第215話 お出迎え
ピッケルさんの話でちょっとナーバスになっている俺、クルトンです。
いや、本当になぜなのですかね。
経済力(お金)も、地位(騎士)もそれなり以上にある(つもり)なのに相手が寄ってこない。
もう泣くしかないですかね。
「後は『運』だけだな、こればっかりはどうしようもない」
そうですか、泣いて良いって事ですね。
「はは、お前はまだ19だろう?焦る事はないって。
それより王城に知らせを走らせないといけないんじゃないか」
そうでした。
では先ぶれお願いしましょう。
「若いヤツを呼んでくるよ、待っててくれ」
暫くして騎士見習いの方がやって来て先ぶれの為に準備してきた書状を渡し、ソフィー様へ届けるようお願いしました。
明日の昼頃にはお呼びがかかるでしょう。
今晩は俺も騎士団の厩舎に泊まるつもりだから、門限まで王都の観光、挨拶、飲み屋で飯食いながら一杯ひっかけるかな。
宝飾、木工、鍛冶各ギルドとウリアムさんへ順に回り、最後にポックリさんへの挨拶が終わって「さて飯でも食うか」と飲み屋を探す気満々で店を出たら、目の前に王家の紋章付き馬車が止まった。
扉が開きアスキアさんが下りてくると
「さあ、王城へ向かいましょう」
と馬車に乗せられる。
認識阻害を発動する前のタイミングでたまたま見つかったのか、陛下の『勘』で先回りされたのか分からないが、もうちょっとブラブラしていたかったよぅ。
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どうしてこうなった。
「それでのう、儂もグリフォンが欲しいのじゃよ。
どうにかしてほしい、なんなら王命出しちゃおうか?」
今、俺は小規模とはいえ晩餐会に招かれ王族の方々と一緒の食事をとっている。
あれよあれよと連れてこられた部屋には、既に皆がスタンバっていた。
俺が最後だったらしい、ちょっとキツイ、このシチュエーション。
「しかも今回のグリフォンは雌だったそうじゃないか、繁殖の為に雌は幾らいても良い。
スレイプニルもそうだが野生の個体数に影響が出ない限り何頭でも受け入れるから捕獲を頼むぞ」
宰相閣下からのお言葉、『個体数への影響』なんて俺は学者じゃないんだから分かりませんって。
「うむ、それなら捕獲の際には専門家を同行させよう。
今後の計画を提出するように」
承知しました。
「私もお話してよろしいですか?
インビジブルウルフ卿、ソフィー様への鏡台を拝見しました、とても素晴らしかったです。
それで私にも1基拵えてほしいのですけれども。
仕様はまとめて書類にしておきましたので後で届けさせますわ」
はい、チェルナー姫様の仰せのままに。
食事をしながらのおしゃべり、という体で行われる業務報告と追加指示を受けるが何故か王笏と腕輪の話題が出ない、意図的なのかその思惑を勘ぐってしまう。
「ここに来るまで”あの”双子の世話をしていたそうね、その件でも話が有るから明日は陛下へ内謁を賜ります。
案件の内容を書き記しておきましたので後で部屋に届けさせます、事前に回答を準備しておくように」
ソフィー様から明日の予定を告げられる、段々仕事増えてくぞコレは。
しかしテホアとイニマの件が情報上がってるのか、まあそうか。
否応なく魔獣に関わってしまうからな、時間の問題だったんだろう。
「あの村には行商に偽装した騎士が交代で赴き常時監視していました。
当然魔獣が襲ってきた際の護衛の為でもあります。」
おう、国としても結構気にしていたんだな。
「今回貴方が護衛に付いた事は誠に幸運でした。それに貴方にとっては場当たり的な対応だったかもしれませんが、ペンダントのお陰でほゞ問題を解決できたと言って良いでしょう、良くやりました」
褒められた。
希少ではないにしろ貴重なサンプル素材を3割程使用、無償で提供したもんだから怒られるかと思ってちょっとビクビクしてたんですよね。
しかし、そうであれば治癒魔法協会の事も把握してたのではないのですか?
「恥ずかしい話しですが情報を掴んだのは彼らが中継地点のコルネンに行く準備をしだしてからです。
その話は時間的に私たちへの報告は間に合わず、対応をフォネルがすべて判断、仕切ってくれました。
私たちがその内容を把握したのはつい先程ですよ」
・・・護衛隊長さんからの報告で?
「あら、勘が良いわね(笑)」
なんとなくですよ。
「とにかく食い止める事が出来て良かったわ。
どうなる訳でもないけど、あそこが関わると面倒くさくてしょうがないのよ、心底ほっとしたわ」
「ほほほ」と笑った後にワインに口を付ける。
王族からもそう思われてるんだ。
大丈夫か、治癒魔法協会。
「それで次の話をしても良いだろうか、今回はチェルナーの馬車を納品しに来てくれたのだろう?」
はい、問題なく完成し、今回お持ちしました。
私の自信作でもあります。
・・・返事したのは良いものの、誰だこの人。
「あなた、自己紹介もせずに・・・本当にせっかちなのですから。
そもそも腕時計のお礼もまだではなくて?」
脇から奥様?と思われる方からそう窘められています。
「おお、そうだったな。
余はパストフ、娘のチェルナーの腕時計の件は大儀であった。此度も爺様の目は確かだったのを嬉しく思う」
ははっ、もったいなきお言葉。
「私はコヌバリンカ、改めてチェルナーの件はお礼をさせてください。こんなに溌溂とした娘を見れる時が来るなんて・・・」
コヌバリンカ妃殿下が泣きそうになってます。
感謝の意は既に受け取っておりまするゆえに、お気になさらず日々をお過ごし頂ければ幸いに御座いますです。
「クルトン、落ち着きなさい、何言っているか言葉使いが分からないわ」
ソフィー様からそう言われ
「滅相もございません」
と返す俺。
「・・・まずは飯を楽しもうか、王笏の件はそれからじゃな」
はい、陛下。
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