第144話 王都での顔合わせ準備
ピッグテイルに宿を取ろうとしたら騎士団さん達から「王城に用意してあると副隊長から聞いています」と言われ早速向かっています。
王城と聞いて途端に緊張しだしたシンシアに気を使いながら馬車を走らせている俺、クルトンです。
手紙で知らせてるとはいえ先ぶれの騎士さんと一緒の登城。
俺が勝手に思っていただけだが明日アスキアさんに伺おうとしていたところにいきなり本陣への突撃の様な感じで向かっている。
俺の事はどうにでもするがいきなりシンシアを王族に合わせる事になるんじゃないかとヒヤヒヤしています。
顔合わせの予定では有りますが向こうのペースでやられると平民は普通にテンパる。
まあ、あっちが上位ではあるから仕方ないところはあるんだけども。
治癒魔法師としての才能はともかくまだ10歳の子供だからね。
平民で子供、王都到着早々に王族への内謁となると・・・うん俺ならお腹痛くなる。
仕方ない、即内謁って訳じゃないだろうがまずは行ってみないとどうなるかは分からんな。
大きな馬車で騎士の護衛も付いているものだから王都内を走っているとそれなりに目立つ。
御者席にいる俺が認識阻害を掛けてなければ記憶に残る位には注目されていただろう。
客室内に居るシンシアは窓から顔を出す事も無く座席に座り、膝に乗せた狸を撫でている様だ。
さっき覗いたらぺスもシンシアにすりすりしている。
心を落ち着かせるのに役に立っている様で何より。
そんな感じで進んでいくととうとう城門に到着、認識阻害を解き門兵さんに挨拶する。
敬礼されて無条件入場の許可証である割符を提示、護衛の騎士さんが事情を説明すると「お話は伺っております」と通してくれた。
城内を進むと直ぐに衛兵がやってくる。
馬車を誘導してくれるらしい。
ここで先ぶれの騎士さんが離れていき、俺たちは誘導に従って厩舎の方へ進んでいく。
厩舎に到着しムーシカ達と馬車を預ける。
騎士さん達も馬を預けてここからは別で用意されている馬車へ乗り換え。
護衛の騎士さん達は後続の2台目に乗り込み馬車が出発する。
・・・何処に連れてかれるんだろう?時間的にもう内謁は無理そうなんだが。
馬車内にいるポム達や狸とじゃれあっている事もあってかシンシアはそこまで考えが及ばないみたいだがなんか有りそうな予感がする。
・
・
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「よく来たわね、まずは座って頂戴」
ハイ・・・。
ソフィー様が待ち構えておった。
何このラスボス感。
部屋に入って途端に緊張し出したシンシアが痛々しい。
コルネンで治癒魔法師の修行として騎士、そこそこ上位の貴族と交流はあるものの、この国の公爵となれば王族の血縁が殆どだからオーラがハンパない。
まだソフィー様から自己紹介受けてはないのにシンシアはその雰囲気である程度察したみたいだ。
その証拠に忙しなく狸をワシャワシャしている。
「あら、狸なんて珍しいわね。私が子供の頃はそこら中に居たのだけれどめっきり見なくなって久しいわ」
「ちょっと私にも抱かせて」とシンシアに断りを入れて狸を抱き上げるソフィー様。
図太いのか鈍感なのか狸は
「良きにはからえ」
みたいな感じでかなりリラックスしてる。
本当によく今まで捕食されなかったな、コイツ。
「やけに大人しいし毛並みが凄くいいわね、以前から世話をしていたの?」
今回の道中で捕獲しました。
毛並みは俺が念入りにブラッシングしたからでしょうね。
「今後の事業の参考にあとで教えて頂戴。
それでここに来て貰った理由だけど・・・」
ようやくここに通した理由について話し出す。
「いろいろあってねぇ、何から話そうかしら。
ああ、悪い話しじゃないのよ」
途端に警戒し出した俺を察してかすかさずフォローが入る。
「じゃあ、まずは連絡事項から。陛下への内謁は3日後です、当日11時頃から会食を挟んで大体14時までを見込んでいます。勿論シンシアさんもよ(ニッコリ)」
「ヒッ!」
これはシンシアだ。
返して貰った狸を高速で撫でている様子から動揺具合が良くわかる。
狸、ハゲないよな。
「騎乗動物の繁殖事業の件、土地の測量が終わり厩舎を含む事務所建屋の設計も来月迄には完了します。それから物資の調達先と建築業社決定の為入札を告示、なお並行して従業員の募集を行っていて一次選考の書類審査が終わったところです」
よかった・・・一時はどうなるかと思ったけどこんなに面倒な手続きがあるならソフィー様に任せてよかった。
書類の事務手続き含めれば俺だけじゃ事業立ち上げるまでに年単位で時間が掛かっただろう。
「王笏の件は聞いたところによると陛下がデザインを決定すれば粗方目処が着くのでしょう?こちらは何ら問題ないでしょうから会食時に話題に上がった際に陛下のお喋りに付き合って貰えば構わないでしょうね」
そーですねー(棒)
「陛下の他に宰相閣下、将軍とシンシアさんとの顔合わせもします」
「ヒッ!」
これもシンシアだ。
ちょっと急すぎる様な気もするのですが。
「宰相閣下はともかくフンボルトが聞かないのですよ、全くあの子は昔から・・・」
困った様に、しかし「しょうがないわね」といった感じで呟く。
しかしまたアイツか!
「あとこれは全くの私事なのだけれど貴方、鏡が作れると聞いたのだけど」
ええ、全く問題なく作れます。
この前家族に姿見をプレゼントしましたし。
「!姿見・・・因みに鏡の見本なんかは?」
小さいのでよければ。
オルゴールのサンプルがバッグに有りますからその蓋の内側に設えてあります。
見ます?
「ええ!」
バッグをゴソゴソして、有った。
これです。
俺の手のひらサイズのオルゴールを取り出して蓋を開けてソフィー様に渡す。
ゼンマイ巻いてないので音は出ないが、まあ鏡見るだけだし。
「・・・良いわね、全然歪みがない。明るさも今までのと段違い」
お褒めに預かり光栄です。
「これを姿見で・・・」
なんか黙り込んでしまった。
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