第172話 予算の確保
次の日、朝の訓練を終え王城に戻ってくると腕輪の予算確保の為に見積もりの作成を行っている俺、クルトンです。
ちょっとこの規模になるとなかなか算出が難しい。
金額は別にしてここまで大勢の人に影響を与える事業の見積もりなんて作った事無いし・・・使用する材料費の見込みと工房の使用料、俺の工賃、諸々の諸経費でまず計算するか。
あれがこうで・・・ああ、管理費の項目も追加しないとな。
前世と違って電気、水道料とかは考えなくても良いし、設備もリースみたいなもんだから損料計算して償却手続きしなくても良いから楽っちゃ楽だが・・・税金差っ引かれる前提で計算しないと儲けが殆ど無くなるから注意しないといけない。
量産時のコストの都合もあるから出来るだけ希少金属は使用しない前提なので・・・
(-`ω-)ポク・
(-`ω-)ポク・・
(-`ω-)ポク・・・
(-`ω-)ポク・・・・
( ・`д・´)ティーーーン
量産開始前までの12ヶ月間で大金貨250枚(約5000万円)ってところか。
ん~事業規模からすると少なすぎる感じがするけど実務を熟すのは俺一人だしな。
専用の量産設備を製作する為の費用は別途になる旨見積もりに記載して、支払いは大金貨(現ナマ)で・・・こんなもんか。
よし、早速宰相様に持って行こう。
忙しいだろうからまず見積もりを渡してしまおう、後日宰相様の都合に合わせて打合せって感じかな。
今日の午後はシンシアの治癒魔法の練習に付き合う予定だからサクッと済ませよう。
・
・
・
はい、すぐに国王陛下の執務室に呼ばれました。
ちょっとフットワーク軽すぎやしないかね、忙しいでしょうに。
いや、俺も午後から忙しいですからね。
話しが長くなるなら明日でも良いんですよ?
「これは最優先事項だ、腕輪量産成功の暁にはこれ以上ない外交カードを手に入れる事になるのだからな」
宰相閣下の目力が凄い。
まあ、そうですよね。
政治に疎い俺でも容易に想像つきますよ。
でも見積書持ってきただけなので内容見て頂ければそれで構いませんけど。
「・・・」
宰相閣下が俺が作った見積書ガン見してる、ちょっと緊張してきた。
「設備と場所はウリアム宝飾工房に協力してもらうのか?」
はい、そうです。
「腕は確かだがあの工房長は口が軽くて正直心配だ。悪い人間ではないからなおさら始末が悪い。
彼の行動は純粋な『自分の』善意からなるものだからな」
あれ?ウリアムさんをご存じで。
「ああ、知っている、国王陛下の飲み友達だ。」
なんと!
「お主もそうじゃうが」
これは国王陛下から宰相閣下へのお言葉。
えぇ、じゃあ宰相様からも一言釘を刺しておいてくださいよぅ。
「・・・そうだな、奥方に事情を説明すれば上手くコントロールしてくれるだろう。分かった、それはこちらでやっておく」
何とも変な縁が有るものだ。
でもすんなり事が運んでいきそうな予感。
「で、この金額の件だが・・・」
きた!
早速コストカットの交渉でしょうか?結構勉強したつもりですけど。
「いや、そうではなくてな、安すぎんか?」
ん?そうですか、ちゃんと内訳にも記載しましたけど根拠となる数字に間違いはないと思いますので妥当かと。
「いや、これは国家事業の一つと言って差し支えない仕事だぞ。特性上機密も多々あるが・・・それでも人をもっと雇ってだな・・・」
ああ!市中に金をバラまけって事ですか!
「ちょっとその言い方はどうなんだ?間違いではないが」
俺だけ利益を確保するんじゃなくて、この仕事を媒体としてもっと広く金を使い、景気を回せと。
「うん、最初からそう言ってくれ」
しかし、そんな仕事のやり方経験がなくてですね、結果的にムダ金使う事になってしまって後で監査が有ったりしたらどうしようか心配になる。
「まあ、簡単な事なら昼食を飯屋で食う所を工房まで出前してもらうとかでも良いんだぞ」
この国の常識として出前はその分料金が加算されます。
出前料金の方が飯代より高い事もあるくらいですから結構なお金持ちくらいしか頼みません。
「この仕事の間だけでも丁稚を雇って身の回りの世話をしてもらっても良いだろう。けっこう面倒なものだぞ、掃除や道具の整備なんかは。
細かい煩わしさから解放されればその分腕輪の製作に集中できるだろうしな」
おお、為政者の思考はそうなんですね。
俺なんか道具の整備は自分でしないと心配になりますけどね。
「まあ、それも理解できるがな」
ちょっと考えてみますけど期待はしないでください。
逆にそっちに気を取られそうです。
「無駄遣いを助長する気はないが必要になれば予算追加の申し立てをしてくれ。この件に限って言えばこの程度の融通を利かせる事くらいは何ら問題ない」
有難う御座います。
予算の事をさほど気にせず仕事出来るのは大変ありがたいです。
早速ウリアムさんに工房借用の依頼をしてきます。
「話は変わるがクルトンは一度コルネンに戻るのか?」
ちょっとソワソワしながら陛下が俺に問いかけます。
戻りますけど第一試作を完成させた後にしようと思ってます。
箱庭の準備も目途を付けてからですけど。
「・・・王笏も頼むのぅ」
はい、承知しました。
でもデザインを決めて頂いてからですよ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます