第162話 剣の技量

お相手した今回の3人はいずれも剣を使用します。

なので自然と俺の剣の技量に話が移っていきました。


そしてなぜか木剣を持たされ正体無くソワソワしている俺、クルトンです。



「インビジブルウルフ殿はどの武器がお得意か?試合では叶いませんでしたが剣の腕前はどうなのです」


サイレン王子から話を振られ、

「(前世に)竹刀で子供の頃少々嗜みましたが・・・」


「おお、ぜひその技を拝見させて頂きたい!」

そろそろ朝ご飯を取りたいのですけどそんな雰囲気ではありません。

仕方ない、付き合うか・・・。


そうして両手剣用の木剣を握り正眼に構えると「それでよろしいのですか?胴が真正面を向いておりますが、後ろ足の踵をそんなに上げては・・・」

とか色々ダメ出ししてきます。


いや、これがこの剣術の構えでして・・・あ、上段の構えとかの方が良かったですか。


すかさず構えを変えると

「それでは初太刀が見え見えではないですか?」

とか言ってくる。


どないせえっちゅうんじゃ。


「いや、攻撃特化の構えでして・・・」

俺が習ったのはスポ少の現代剣道だから、実のところ試合では正眼の構えしか使った事が無い。

小学生で上段の構えする人なんて見た事無かった、居たのかもしれないけど。


しかしそれにも意味が有る事なので、色々言われても「お前の中ではそうなんだろうな」って感想しか出てこない。


「取りあえず見てもらいましょうか」と、フルプレートメイルを装着させた案山子を準備してもらい切っ先から5m程距離を取る。


再び正眼に構え案山子に向き合うと基本通りの面打ちを行う。


今回は後ろ足を寄せずにそのまま踏み込み案山子の兜目掛け面を打つ。

大きく振りかぶりそして振り下ろす基本に忠実な面を打つと木剣の切っ先に当たった瞬間兜が爆散した。


剣術だから切断という結果でも良かったんじゃないの?って思ったがこんなところは物理に忠実で『衝撃』としての効果が発揮された様だ。

スキル使ってないから当然か。


しかし案山子の首から上だけ綺麗に無くなっている、人間相手には使えないな。

やっぱり俺武器使っちゃダメなんじゃね?


「こ、これは・・・何とも凄まじいですな、我々との試合を無手でお相手頂いた理由が良く分かります」

サイレン王子が目を丸くして二の句を告げれずにいるとハーレル王子がそう言ってきた。


「なんと、クルトンは剣も扱えるのではないか!」

フンボルト将軍が目をランランとさせて詰め寄ってきます。


いや、ホント子供の頃ちょっとだけしかやった事ないですから。

期間にして3年くらいですよ。


「3年でそれか!素晴らしいではないか。どうだ、今度儂が剣を教えてやろうか、ん、ん?」

なんかウザい。


色々言いたいことはあるが今の俺には剣術よりも剣を打っていた方が建設的なような気がする。



「「「インビジブルウルフ卿は剣が打てるのか!」」」

おう、今度は特使さん3人が絡んできた。


「ええ、多分?ナイフは何回か打った事が有るので」

刃の付いた武器はナイフ以外打った事無いが・・・いや、鉈は打ったことあるな・・・剣と言わず斧、棍棒等しっかり鍛冶のクラフトスキルに内包されている。

自重しなければならない位の品質のものは間違いなく作れる。


「ナイフと剣は違いますよ」

あからさまにがっかりするラドミア姫様。


おや?俺を挑発する気ですか、けどそんな安い挑発には乗りませんよ。


ちょっと待っていてください。

修練場の壁際に置いてある俺のバッグをゴソゴソ漁る。

あった、あった。



革の鞘に納まった愛用のハンティングナイフ、俺の体格に合わせて設えた物なので刃渡り20cm程度と少々長いが自信作。

獲物の皮剥ぎに藪の切払い等々、色々使っているが切れ味と耐久性は折り紙付きだ。

握りは適当な木材を圧縮した物を削り出して使用していたが、ブラックダイヤを作れるようになってからそれに取り換え設えている。

いつ見ても美しい・・・。


「そのナイフがどうかしたのですか?」

いけない、いけない。見とれていた。


ラドミア姫様に向かい「あの案山子に試してみますので見ていてください」と伝えて案山子に近づき横なぎにひと振りする。


「「「「 ! 」」」」


刃渡りの都合で真っ二つとはいかないが刃が通った跡は切断面にささくれが無い状態で綺麗に切断されている。


どうです?

鼻の穴を膨らませドヤ顔する俺。


「「「「おお!」」」」


「鉄をこうも易々と」

「しかし、しかしインビジブルウルフ卿の技と膂力が有ってこそではないでしょうか?」

「だとしてもそれに耐えうるという事はこのナイフもかなりの業物だろう」

「・・・試しに儂にひと振り打ってもらおうか」


何サラッと注文振って来てるんですか将軍。

何気に忙しいんですよ俺、腕輪とか王笏とか騎乗動物とか。


「しかしお前ならサクッと拵えるんじゃないか?そんな気がするが」

こんな時は本当に勘が良いですね。



「クルトンさん、クルトンさん」

話しを断っていると騎士さんが俺に話しかけてきました。

はい、なんでしょう?


「この案山子ですが一応備品扱いなので破損した場合始末書の届け出が必要です。この用紙に必要事項を記載してサインお願いします。

大丈夫、そんなに深刻にならなくて良いですよフンボルト将軍は毎月書いてますから(笑)」


いや・・・ホントすみません、ご迷惑おかけして。

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