第186話 「甘すぎて舌の根元がキュっとする、塩もってこい!」
馬車の試乗を無事終え王城に戻って来ました。
無茶な運転はしていませんのでドライブを楽しんだ感じで皆元気なものです。
そうして久々にムーシカ達と遠出が出来たので満足している俺、クルトンです。
「王家の馬車もこれにすればいいのに・・・ねえアスキア、そう思わない?」
「そうですね、それは同意いたしますが付き合いと言うものもあります。
今まで協力してくれた馬車工房をいきなり切る事は道義に反しますので、可能であればインビジブルウルフ卿の方から馬車工房へ技術支援を行っていただいて我が国で生産される馬車の性能、品質向上目指すべきかと思いますが」
「もうっ、いつもそんな返事ばかり。私はこの素敵な馬車であなたと外遊(旅)に行きたいだけですのに」
ここに塩は無えのか!
甘すぎて舌の根元がキュっとする、塩もってこい!
「良い事じゃないか、文句を言う前にお前も伴侶を娶れば良かろうに」
それが出来れば苦労はしないんですよ!
レイニーさんは既婚者ですから独り者の気持ちなんて忘れてしまったんですよ!
「はは、まあまあ。しかし乗ってみて良かった、早々に注文書を発行しよう。注文書の発注額欄は無記入で発行するから好きな見積額をお前が記入しろ」
えっ、宰相閣下が太っ腹、良いんですか?
「当然限度はあるがお前の事だ、性能に見合った常識的な金額になるんだろう」
そりゃあ仕事は誠実にってのがモットーですし、適正価格を提示いたします。
「チャリオットは無いのか?」
ああ、デデリさんと同じ思考ですね、将軍は。
その内オーバルコースをチャリオットで競う競技でもおっぱじめるんじゃないですかね。
「・・・良いな、訓練にもなるだろうし。宰相閣下どうでしょう?」
「今聞かれても何とも言えん、企画書と予算書を持ってこい。話はそれからだ」
「書類が必要か、こりゃまいったな」とか言ってペシペシ額を叩く将軍。
そりゃお金が掛かるんですから手続きは必要でしょうよ、常識なんじゃないですか?
「とにかく頼んだぞ、あとバニラアイスクリームは絶品だな。王家の料理人が作った物より濃厚で香りが良かったが・・・後で料理長にレシピを伝えておいてくれないか」
甘党の宰相閣下にはバニラアイスにウイスキーをかけた甘味をいたく気に入ったようでしきりにアイスのレシピについて聞いてきた。
王家のお抱え料理人に作ってもらうつもりだろう。
・・・馬車の試乗会だったよね?
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取りあえず試乗会は成功だろう、馬車も受注できたし。
そうなるといよいよコルネンへの帰還となる。
色々準備もしてたからいつでも出発できる、そうだな、明後日に出発しようか。
バニラアイスも沢山作っていこう、護衛の騎士さんの分も含め保冷庫に入れていけば問題ない。
冷たい甘味を道中で堪能できる贅沢、良いじゃないか。
心が豊かになる。
既に今回の試作で発生した経費の支払い諸々は済ませているから気楽なもんだ。
明日はソフィー様に騎乗動物繁殖事業の事務所兼厩舎の件を聞きに行こうかな。
ウリアムさんにも合金の研究は続けてもらう予定だからその辺の話もしないといけないし。
シンシアはどうしたい?
「もう一度騎士さん達に挨拶しに行こうかな・・・」
なら護衛の騎士さん達と一緒に行くと良い。俺は外で挨拶済ませてくるから。
「うん」
近衛騎士団は別格として王都の騎士団は精鋭中の精鋭。
・・・と言っても戦闘力だけであれば辺境の騎士団の方が高い場合があるそうですが、ここ王都の騎士団は守備に特化した戦術を得意としている。
真正面からであれば魔獣の突進も完全に防ぐ頑強な守りが特徴だそうな。
技能に頼らない身体能力と戦術だけでこれができるのは何気に凄い事だ。
守りを主体とする戦法故に魔獣との戦闘中に大きな怪我をすることは少ないがそれでも無い訳ではないから、治癒魔法師が常駐してくれるコルネンの騎士団を羨ましがる人が多かった。
なので必然的にシンシアにも王都の騎士団への勧誘が有ったがやんわりと断った。
シンシアが。
口調は優しいが意外とシンシアは自分の意思をはっきり言う。
今回の勧誘も自分はまだ見習いである事、コルネンの騎士団との契約途中である事、
何より自分は未成年で且つ俺からの免状を貰っていないから自分では決められない事をしっかり伝えていた。
まさに正論なので勧誘してきた騎士さんも「もっともな事だね」と納得していたが10歳のシンシアがこんなにちゃんと話せるなんてな。
ますます恐ろしい子!
と、まあ冗談はさておきもう一つ大事な事を試さないといけない。
明日の午前中は挨拶周りするにしても午後は王都外、日課にしていた朝稽古の場所でハウジングを試そうと思う。
俺が支配する箱庭の確認だ。
スキルではないがゲーム上のシステムに組み込まれているこのコンテンツが問題なく実世界で起動するかの実験を行う。
以前は俺の力が未熟で起動そのものが出来なかったが今はどんなものか、危なかったら即中止するが念のためシンシアに側に居てもらうようにお願いしている。
まだ扱えない様ならコルネンで練習を続けないとな、出来るだけ早くしないと加護持ちの人への負担が大きくなってしまうから頑張ろう。
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