第199話 王笏も作ろう

久々のカサンドラ宝飾工房、俺専用の作業場に戻って来ました。

それなりの期間留守にしていたのに掃除がしっかり行き届いていて感謝の念が絶えない俺、クルトンです。



シンシアを騎士団に送りそのまま工房に出勤してきました。


整えておいて頂きありがとうございます。

「おうよ、これから王笏の製作だろう?

汚い場所で仕事するなんてのは不敬ってもんだ」


その声を聴きながら資産登録したダイヤで拵えた狼の置物をバックから取り出し棚の上に飾る。

作業場をゆっくり眺めてから椅子に座り出されたお茶をすする。



そんで王笏のデザインはこれになりまして・・・。

そう言ってカバンから出した5個の内2番の柄頭のサンプルを手に取り「陛下はこれをご所望です」そう続けて言って親方に手渡す。


「フム、思ったより普通だな。でも難易度が下がる訳じゃねえ、全力でやらせてもらう」


設計図はこれです。使用する材料の内オリハルコン、魔銀、青銀は一ヶ月以内に王都から工房に届きますのでそれ以外の純銀細工とダイヤの彫刻を先に進めようと思います。


「分かった、俺たちの今の仕事は銀細工って訳だな?」


はい、一応手付金を頂いてますのでそれで材料調達しましょう。

腕時計程時間はかからないと思いますが結構な付与術式を刻まなければならないので、刻む面の下地は出来るだけ滑らかになる様に研磨お願いします。


「おうよ。それでな、帰って来て早々で悪いんだがサンプルが溜っていてな。

鑑定がてら選別してくんねえか」


ああ、大分留守にしてましたからね、各鉱山から送られてきた鉱石サンプルが溜ったんですね。

そりゃそうですよね、先にそっちの方を片付けますか。



それから親方は弟子を呼んで、計5回に分けて台車いっぱいのサンプルを作業場まで持ってきた。


思ったよりありますね。



「姫様の腕時計の件が公表されてから徐々に増えていってな、一旦落ち着いた様だがまだ収まらないと思うぞ」

ほう、各鉱山の方々も何か思う事が有ったんでしょうかね。

地場の鉱石で拵えた物が王家に献上されるとなると箔も付くんでしょう、そのうち作品の鑑定書に産出鉱山の証明書も必要になるかもしれませんね。



おしゃべりはここまでにして鑑定を進めよう、午後はスクエアバイソンの確認に行くつもりだしね。


では・・・


高純度の鉄鉱石

黄銅鉱

亜鉛

タングステン

チタン

モリブデン

バナジウム

ニッケル

ボーキサイト

クロム

ベリリウム

ドロマイト(マグネシウム)

イリジウム


キタ━━(゚∀゚)━━!


チタンとボーキサイト!!


キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!



やべえよ、やべえよ、これで飛行機作れんじゃね?

材料有ったからってすぐできるもんじゃないのは分かってるけどテンション上がる、夢が広がる。



ってかベリリウムまである。

確かこれは人体にはけっこう厄介な毒性が有ったはずだから取り扱い注意しないとまずいな、頑強なこの世界の人類でもどういった影響あるか検証されていないんだろうから。


でも、でもだよ?ボーキサイト、ベリリウムが有るって事はルビー、サファイヤ、アレキサンドライトも作れるんじゃね。


材料からしてみれば問題ないだろう。


こっちもヤバいな。

俺、これだけで一生食ってけんな。


ホント探せばあるもんなんだな、この世界どうなってんの?

こんな短期間に欲しい鉱石見つかるとは思ってなかったよ。

なんでこの国にこんな沢山の種類の鉱石集まってんの?



「そんなにか?」


はい!かなりの収穫ですよ!

有る意味この国の資源、変態ですね!


目録からチタン、ボーキサイト、ベリリウムの産出地を確認、実際の産出量がどの程度になりそうか調査しないと。

ぜひ産出地に赴いて調査を行いたい。


どうしよう、王笏もあるが腕輪の件もあるし・・・帰る時の挨拶時に「忘れてないでしょうね?」って釘を刺されたソフィー様の鏡台も作らないといけない。

マジどうしよう、時間が足らない。



「・・・浮足立ってちゃ足下救われるぞ。

とりあえず鉱石の方は知りたいことを相手に聞けばいい、現物欲しければ金払って送ってもらえばいい。」


ああ、そうですね、気ばかり急いてしまってもっと皆の力を借りないといけませんね。



「それに『クルトン』の名前で依頼すりゃ優先的に動いてくれると思うぞ。

なんたってお前は陛下の依頼でチェルナー姫様へ祝いの品をお納めしたんだ。

宝飾ギルドじゃなくても職人界隈じゃ有名人だぞ」


マジですか!?


「ああ、でもモグリの連中はお前がその『クルトン』って分かってねえから・・・

半分都市伝説みたいな扱いだけどよ(笑)」


・・・でもその方が有難い。

そもそも俺は出稼ぎでコルネンに来てるんだから、後1年もしないうちに村に戻る予定なんだから。



では、この3種類の鉱石については確認をお願いする為に手紙を書こう、依頼書も添付して。

姫様の腕時計製造は終わったのだからよく考えればそんなに急いで必要になるもんでもない・・・はず。


チタン、アルミなんかは馬車のフレームに利用したくもあるが木材があれば炭素を抽出してカーボン繊維で賄える。

カーボンは何か有った場合修理出来るか微妙なんだけども。



取りあえず昼までもうちょっと時間ある。

ここに有るベリリウムとボーキサイト利用してクラフトスキルの練習しておこう。

ベリリウムは有毒だからこのままにしておくと危ないってのもあるし。



で、これか・・・


「ベリリウムは正しい知識で慎重な取扱いのもと、厳格に管理しないと危険ですからね」


いや、うん。危険ではあるな・・・うちの工房が。

騎士に常駐してもらわんとまずいんじゃないか?

いや、クルトンが騎士か。


当てる光で色が変わる宝石なんて初めて見たぞ、ホントどうすりゃ良いんだコレ?



ダイヤモンドの狼の横に置かれ、光によってその様相を変える宝石を満足そうに眺めるクルトン。



「あの材料で30カラットくらいになりましたね、これアレキサンドライトって言うんですよ。

カットも良くできたわ~、ホント良い仕事したわ~」



コイツ分かってて俺をからかってんだろ?

そう言うヤツなんだよ、コイツ(クルトン)は!

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