第205話 捕獲

これまで忙しかった毎日を思い出して「良く過労で倒れなかったな」と改めて感じている俺、クルトンです。



やっとポンデ石切り場に来る事が出来ました。

スクエアバイソンの捕獲部隊として編成された騎士団さん15名と一緒にキャンプを設営しています。


ヴェルキーも連れてきていますので石切り場から離れた場所にですが。


今回俺は馬車は使用せずムーシカに跨り騎士団の隊列に混じって行動しています。

荷物は直ぐに必要になる分を積んで、他は騎士団が準備した荷馬車に載せている。



「明日から森の北側の探索を開始する。

空から私が、陸上の先行偵察をインビジブルウルフ卿が行う。

ヴェルキーは他騎士たちと後詰で移動となるが緩やかに行軍を行う様に、標的を確認、追い立て、釣りを開始した時点で鏑矢を放つのでその際は捕獲体制で待機となる。

質問は?・・・よし、無いな。ではこれから野営の準備を行う」



はい、ハウジング展開しました!


「・・・承知した。では飯の準備だな、テントの設営は個人の判断に任せる」





「いやはや、クルトンさんがいると野営が楽で助かります」


「ほんと、飯も旨いし」


「夜番が無いだけでも大助かりですよ」


いやーそれ程でもー。

実は索敵とマップ機能を併用してスクエアバイソンもどこにいるか既に分かってるんです。

空は流石に無理ですが巣に戻ってきているグリフォンも。


「・・・本当ですか?それが本当なら明日の探索意味有ります?」




「おい、クルトン!それ本当か?

ちょっとこっちこい、作戦の見直ししないといけないだろう?

そう言った事はもっと早く言え!!」

首根っこつかまれデデリさんのテントに連れていかれた。



「クルトン、ちょっと油断しすぎだ。俺たちの負担を考えてくれての行動だろうが自分の力に無頓着すぎる。

さっき話していた技能はもう少し秘匿しろ、騎士団内でもだ。

その内余計な奴らが寄ってくるぞ」


・・・おっしゃる通りですね、久しぶりの森ではしゃいでいました。

もっと緊張感をもって行動しないと足元をすくわれます、いつか必ず。

取り返しがつかない事態を引き起こさない為にも注意します。


俺、マジ反省。




「それでグリフォンの場所が分かるのか?」

あ、え?ええ、分かります。


「・・・遠いか?」

あれ?グリフォンの捕獲を優先するのですか?

さっきは言わなかったですけどスレイプニルの位置も判明してますから、そっちの方が先じゃないですかね。


仮にグリフォン捕獲しても扱える人が居ませんy・・・パリメーラ嬢にですか?


「いや、フォネルの方だ。パメラは未だその力量に届いておらん。振り落とされて大怪我するだけだ」


ああ、そう言えばフォネルさんも精霊の加護持ちでしたね。

そうですか、フォネルさんのですか。


・・・けど今度こそ陛下が持ってくと思いますよ。

スレイプニルも。


今回の作戦で駐屯騎士団が捕獲を許可されたのはスクエアバイソンです。

それ以外は多分王家への献上を求められると思うんですけど、俺の事業もありますし。


「何とかならんか?」

すみません、こればっかりは。

騎乗動物繁殖事業運営の前提に関わる事なので。




でも・・・俺がいないときに偶然捕獲されたらどうしようもないかなーー(棒)


「・・・」


あっ、仕事一つ残してきたわーーー

どうしよう、俺はコルネンに先に帰らないといけないなーーー(棒)


「・・・」


あれ?こんなところに地図がーーー、グリフォンの巣が書き込んであるーーー(棒)


「・・・」




「では食事の準備が有るので俺はこれで( ・`д・´)」



ボソ(恩に着る)



翌朝、俺が索敵とマップを駆使して確認したスクエアバイソンの居る手前まで最短距離で到着する。


「本当にいましたね、ヴェルキー程ではないですけど十分な大きさです」


森に入っているのは俺を含めて8人、デデリさんは空からなので俺たちは巨大なヴェルキーをデコイにして気配を紛らわせている。


では捕獲の準備をしましょう、とは言っても俺がヴェルキーの背に乗って近づくだけです。


手順としては


・ヴェルキーと一緒に近づく。

・捕獲対象に制約魔法を打ち込み行動を制限。

・騎士団員が近寄り、少なくともここに居る人間は敵ではない事を知ってもらう。

・制約魔法を解除。

・逃げなかったらとりあえず第一段階クリア。

・持ち込んだ飼葉、ヴェルキーご執心の青草を見せて食いつくか確認。

・食いついたら餌で釣る。


魔法を解除時点で此方に襲い掛かってきたらヴェルキーと俺とで対処する。

もう一度制約魔法を掛けて逃げればいい。


騎士団員が逃げきれたら制約魔法を解く、その際は既に俺は認識阻害の恩恵で見つかる事も無い。


制約魔法を掛け続ければ良いという意見もあるだろうが運用している最中に、もし何かの拍子に魔法が解除されて暴れ出したらかなりの被害になる事が容易に想像できる。


お互い納得したうえでの協力関係が一番なんですよ。

特にスクエアバイソンみたいな質量お化けは寝返りだけで人を殺せるからね。




「では合図が有るまで我々は待機しています。ご武運を」

いや、戦争行くわけじゃないからね。

前にもあったな、こんな事。



ヴェルキーに近づくと前脚を”ポンポン”と叩き

「じゃあ、行こうか」

そう言って背に跨り認識阻害を発動、標的に向かい移動し始める。


おとなしい個体なら良いんだけどな。

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