫁いで来る前はお茶畑で収穫を手伝う事もある程に活発に自領を巡っていたとか。
晩の食事の時はワインかエールを飲んでいたそうだが、コヌバリンカ妃殿下が嫁いできて以来このお茶も飲まれるようになったそうだ。
うん、食事の味を邪魔しないし冷めても香り高いのに飲みやすい。
前世で慣れ親しんだほうじ茶に近い味わいだ。
どこで手に入れられるんでしょうか。
「ふふ、コルネンの方が手に入れやすいはずですよ。ここのも一度コルネンを経由してきますから」
マジですか!
今度探してみます。
「では場も温まった事だし本題を進めるか。今日インビジブルウルフ卿を晩餐に招いたのには訳が有ってな」
宰相様が音頭を取って話し始めます。
でしょうね、ちょっと急すぎましたもの。
「陛下は気にしておらんのだが、早めにはっきりさせておかないと周りの者たちに要らぬ誤解を与えるかもしれん。
正式に公表するにも根回ししておかないといかんのでな」
何だろう、ちょっとこれからの話に予測がつかない。
悪い話ではありませんように。
「お前のその力、以前は戦術級だったものが今や戦略級に届く程になっていると我々は認識している。
力その物の大小ではない、質の問題、与える影響の大きさについての話だ」
ああ・・・なるほど。
「今までは個人の能力で済まされたことが、そうではなくなってきたという事だな。
ハウジング然り、マップ然り。
騎乗動物の件では固有種のスクエアバイソン捕獲などちょっと想像できなんだ、しかもすでに5頭捕獲実績があると」
マップの件も御存じで。
「今更だな、デデリに知れたのならば定期的に情報が届く。
それでだ、スクリーンショットだったか?マップと併用すれば正確な地図が即座に描き出せるそうではないか。
索敵と併用すれば獣だけではなく魔獣の位置も即時情報で共有できるのだろう?」
さようでございます。
「あくまでも例えの話として聞いてほしいが・・・お前がいれば戦に負けることはまず無いだろう。
理由は分かるな?
不幸にも陛下が野心を強くお持ちであったならば、魔獣の脅威を削ぐのに合わせて世界の平定を謳って軍を増強するであろうな」
でもそう言っているって事は心配する事無いのでしょう?
「ああ、現タリシニセリアン国王陛下に感謝せねば。
乱世にならずに済むのであるからな」
それでどういった話に繋がるのでしょうか。
「さすがにお前の名は伏せるが、国外に一部情報を開示する。
喧伝するわけではないから問い合わせが有れば開示する程度にとどめるが、『正確な情報』を伝え、我が国の戦力、国力を理解してもらい抑止力に使わせてもらう。
具体的には将来、他国との合同訓練が開催される際はお前の力を見せつける」
まあ、順当な所でしょうか。
人同士の戦争は無いものの、国境線での小競り合いや国内の諜報活動が無い訳でもありませんし。
先に宰相閣下が言っていたように『誤解』を与えない様にしてそもそも面倒事が起きない様にしないといけない。
ここでソフィー様からも一言。
「貴方のその力は存在するだけで周りに影響を与えるまでになってしまっている。
確かコルネンでの出稼ぎが終わったら故郷に帰りたいのでしょう?
ならば故郷に面倒事を持ち込まない様、今以上に慎重に行動しなさい」
はい、もっともな事でございます。
陛下が話を引き継ぐ。
「でだ、とりあえず力を見せつけるのは敵対的な国家への対応として、同盟は結んでいないもののベルニイスなどの友好国には贈り物をしてより良い関係を保ちたいと考えておってな」
お、なんか話が見えてきた。
「つまりお前のクラフトで拵えた宝石を送りたいのだ」
なるほど、原価がほゞ俺の工賃だけですもんね。
コスパ最強ですもんね。
「それで、それで!インビジブルウルフ卿は新しい宝石を拵えたのでしょう?
今日はお持ちではないでしょうか」
チェルナー姫様が興味津々で聞いてきます。
いや、メイドさん含む女性陣皆の眼光が凄まじい、文字通り俺に突き刺さる。
しかしマジで情報筒抜けだな。
この前作ったのはアレキサンドライトですよね、えっと(ゴソゴソ)。
そう言って椅子の脇に置いていたバッグを漁り凡そ30カラット程の宝石を取り出し”コトリ”とテーブルに乗せる。
「「「「おおー!!」」」」
歓声が上がりますが・・・
「やめてぇぇ!、ちゃんとマットを敷いて!素手で触らないで!」
ソフィー様が荒れ狂っておられる。
大丈夫です、ベリリウムは宝石にしましたから安定した状態になっています、素手で触っても毒の影響は受けませんよ。
「そんな事じゃないのよ!分かってやってるんでしょう!?」
いや、本当に大丈夫ですってば。
取り合えず日光と蠟燭の光と魔力の光で色の変化を見てみましょうか。
放つ色を次々変える宝石を見て
「素晴らしいものじゃな、当てる光の違いで色を変える宝石とは。
たしか伯母上は宝石鑑定師でもあったろう、どの位の価値になりそうじゃ?」
陛下がそう尋ねると、眉を上げているのに目じりを下げるという器用な顔芸をしているソフィー様は
「前例が無いので・・・」
そう言ってアレキサンドライトの放つ光をジッと見つめていた。
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