第170話 雷狼

いや、確かに頑張って作りましたけどそんなに大した付与じゃないんですよ、当然使用者の魔力量次第なので無限に付与の効果を発揮できるものでもないですし。


少々お道化たように軽めの口調で説明をしている俺、クルトンです。


1つの武具に2個以上の付与を施すことは無いわけではない。

当然値は張るが命には代えられないと、伯爵くらいの騎士さんか使う武具なんかには2個以上の付与は割と施されている事が多い。



「しかし・・・」とラドミア姫様が口を開きます。

「そもそも鎧をも裂く事が出来る剣なのでしょう?付与もさることながら防御が意味をなさなくなるのではないのですか。

仮に防御されても圧縮に雷撃の麻痺とか・・・」


まあ、ラドミア姫様のウィークポイントをカバーできるように考えて作りはしましたけど・・・刀身でしか効果発揮できませんから懐に入られたら意味無くなりますし。


「一方的に懐に入られるなんて事は先日のインビジブルウルフ卿が初めてでしたけども」


まあ、拵えてしまいましたからまずは俺からのお祝いという事でどうぞ。

刀身の状態を確認した後に鞘に納め両手でラドミア姫様の前に掲げます。


「・・・有難う御座います。

それでこの剣に銘はございますか?」


?銘ですか、私の銘は白狼印のホログラム銘ですけど、私の名前そのままで『クルトン』になります。


一度剣を預かり柄と刀身を分解する為に目釘を抜きます。

茎に彫ってある魔法陣に光り魔法を当てるといつもの白狼が浮かび上がります。


「!・・・これが銘ですか」

ええ、私の銘です。

真贋の判別が簡単でしょ?


「ああ、そうですね・・・いや、失礼しました。私の認識違いでした。

銘は確かにそれで間違いないですね。

改めて私が聞きたかったのは『号』の方です。近年は同一視されておりましたのでうっかり・・・。

因みにインビジブルウルフ卿の鍛冶の師匠は古流を修めていらっしゃいましたか?」


いえ、師匠はおりませんで。

見様見真似と(前世の)書物の知識からでして(嘘は言っていない)・・・全く持ってお恥ずかしい。


「そう言われますと、その技量を独力で・・・」

なんか勝手に深読みしてる?勘違いされてそう。

面倒くさい事なるといけない話をぶった切ろう。


「ああ!号との事でしたね、どうしましょうか。今まで考えた事も無くて何か参考になる様なお知恵は有りませんかね?」



「・・・雷狼(ライトニングウルフ)」

え?


「雷狼(ライトニングウルフ)でどうでしょうか」

サイレン王子がドヤ顔で提案してきました。


あ、うん、良い・・・と思いますよ?ええ、そうですね(困惑)。



「でしょう、そうでしょう!」

中〇病?ってやつか・・・いや、この国も二つ名とか称号とかで呼ばれることが名誉なことだし・・・決めつけてはいけない。


ラドミア姫様が良ければそれで構わないけど、どうなんでしょうね?


あ、ニコニコですね、気に入ったようです。

ええ、じゃあ号も茎に彫っちゃいますか、すぐにできますよ。

はいはい、刻印魔法でちょいちょいです、はい、出来ました。


じゃあ組み立てますね、ええ、3人ともいい笑顔ですね。

喜んでいただけたようで私も嬉しいです、ええ、本当に。



「のう、儂にも剣を打ってくれんかの?ん、ん?」


建前上は結婚のお祝い、実際は婚約者からのクレームを避ける為の袖の下としてラドミア姫様に剣を献上したところ、翌日からフンボルト将軍が俺にウザがらみしてくる。


腕輪の件が片付いてからなら構いませんよ、あと付与や材料によって金額変わりますから打合せしてからですよ。


「それで打ち合わせはいつしようかの?」

ですから腕輪の件が片付いた後になりますってば。


「そうか・・・16ヶ月だったか・・・」

ショボーンとしてますがそんなことに構っていられません。

昨日と同じ場所で鍛錬を続けます。


今日は特使さん達3人も一緒ですが俺の周りには近づけないのでフンボルト将軍と打ち合い稽古を始めました。


一段落したら俺もそちらに合流するのでそれまで耐えてください、将軍。




俺の型稽古も一段落つき皆と合流します。


「早速で済まんが治癒魔法を頼む」

はいはい、大変ですね。

3人一ぺんに相手して「ゼーハーゼーハー」言っているフンボルト将軍の胸に手を当て魔法を行使、サクッと治しました。


「そんな一瞬で回復するのだな、我が国にはこれ程の者はおらんだろうな・・・正直羨ましいぞ」

「治癒魔法師の有用性が良く分かりますね」

「機会が有れば我が国の治癒魔法師への講義をお願いしたいところだな」

特使さん達は汚れは有るものの多少の打撲くらいで治癒するまでもないとの事。

さっきまで乱れていた呼吸も今は落ち着いています。


ええ、そうですね。

機会が有れば構いませんよ。

俺が国外に出るなんて想像もつかないですけども。


「せっかくだ、クルトンもお相手をして差し上げたらどうだ?3人の連携はそれは見事なものだぞ」


・・・構いませんけど。


「そうですね、私も『雷狼』を試してみたいですし」

そう言うとラドミア姫様が乗ってきた馬の所まで行って剣を交換してきました。

早速鞘から抜いてブンブン振ってます。

殺る気満々です。


殺す気ですか?


「「「大丈夫でしょう?」」」

なんですか、その曇りなき眼。





この後、無茶苦茶投げ飛ばした。

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