第210話 遺跡
あれからさらに1ヶ月経過しました。
腕輪のバージョンアップも王笏の製作も順調に進んでいる事に、何かのフラグじゃなかろうかと反って心配になっている俺、クルトンです。
腕輪は加護持ちの方たちの協力無しでも出来る負荷試験を行っています。
テストプラグを取り付け俺の魔力を術式へ強制的に流し込みどこまで耐えられるかの限界を検証しています。
これに合わせて、より腕輪に特化した性能の合金の成分割合を探っているところです。
地味な作業ですがここまでで凡そ5%程度でしょうか、耐久性、限界値を向上させる事が出来ました。
5%とは言ってもこれと同じ成果を5回達成する事が出来れば20%以上の改善になります。
現実ではそこに到達するまでに限界にぶち当たるでしょうが、たかが5%でもかなりの成果です。
まずはこれを成果としてもう一度王都に伺い、量産試作に取り掛かろう。
そして量産初回ロット制作の為の最終検証、調整として加護持ちの方たちに協力してもらい俺のハウジング内で試験を行う。
そろそろ仕事の終盤戦だ、気を引き締めないとな。
王笏も陛下に協力してもらわなければならない調整作業を残すのみ。
チェルナー姫様用の馬車も完成の後に光学迷彩などの機能面での性能確認も終了。
色は白を希望されていたが目立ちすぎるのと光学迷彩の付与が効きづらい事もあって無難に茶色で木目調に設えてある。
これはこれでシックで違和感が無い。
光学迷彩の効果も十分だったし。
納品で王都に行くときはこの馬車で行くつもり。
納品前の製品だから荷物は積むが俺は客室を使用しない、念の為のテストを兼ねての試走だ。
因みに次回の王都行きにはシンシアは同行しない予定、騎士団の皆さんに護衛をお願いし、コルネンで今まで通りの治療の訓練を続ける。
以前作ったミサンガの効果もあるから防犯は問題ないだろう。
合計5頭になったスクエアバイソンも全てお留守番。
陛下とソフィー様からは1頭でも連れてこいと手紙で連絡来たが、この1ヶ月で櫓を完成させたので既にコルネン近郊の哨戒業務に組み込まれてしまっている。
近郊の安全確保の為にも業務に穴をあける訳にもいかない。
フォネルさんのクウネルにもお呼びがかかったそうだが、これもスクエアバイソンと同じ理由で騎士団が丁重にお断りしたそうだ。
この件に対しては俺が倒した魔獣3頭の出没案件もあり、それほど強く求められる事も無く助かった。
取りあえず本格的に王都行の予定を立てないと。
最後の王都になるかもしれないしな。
色々あるがそろそろ仕事を締めていかないといけない時期になって来た。
村に帰る頃になって「まだ仕事を取っ散らかってます」なんて事は、周りに迷惑かけるだけで不義理も甚だしい。
開拓村まではムーシカの足で1日の距離とはいえ、早々頻繁に来れる訳でもない。
村からでも出来る仕事とそうでないものとの選別も含めて仕事量を調整していこう。
・
・
・
今日もカサンドラ宝飾工房に来ています。
腕輪の改良の為材料の検証を続けていたところ気になる情報が入ってきました。
「遺跡・・・ですか」
「ああ、サンプル送ってくれた鉱山で何箇所か見つかったらしいんだわ。
お前からの未確認鉱石のサンプル提出依頼があって、それがチェルナー姫様への品に使う物って事が分かってからは調査に気合いが入ったらしくてな。
今まで興味を示さなかった鉱山も積極的に鉱山周辺の調査をしだしたらしい・・・でだ、3か所・・・だな、詳しくは分からんが遺跡と思われる跡地が見つかったそうだ」
「興味あるか?」と親方が聞いてきます。
有ります、とても気になります。
ただの村、集落の跡かもしれませんがそれでも考古学者ならすぐにでも調査に入りたいでしょうね。
「お前はそんなでも無いか」
いや、大変興味はありますが今はそれより優先しなければならない事が有るので。
時間が出来たらぜひ調査したいですね。
因みに遺跡の場所は分かりますか。
「一応大体の位置は分かる様に地図も一緒に送ってもらっている、これだ」
地図を3枚テーブルに広げてくれる。
何かご都合主義的な感じですね、なんでこんなに資料が揃ってるんですか。
「そもそもサンプルの鉱石と一緒に分かる情報全部送れって言ったのはお前だろう。
その仕事の流れで向こうさんが気を利かせて位置情報含めて採取日時、採取者、その時の天気なんかの情報も全部の記録取ってんだよ」
・・・そうでしたね、お願いしてましたね。
俺は3枚の地図を手に取ると、その情報をマップへリンクさせていく。
取りあえず1箇所、マップ情報からそこの位置へ視界が飛び、空からの俯瞰状態から地表へ近づくと周りを見渡す。
・・・ここじゃないな。
もう一度俯瞰状態に戻り最初に確認した位置を基準に円を描くように徐々に探索範囲を広げていくと、基準地点から1km程離れただろうか、その場所にとうとう遺跡と思われる場所を見つけた。
親方、ちょっと情報をまとめますので俺はこれからデスク仕事に取り掛かります。
腕輪材料の検証は明日仕切直しますので。
「そうか、邪魔しちゃ悪いな。俺は弟子たち見てくるからなんかあったら呼んでくれ」
そう言って親方は部屋から出ていきました。
遺跡が気になってちょっと仕事になりそうにない。
取り合えずマップで正確な位置だけ確認しよう、後・・・いつになるかは分からないけど遺跡巡りを趣味に老後を過ごすってのも良いんじゃなかろうか。
お金が有ったとしても仕事を早期リタイヤするつもりはないが、ぼんやりでもやりたいことを今から見つけておくのはなんか安心する。
定年後に暇を持て余すような、そんな老後は避けたい。
暇になると要らんことを考え、行動しだすからね。
俺もそうならないとも言えない、だから今のうちに予防線を張っておく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます