第187話 ハウジング
王都外、いつもの訓練場所にシンシアと来ている俺、クルトンです。
「・・・何にも無いね」
「もとはどのような風景だったのでしょうな・・・」
はい、俺の全力を毎朝ブチかましていたので直径凡そ200m位でしょうか、ほぼ円形の区画には草一本も生えていません。
シンシアも護衛の騎士さんも遠くを見つめています。
ムーシカ、ポム、狸たちはその中を縦横無尽に走り回ってはしゃいでいます。
ムーシカがはしゃぐの珍しいな。
今回はここを借りてハウジングを試す、確か1haの広さまで大丈夫だったはず。
早速ハウジングの機能を展開、かなりの魔力が消費され前後左右の土地が見えない障壁に区切られた後に俺の支配下に置かれる。
地面をゼロ起点にして上空50m、地下50mも含めた1辺100mの立方体の情報が大量に俺の頭に流れ込む。
あややややややや・・・・・。
どの位の時間だろうか、シンシアも騎士さん達も違和感を感じていないようだから数秒なのかもしれない、少々混乱したが何とかその程度の時間で俺の体全体に情報が浸透した感じがする。
今までも俯瞰視点で周りを索敵、監視していたがこの箱庭の中では本来なら見る事が出来ないであろう地中の状況まで視覚として認識できる。
凄いな、この空間の中なら俺に死角はないな。
じゃあ、早速やっちゃいますか、「え、俺何かやっちゃいました?」の台詞を言う為にここへ家でも置こうかな。
実家の設計図なら頭に入っているからちょいちょいと・・・・、
できないorz。
今、システム?から反応が有った。
『建築資材が足りません』
そうか、そうだよな。
材料は必要だよな・・・、ちょっと期待していたんだけど、パッと新築家屋が現われる様子を。
そしてシンシア、騎士さん達の度肝を抜く瞬間を。
「なにしてるんだ?」
「分からないの、でも悲しそう」
ああ、放っておいてくれ、下手な同情は俺の心に刺さる。
ええ、正直に言います、調子に乗ってました。
気を取り直して資材が必要ないであろう土地の変化を試してみよう。
地面をそこそこの広さで隆起させてから地面をカッチカチに圧縮、固める。
家の基礎工事の練習だ。
魔法では無いから当たり前なのか?全く魔力の消費が無い。
ハウジングを起動させた際に持ってかれる1回の魔力だけで済む様だ。
これについては親切仕様!良いじゃないか。
資材なんかの条件さえクリアすれば当初思い描いていた「俺の最強の箱庭計画」を遂行する事が出来そうではないか。
その後も前世の記憶を思い出し、今のハウジングの情報との齟齬が無いか確認、検証していった。
そしてその中の機能の一つ、『来客者設定』なるものが地味に強力だった。
簡単に言えば人を含めた生物(植物は除く)をこの箱庭に招くかどうかの設定。
登録していない招かれざる客人はこの箱庭に入る事は出来ない。
・・・マジ凄げえ。
ハウジング起動時点でその範囲内に居た人は自動で登録される様だが、もちろん登録を解除する事も自由自在。
試しに騎士さん一人の登録を解除したら箱庭外に瞬間移動した。
・・・何デフォで空間魔法使ってんの、この機能。
その後その騎士さんは俺が再登録するまで体当たりしようが剣で切りかかろうが此方側に入る事は出来なかった。
何なら外の音も遮断出来て強力な結界に守られている様な感じだった。
マジで恐ろしい。
1haだけだが俺の王国誕生したんじゃね?って勘違いしそうな機能。
多分魔獣も寄せ付けないだろう、完璧なセーフティーゾーンを手に入れた様なもんだ。
暗殺なんかの問題解決したんじゃね、これなら。
消費する魔力量はえげつないが安全なキャンプ地が都度設営できるって事だろう。
改めて凄げえな・・・実質兵站含めた戦力をまる抱えできる要塞だもんな。
「クルトンさん、流石に不味いですよこれは。
ちゃんと王都に居るうちに陛下か宰相様に説明しておいてくださいね、本当にヤバいヤツですからこれは」
はい、騎士さんからの忠告でなくてもそうしなければならないのは分かります。
・・・もう王城へ戻りましょうか。
・
・
・
無事王城に着き何回目になるだろう、宰相閣下の執務室でお茶を頂いています。
そしてハウジングの機能についての報告です。
あれから帰る際にハウジングを解除したところ起動時に消費したのと同じ量の魔力を持っていかれた。
訓練の成果もあり何とか大丈夫だったが、解除には一晩くらいは時間をおいて体内魔力を十分に回復させてからの方が良いだろう、ちょっとクラっとしたしね。
あの時の事を思い出していると宰相閣下から声をかけられる。
「話を聞くに・・・クルトン1人で展開できる結界魔法の様なものか?」
そうですね、そんなもんです。
そう答えると後ろに控えている護衛の騎士さんが一人"シュタッ"と手を上げます。
俺に話をさせろって圧が凄い。
「ん、発言を許可する。
他の者も今回に限りこの場での自由な発言を許可する。
もし失言が有っても問題にしない、とにかく正確な情報を頼む」
それを聞いて挙手した騎士さんが話し出します。
「それでは・・・、今インビジブルウルフ卿は『結界魔法』と同等で有ることを肯定しましたが正確ではありません。
私のこのナイフ・・・青銀製です、これで境界にある結界の様な力場を攻撃しましたが全く変化有りませんでした。」
宰相閣下の片眉がピクリと動きます。
「『魔法』ではないという事か」
「はい、そう考えるのが自然かと。
他には1人で展開しているには広すぎる領域、
おそらく『解除』するまで半永久的に効果を発揮する障壁、
その障壁も恐ろしく強力で先ほどの青銀製ナイフも含め手持ちの武器では全く歯が立ちませんでした。
これは事前に登録した者しか箱庭内に入る事が出来ないという事だそうです」
「・・・確か広さは1ha程だったか?」
「その面積だと100人単位の戦力を安全に野営させる事が出来ます、魔獣の夜襲を警戒する必要が無い野営ができるのは・・・我々からしたら野外で熟睡できる夜を過ごせるのは夢のようですよ」
うん、俺は蚊帳の外です。
お茶美味いな。
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