第143話 よく通る道
無事コルネンを出発、天気も良く今からお昼が待ち遠しい俺、クルトンです。
早朝に厩舎へムーシカ達と馬車を引き取りパン工房で食材、手荷物を馬車に積み込んでシンシアを乗せる。
護衛の騎士団員さんと合流する為に再度コロッセオに戻ってから出発した。
無論ポムたちも一緒である。
デデリさん含めフォネルさん。セリシャールさん、パメラ嬢等々、騎士団員さん達総出で見送りしてくれて人通りの少ない早朝でも結構恥ずかしかった。
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馬車は順調に王都に向かっている。
ムーシカ達も何度か通った街道なので、御者の俺が特別指示しなくても躊躇う素振りも見せず走っている。
俺がしたのはペースが速すぎて騎士さん達の馬が付いてこれず、その為スピードを落とす様に操作しただけ。
そんなもんだから狼達も余裕で馬車と併走している。
昼になり昼食をとる。
簡単でも暖かい物を食べたいので鍋にコンソメの素を入れ水で希釈、炎の魔法で温める。
コンソメは顆粒はまだ作れてないので濃度マシマシの原液を作って瓶詰、箱で馬車に積んでいる。
このように希釈して温めればそれだけで十分美味しいスープの出来上がり。
ちょっとハムを刻んで入れたりするとよりおいしい。
ハム、チーズもフライパンで焼いてパンで挟みスープと一緒に食べる。
勿論騎士団員さんの分も一緒に準備。
皆で食べた方が美味しいしね。
「ほう、準備は簡単そうに見えましたがこの旨さは何なんでしょうな」
「下拵えから違うんだろう、温めるだけでも美味い様に予め作っている」
「こんないい天気のもとでの美味い飯、最高ですね」
なかなかの高評価、調理スキルマジ有能。
俺は調理しながら食べたので一足先に食事を終えて別の準備を進める。
荷物から革を取り出して細く裁断、三つ編みに編んで帯状にする。
30cm程の長さにして疲労軽減と身体強化の付与を施し5頭いる騎士団員さんの馬、馬具で言う腹帯の所へ縫い付けた。
休憩中の馬のストレスにならない様に認識阻害を活用して手早く済ませ皆のもとへ戻る。
騎士団員さん達へその旨伝えると馬の負担が軽くなると喜んでいた。
宿場町の様な宿泊できる村、街は通常の馬車の速度で凡そ1日毎に有る。
つまり通常の馬車より明らかに早い速度で進む俺の馬車のペースだとその日の夕方には村、街をかなり通り過ぎてしまい結果野営となってしまう。
実際は宿場町でも『商隊』クラスの人数になれば宿泊施設が足りずに結局野営になるんだが。
狩りで時間を調整する事もあり得たのだが、俺の索敵魔法で獲物を見つけポム達が追い立て、(今回は)シンシアが弓で仕留める・・・と言う接待ハンティングをしていると進行速度がさほど落ちない。
血抜きなどの処理で少々止まる位だ。
予測はしていたし、そもそもシンシアの野営の訓練も兼ねての移動だから問題視はしていないからそのまま進んだ。
こうして晩になり、騎士団員さん達はテントを設営、俺達は晩御飯の準備をする。
今日はシチューを作り皆へ振舞った。
塩味の汁ダク肉じゃがみたいなものだったが大変好評でした。
明日の朝の分もと思って多めに作ったのだけど全部なくなってしまったからその時は今日仕留めた兎を焼こう、今のうちに下拵えとしてハーブと塩を擦り込んでおこう。
夜は騎士団員さんが交代で夜番をしてくれるので俺達はぐっすり寝る事とした。
布団あったけえ。
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順調な事に4日で王都に到着した。
護衛の騎士団員さんもその馬も疲れを見せることなく元気なもの。
「いやークルトン殿の食事は力がみなぎりますなあ」
「寝起きもスッキリするんだよね」
「本当に、食事が温かいだけでも疲れが吹き飛びます」
ですよね、食事は高い士気の源ですから。
だからもっと兵站の充実を図った方がいいと思うんですよね。
騎士は難しくても衛兵志望の若者が増えますよ、きっと
何なら野外炊具馬車作りますよ。
「そうだね、フォネル副隊長に進言してみよう」
ぜひお願いします。(もみ手)
順調すぎる程順調に往路を終えたが何もなかったわけでもない。
実はこの道中で仲間が1匹増えた。
2日目の事だ、俺の索敵に獲物が引っかかりポム達を放つ。
さほど時間をかけることなく獲物が追い立てられてくるが移動速度がかなり遅い。
ポム達も俺の馬車に獲物を誘導してくるが、逃げる進路を塞ぐようなそぶりも見せず団子状態で追い立てている様だった。
えらく鈍くさい獲物だな?
ようやく馬車10m位までポム達が近づいたところで膝丈程まである草の中から獲物がひょっこり顔を出す。
「ちょっとストップ!シンシア、ストップ!!」
もう弓を引き絞り準備万端だったシンシアを慌てて止め、俺はダッシュで獲物へ近づき抱き上げる。
「狸だ!!」
この世界で初めて見た!
狐がいるから狸もいるだろうとずっと気になっていたが全然見つけられず諦めていた・・・って言うか忘れてた。
アナグマはよく狩っていたのに。
こんなところで出会うとは、やっぱりいたんだ狸。
モコモコで可愛い。
しかも抱き上げているのに全然暴れもせず小首なんか傾げてのんきなもんだ。
野生動物をどうこうするのに抵抗ないわけではないが抗えない、捕獲。
前世の知識だと食っても旨くないらしいし。
早速ポムのブラッシング用のピンブラシを拝借し毛並みを整える。
野生動物なのでダニやノミなんかもいるだろう、それを撃退するように付与してある俺謹製特別ブラシでだ。
暫くブラッシングするとモコモコの毛並みに艶が出てきてますますラブリー。
そのまま御者席、俺の隣に座らせ馬車を出発するといきなり眠りだした。
まったく警戒心が無い、野生でよく生き延びられたなコイツ。
実は次の獲物には新しい魔法を試してみようと思っていたんだが・・・ちょっとこれは無しだな、また次の獲物にしよう。
そんな事が有り今は馬車客室でシンシア、ぺス、狸で遊んでいる。
なかなかに騒がしい。
コルネンに来てから大人に囲まれて緊張しっぱなしだったんだろうな。
とても楽しそうなシンシアの笑い声を聞いていると定期的に大麦村へ帰省させた方が良いだろう。
手綱を握りながら俺はどのタイミングで帰省の為の休みを入れようか思案し始めた。
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