第145話 続く打ち合わせ
食い入る様に鏡を見ているソフィー様を見てビックマネーの香りを感じている俺、クルトンです。
売れます「売れるでしょうね」かね?
話しかぶせてきます。
・・・自分木工の技能もあるので鏡台なんか売り出したら売れますかね?
「間違いなく売れるでしょうね、でも大っぴらにはやめておいた方がいいわ」
・・・市場を荒らしちゃいますか?
「作れる量次第だけど、因みにこの鏡は貴方以外作れそう?」
無理でしょうね。
本来なら工業製品として大掛かりな設備が必要になると思う。
まず今、この世界では平らで歪みの少ない大きなガラスを作れない。
光沢の出る金属の板をひたすら研磨すれば同等品は作れるだろうが現実的でない。
「単純に面倒ごとが増えると思うのよ。貴方なら蹴散らせるだろうけどそんなやり方は嫌なのでしょう?」
おっしゃる通りで御座います。
「カサンドラのシャーレにでも相談なさい。あと私から直接鏡台を注文しましょう。内謁が終わったら再度打ち合わせね」
承知仕りました。
「こちらからも宜しいでしょうか?」と俺。
「どうぞ」
頷くソフィー様。
デデリさんからの上申書の件なのですけど内容は把握されていますか?
「大まかにはね、同じ内容の物は特急便で一昨日着いたわ。早速陛下達が協議しているから内謁時に結果だけ聞かされるでしょうね」
結果だけ?
俺への聞き取りとか無いんですか?
「あるかも知れないけど・・・その件は無駄になるだろうって言うのが陛下の見解らしいわ」
無駄とは?
「事前に先手を打って対処したつもりでも、いつの間にか場当たり的な対応に終始する事になるだろう、なら抜本的な対応をするが必要ある。
そう言ってたわ」
へー、偉い人の考える事は違うわー。
「まあ、どうするかは大体予想がつくのだけど」
お聞かせいただいても?
「ダメね、陛下から直接お話があるでしょう。
その時まで楽しみにしていなさい」
うん、悪い予感がする。
「そう警戒しないで、最初に言ったでしょ?悪い話しじゃ無いって」
「あとシンシアさんの件だけど治癒魔法を貴方が直接教えてるそうじゃない」
ええ、優秀なのであんまり教える事もないんですけどね。
「陛下がかなり期待していましたよ、家族以外に貴方の技を伝えるのは初めてと言うではないですか。
本当に楽しみだわ」
ますますシンシアの狸を撫でる手の速度が上がっていく、
マズい、狸が。
そうだ話を戻そう。
「話が飛んで申し訳ないのですが騎乗動物の件、生息地の情報持ってる人を紹介してもらえないでしょうか。当たりを付けてからの方が効率いいと思うんです」
「もっともな意見ね。分かりました、適任者に話をつけましょう。王都滞在中にクルトン卿に連絡を入れさせます」
因みにどんな騎乗動物を求められているかご存知ですか?
「捕獲が難しいものね。スレイプニル、グリフォン、ベヒモス、ブラックドッグ、麒麟に一角獣、翼竜、飛竜に古龍、海竜・・・」
無茶言わんでください!
そもそも、ベヒモスとかブラックドッグ、麒麟とか実在するんですか?
麒麟なんて神獣じゃなかったでしたっけ?
「ʅ(´◡`)ʃさあ?」
いたとしても古龍とかは無理でしょうよ。
言うだけはタダとかそんな感覚なんじゃないですか、それ。
「そんな感じかしら。でも陛下の考えなしの発言は最良の結果をもたらす事が多々あるから軽視もできないのよ」
何なんですか、そのご都合主義。
「宿命という事ね、あんな陛下でも若い頃は自分の力にだいぶ悩んだみたいだから大目に見てあげて」
力?
「まあそれはいいでしょう。後はそうね・・・」
話の途中すみません、俺の資産の登録の件も相談したいんですけど。
「資産?悪い予感しかしないわね」
そうでもないでしょう?『俺の』資産なんですから。
ゴソゴソとまたバッグを漁り腕時計と狼の置物、以前作って死蔵していたブラックとグリーンダイヤを取り出す。
「・・・!、ちょっと!なんでこんなところに出すの?
マットを敷いて、素手で触れないで!」
いや、本当そんなリアクションはいいですから。
この4点と厩舎に置いてある馬車を登録したいんです。
あ、あとこのオリハルコンの箱、返却するの忘れてたんですよね。
今更で申し訳ないんですけど持ってきました。
「いや、ええ、私も綺麗なもの・・・宝石なんかは大好きよ。趣味で鑑定士の資格取ったくらいだから。
私は鑑定の技能持っていないからそれは大変だったわ・・・違う、そうじゃないわ。
後出しとは言えオリハルコンに驚かなくなるってくらいのって・・・、ねえ?」
小首をかしげる俺。
「ねえ?」とは。
「どうしましょうか、登録は問題ないけど目録に載るのよ。」
問題ないけど問題とでも?
「登録した物だけではあるけど『インビジブルウルフの資産』が貴族連中に公開されるって事なのよ、分かっているのですか?」
・・・なるほど。
毎回聞きますけど面倒ごとが増えますかね?
「無神経な奴らや権力の使い方を心得ている者なら問題ないでしょうね。でも貴方ならどうかしら」
具体的な影響と対策をばご教授願えませんでしょうか。
テーブルに額を付けて教えを請う俺の図が完成。
シンシアの前でも関係ない。
「はー、聡明なのに特定の事に対しては思考の死角を埋められないのですね」
?
「困ったものね・・・」とソフィー様がため息混じりにそう呟いた。
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