第191話 解決・・・しそう?

安全に牛が入れるスペースが無いため石切り場入口付近で事の経緯を説明している俺、クルトンです。


斯く斯く云々でありまして・・・。

「・・・確かにもったいないですね、これ程の獣を易々と手放すのは。

しかし置いて行こうとしたその話も理解できます、さてどうしたものか」


捕獲する気満々で助けたのだが、いざ連れて行こうとした段階であまりにも大きな体躯で人間の生活圏に連れていくには問題が有りまくりな事が判明したこの牛。


コルネン都市内に入れる事は当然無理、都市外に放牧ってのもどんなもんか。


あの森の中だったからこそのあの体格なのだろう、環境が変われば牛自身の体調にも悪い影響が出かねないし。


行動そのものは制約魔法で解決も出来そうだが・・・ここまで懐いてくれるとちょっとそんな気もうせてしまう。



うーん、やっぱり森に帰ってもらうのが最良か・・・。


当の本人、牛はというと背の一番高いところに狸を乗せて近くの草をモッシャモッシャしている。


良く見ると顔に対して口、顎が小さく一口草を食んでは暫くモッシャモッシャしていて思ったより食べる量が少ない様に感じる。


・・・この見立てに間違いなければ車で言う燃費も相当良さそう。

ますますもったいなく感じてきた。




もう一度連れていくにあたっての問題点を整理してみよう。


・単純に大きすぎる・・・厩舎を都市外に新設しなければならない。

・重すぎる・・・移動の際に街道を破壊してしまうだろう。

・餌が大量に必要・・・これは解決しそうな感じ。

・調教出来るのか?・・・おとなしくても言う事聞かなければその質量自体が危険。

・何かの要因でもし暴走してしまったら人が取り押さえれるのか。

・排泄物の処理方法、量の問題や堆肥などで利用可能か


こんなところか、やはり問題の殆どがその巨体に関連したものだな。

コントロールできれば輸送に関して言えばこれ以上ない力を発揮しそうなんだけど。



まず大きさについて。

これはどうやっても無理、小さくなんてできないし。


重さについては・・・何とかしたい。

重力制御の付与魔法陣を利用すれば解決するか?

しかし、この重量が有ってこその利点も多くあるはずなので何かしらの対処したとしても調整が必要だろう。

別の方法を考えた方が良いか?


餌については、さっきの様子を見ている限りは大丈夫そうだ、それなりに必要にはなるだろうが金銭的な問題は解決出きる。


調教や不測の事態での対処については・・・西遊記の孫悟空の頭に付けられている緊箍児(きんこじ)だっけか、そんなものを作って装着させようか。

可哀そうではあるが保険、第三者へ説得する時の為にも必要だろうね。

その際は痛みを伴うようなものではなく睡眠の魔法で解決したい。


排泄物は・・・こればっかりは確認しないと分からない。

取りあえず都市外に飼える場所を準備してからだな、トイレの躾が出来ればある程度解決する問題ではあるけども。



もしかして・・・いけるか?



「まずはここで街道を痛めないで移動できる様に準備してからコルネンに戻りましょうか」


何だか騎士さん達も連れていくこと前提で話をしだした。


ならばクラフトスキル全開で何とかしよう。

さて、何を拵えれば良いだろうか。



結局足輪と鼻輪を作った。


付与した内容は重力を弱めて体重を軽くするのではなく、四つの蹄に集中する重さをより広く分散させるようにした。


重力、体重はそのままで各々の蹄に『かんじき』を履かせるイメージ。


勿論物理的に履かせている訳ではなく、足輪に施した魔法陣で蹄が地面に接地する瞬間各蹄ごとに反応する仮想の力場を形成、その上に蹄が乗る様にして地面へのダメージ、沈み込みを防いだ。


ハウジングの区画を隔てる障壁の応用です。

こんなのも取り込めるなんてクラフトスキル、マジ有能。


足跡は付いてしまうがこれくらいは許容範囲だろう、普通に馬車の轍より浅いし。


鼻輪は牛であればつけるだけでも扱いやすくなるので試してみた。

痛みを感じずらい箇所とはいえ暴れる事も考慮し、身体能力強化マシマシで俺が取り押さえる為にスタンバっていたが意外とすんなり装着完了した。


因みに鼻輪には特定の人の声、合言葉で発動する睡眠の魔法陣が施してある。

所謂安全装置ですね。




こんなもんでしょうか


「ですね、これで一旦コルネン近郊まで行きましょう。今から先ぶれを出して大隊長と領主様(カンダル侯爵)に事情を知らせますので」


え、今から?

先ぶれの騎士さん、本当すみません。

あ、コレ途中で食べてください、パンと野豚のハムです。

あとチーズと生ハム、旨いですよ。

ピクルスなんかもどうです?味変で良いもんですよ。

え、多すぎる?いやいや、どうぞどうぞ。




うん、一時はどうなる事かと思ったけど何とかなるもんだな。


しかし狸はずっと牛の背に乗りっぱなしだな、そこが気に入ったみたいだ。



次の日の早朝に出発、スレイプニルが引く馬車は相変わらず軽快に進む。

護衛としてその周りを囲む様に隊列を乱さない騎士さん達も流石。


そしてその間をはしゃぐ様に位置を変えながら併走しているポムとプル。

ぺスは馬車の中でシンシアからモフられていて、馬車の後ろは山と見紛う様な巨体の牛が狸を背に乗せ付いてくる。


足輪に疲労軽減の付与も施したとはいえ巨体に似合わぬ軽快な走りで結構な時間走り続けているのに遅れることなく馬車に付いてくる。


息が上がる様な素振りも無いし足輪の付与も正常に動作して道が荒れる様な事も無い。


これは結構な騎乗動物手に入れたんじゃね?



今回もデデリさんに自慢できるんじゃないかと俺が鼻の穴を膨らませながら馬車は進み続け15時を少し回った頃合い、昨日のうちに出発した先ぶれからの情報を受け取ったんだろう「キュオオオォォォーーー」とグリフォンの鳴き声が聞こえた。


遠くにその飛影を確認すると皆に合図をして徐々に速度を落とし停車する。




ほどなくして俺達の上空に到達したグリフォンはゆっくり3度上空に円を描きながら降下してくると、


「これまたエラいもんを連れてきたなァーーーー!」


デデリさんのバカでかい声が上から降ってきた。

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