第189話 寄り道をしていこう
王都を出発しポンデ石切り場へ向かっています。
遠回りになりますがコルネンに戻ったら色々身動き取れなくなりそうなので騎乗動物のアタリだけでもつけておこうと思った次第でございます。
そんな事もありタップリ食料を積んできた俺、クルトンです。
「まあ、『ハウジング』で野営の手間がほぼ無くなりましたから問題は無いのですがね」
護衛の騎士さんも困ったもんだと言った雰囲気で付き合ってくれています。
出発して今日は二日目、昨日の晩に「もしかして」と思い、区画を狭めて『ハウジング』を使用したら消費される魔力量が段違いに少なくなった。
空間の一辺の大きさを半分に調整して空間の大きさが8分の1になると、それに応じ魔力消費量が同じ割合で減少していく感じ。
この人数での野営ならこれでも広い位なので規模を縮小して昨晩は就寝した。
当然夜番の必要もなく騎士さん達もぐっすりだ。
それで改めて分かった事だがハウジングの区画内に木が生えていたりするとそれを利用したものが作れた。
そう、以前試した時に『資材が足りません』とシステムメッセージ?に警告されたのも俺が訓練で雑草すら吹き飛ばし更地にしてしまった為の様だった。
区画内に十分な量の樹木が生えていれば普通に家が建てれたみたい。
早く言ってくれよぅ。
昨晩は取りあえず区画内に生えていた木を薪に変えて食事の支度をした。
木工のクラフトスキルに頼る事をしなくても視線の動きだけで薪に加工できる、しかもちゃんと乾燥状態にして。
まさしくここでの俺は神!
・・・いや、調子に乗ったらいかんな。
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明日の午後にはポンデ石切り場に到着する予定だ。
そこからさらに3日間の日程でその奥にある森を探索、騎乗動物に適した動物を捕獲しようと思う。
捕獲できなくても次に来るときの下調べになるから無駄にはならない・・・はず。
俺の願望だがスレイプニルが捕獲出来たら最高だと思うんだよな。
野生種の馬でもいい。
グリフォンだと強力ではあるが何気に餌も大変だし乗り手も選ぶ。
下手な人が乗るもんなら舐められて空から振り落とされかねないし。
そう考えると草食の馬は人の移動手段として最良だと思う、少なくとも人を捕食しない。
グリフォンとの危険度を比較すればそれだけで段違いに低い。
個体数も多いだろうし。
取りあえずあの森の獣は皆大きいからな、色々期待してしまう。
バカでかい兎なんかいても良いんじゃないかな。
ラビットライダー・・・ふざけている様だが面白そう、戦場を縦横無尽に跳びまわるラブリーシルエットを想像すると遊撃に最適なんじゃないかと思えてきた。
「・・・いますよ」
えっ?
「デカい兎、居ますよ」
本当ですか、へえー騎乗動物で見た事無いのですが人が乗れる程には大きくないんでしょうか。
「いえ、この森のは特にデカいので三人乗っても大丈夫なくらいですけども・・・」
問題でも?
「ええ、色々あるのですが一番大きな問題点は頭が悪すぎる事だそうです。
人を襲うようなことは無いのですが幾ら訓練しても命令を全く聞かないのです、火への耐性も全くダメとの事で野営の焚き火を見てで逃げ出すと聞いた事があります。
大きな音にもすぐ反応してパニックになるそうですし」
ああ、なるほど。
「次は上下運動が酷くて乗り心地が悪すぎる事ですかね。それと瞬間的な方向転換を頻繁に行うので人の体では耐えきれずに気絶してしまうのです。結果振り落とされて調教中にケガ人が続出したそうです」
意外と凶悪だな、兎。
「しかもあの手の獣は脚だけでなく背中から腰を大きく撓らせて走るので騎乗するとその動きを阻害してしまう様なのです。腰その物の強さもさほどではないので人が乗るとその重量で兎が腰を痛める事もある様で・・・」
騎乗動物としては欠陥動物ですね。
いや、兎からしたら人の都合でそんな事言われる筋合い無いのでしょうが。
「ですから騎乗動物と言うより食料として狩るくらいですかね、体の大きさの通り食いでがかなりあって肉も癖が無くて旨いですし毛皮も上質なものがとれます」
「白い個体から採れる一枚毛皮の冬用マントは高級品ですよ」との事。
ふむ、ぜひ乗りこなしてみたい。
「本気ですか?乗り心地は別にしても全く言う事聞かないのですよ」
馬具・・・兎だとその表現が正確かは分かりませんが付与を施した馬具で何とかならないか試してみたいですね。
まあ、捕獲出来てからの話ですけど。
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こんなあからさまなフラグを放置していたからだろう,
翌日の晩に俺一人で森に下見に来たところ・・・・
「メッチャおるやん」
前回グリフォンを捕獲した場所から出来るだけ反対方向に離れながら索敵していったら"ダムッ、ダムッ"と結構な音が地面から響いて来て、音に向かって行くとでっかい兎が居た。
20匹くらい。
大きさはまちまちではあるが小さいので中型犬位。デカい奴だと自動車のミニバン位の個体が集まり、周りを警戒してスタンピングって言うんだっけか、大きい個体が中心になって後ろ足で地面をたたいている。
草を食む訳でもなく耳を忙しなく動かし暫く地面をたたいていたが、いつしかそれが止むと俺から見て兎の向こう側から大きな茶色い獣が姿を表した。
・・・牛?
以前開拓村に帰省した時に仕留めた水牛もデカかったが今回のはそれ以上、しかも背の盛り上がり方が尋常じゃない。
人間でいう超ゴリマッチョ体系、そして赤茶色のアメリカバイソンみたいな風体。
体の大きさに似合わず角は小さいが、真っ黒で艶が有り先端が鋭くとがったそれは決して侮ってはいけない事が一目でわかる。
あ、小さいと言っても体と比較してだから多分俺の腕位の大きさくらいは十分はある。
本当に4tウィングトラック車位有りそうな巨体が草をかき分ける様な軽い感じで樹木を押しのけ近付いてくる。
威圧感と言うかオーラのレベルと言うかハンパない存在感。
ここまでの巨体だと捕食する肉食獣などの天敵も限られるんだろう、まるで隠れる気が無いように見える。
1人で来て良かった~。
今は認識阻害全開だから何者からも気づかれていない、当然目の前の兎からも、牛からも、その脚に噛みついている蜥蜴からも。
ん?蜥蜴?
ムーシカを捕獲した時に襲ってきたのと同種の蜥蜴だろう、こっちの方がより緑がかっている様にも見えるがそいつらが合計6匹、牛の足4本すべてに嚙みついて引きずられてきている。
まさに暴走機関車を見ている様。
兎たちも蜥蜴に気が付いたのだろう、それを認識すると文字通り脱兎のごとく散り散りに逃げ出した。
それで巻き起こる風が草木を揺らし一瞬森に大きなざわめきが響くと・・・
「ブモオォォォ・・・」
気が付けば弱々しく鳴くその牛のみ取り残され、脚から流れ出る血は地面を濡らしていた。
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