第208話 スクエアバイソンがいる風景

コルネンに向かい軽快に進んでいる俺、クルトンです。


荷物等の都合でヴェルキーは騎士団さんと一緒に行動する必要がありおいてきました。

俺は今回捕獲したスクエアバイソン(4頭)を連れてコルネンに向かっています。


ムーシカに乗った俺が先導し一直線にスクエアバイソンが並んで走るさまはまるで貨物列車の様で、途中でたまにすれ違う商隊は自ら街道を外れ俺たちに道を空けてくれる。


いやいやいや、そんなご迷惑はかけれません。

俺たちの方が道を譲りますのでどうぞどうぞ、お先にどうぞ。


街道を外れ道を譲ると商隊がおっかなびっくりと言った感じで、ゆっくり俺たちの横を通っていく。


「おーい、クルトン!こいつは何だってんだ?」


おや?ポックリさんじゃないですか。

相変わらずフットワーク軽く跳びまわってますね、ご機嫌いかがですか。


「いやいや、そうじゃねえだろう。なんだ、このバカでかい牛は」

「ポックリの旦那、ありゃスクエアバイソンだぞ」


同業のおっちゃんが俺の代わりに解説してくれた。


ポンデ石切り場の奥の森でですね・・・・。



「へぇー、そりゃ難儀なこった」


そうだ、いつもお世話になってますからこれどうぞ。

一応ハムにしようと持ってきたんですよ、2本あるので1本どうぞ。


そう言って魔獣のもも肉を1本渡す。

骨は肉以上に貴重な事もありしっかり取り除いているから、適当に切って焼けば手間いらずで美味しい。

あ、この調味料もどうぞ、バーベキュー用のハーブ塩です。

旨いですよ。


「「「なに!」」」

ポックリさんに目を血走らせたおっちゃんたちが群がる。


「ちょっと待て、俺が貰ったんだぞ!食いたい奴は対価を払え・・・」



なんかワチャワチャしだした。


「じゃあ、これで。今度は王都で会いましょう」

・・・放っておいて先に進もう。



はい、無事到着しました。

相変わらずスクエアバイソンの大きさには圧倒されます。

広すぎるかと思った厩舎と併設されている放牧地もここまでくると少し心配になる広さ。

幸い境界線を示す杭は有っても塀は無いので圧迫感はありません。



この厩舎の立ち上げに合わせて雇った厩務員も唖然としています。

ここまで一気に増えるとは予想していなかったんでしょう、俺でもそう思う。


「お、思ったより多いですね、いえ、良い事です。うん、コレは良い事・・・」


先ぶれも出せずにすみません。一応ここに来るまで基本的な躾はしましたので皆さんならその後の調教は問題ないと思います、宜しくお願いします。


「はい、承知しました、任せてください。

それでなんですけど、この4頭への名前は決めておいでで?」


いえ、まだです。


「では、私たちに任せて頂けませんでしょうか。」

ええ、構いませんよ。


あ、でも太古の大災害の名前は勘弁してくださいね。


「ハハハハ、大丈夫ですよ。

パリメーラ姫様は英雄譚がお好きですからあのような名づけされただけでしょうから」


「でも今では大災害の名は縁起物ですよ」と笑いながら厩務員さんがパメラ嬢をフォローする。


この気遣い、優しい。



「では早速あの子らに挨拶してきますよ」

そう言うと見るからに軽い足取りでスクエアバイソンへ向かって行った。



今回雇った厩務員さん達は8人、6人はまだ駆け出しだが2人は80歳を超えるベテラン・・・というより若手でバリバリ働いている人は今の仕事が有って、来てもらえる暇な人は居なかった。

なのでリタイヤした人を紹介してもらい雇用した。


それでもこの世界の80歳は元気で、当初感を取り戻すまで戸惑っていたものの今では現役と遜色なくチャキチャキ働いている。


その動きも日本人の80歳とは比べるべくもない、健常者そのもの。

任せても全く問題ないだろう、大丈夫そうだ。



騎士団厩舎にムーシカを預けて下宿先へ帰る。


そこでスクエアバイソンを4頭捕獲した旨話すとベルケお爺さんがまたソワソワしだした。

これにお祖母さんが苦笑いをして「見に行ってくれば?」と俺に顔を向けて言ってくる。


そうですか、明日は用事が有るので明後日でどうでしょう?


「そうだな!、じゃあ明後日な」

速攻返事をしてくるお爺さん、その後は始終ウキウキしっぱなしだった。


遠足前の子供みたいだ(笑)



「正面から出て直ぐに厩舎が有るんだろう?皆も興味あれば交代で見に行ってくればいい、俺も見に行きたいしな」

アイザック叔父さんがそう言って自分も行きたい旨を宣言すると、他の人も全員賛成した。


じゃあ、交代で俺が馬車で送迎しましょう、予定を立てておいてください。



何だかピクニックの様な雰囲気で楽しい。

半日程度とはいえ、この世界でこんなに緩い時間を過ごせるなんてとても贅沢な事だから、それを許容できるここマルケパン工房の経営は良好なんだろうな。



こんな感じで父さん、母さんたちもコルネンに連れてきたい。

俺の馬車なら1日で着くから、農閑期ならクレスに家を任せても大丈夫じゃないかな。

その後にクレス、イフ、エフの休みを取って同じようにコルネンに招待してもいいだろう。


畑が有るから王都までは相当な理由が無いと無理だろうが、ここコルネンなら何とかなる。


そうしよう、いつになるかは分からないけど、村に戻ったら皆と話してみよう。

きっと楽しくなるさ。

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