第142話 「ふかふかの布団、毛布で寝るんだ」

ようやく金庫も作成、デデリさんへの自慢も出来たので後はこまごました準備をするだけ。

久々の狩りをしながらの野営が楽しみな俺、クルトンです。




キャンプ感覚に近い、ワクワクするよね!

しかも今回は専用馬車で行くからテントの設営とかちょっとした面倒事をしなくても良いからそれだけでラクチン。


俺、野営でふかふかの布団、毛布で寝るんだ。




騎士団の選抜者と一緒に行くので食料、肉なんか持ってはいくが出来るだけ現地調達するとも話している。


その為にシンシア用に弓も拵えた。

竹とカーボンファイバーを使用した複合素材弓で初心者、女性用に扱いやすさを優先して作ってある。

今回の旅から矢もカーボンファイバー製にしている、理由は俺が作ればほゞ材料費が掛からない事と品質がより安定するから。


他にボーガンも考えたが弦を引く動作が女性にはきついのと、故障した場合修理できる人がかなり限られるからちょっと難しいかなと。



シンシアが弓を扱えるようになればもし騎士団から離脱、逃走するような事態になってしまっても生存率を上げれるだろう。

治癒魔法師を孤立させるなんて事は許されないが、そうならないとも限らないから少なくとも森の表層で狩りをしながら生き永らえる事が出来るくらいまでには鍛えておきたい。




取りあえずは治癒魔法の訓練の合間に弓の練習も加えると俺から騎士団の方々に宣言した。

まだ12歳になっていないから理由も含めてちゃんと説明、弓を扱うときは必ず俺が立ち合い責任を持つという事で押し通した。

慣例に則ればアウトだが法律で決まっている訳ではないのでね。

ずるい話だがシンシアの命の為に俺が責任を持つ。



そうすると、今度はシンシアに世話を焼きだす騎士団の面々が多数現れた。

弓兵の様な専門職程ではないにせよ貴族出身の騎士団員は皆弓が扱える。

貴族男子の嗜みの一つらしい。

いつも長剣やメイスを振るっている彼らからはあまり想像できないが、俺ほどではないにしても彼らの弓の腕前は十分に一人前だ。


遠巻きに弓兵の皆様も「弓なら俺達だろう」とか独り言を言ってソワソワしている。

あからさまに騎士へ物申す事はしないが其処はプライドが有るのだろう。


ハイ、皆に指導をお願い致しますので、ええ順番です。



自分の子供と変わらない位の歳の少女への庇護欲と、日頃治癒魔法で世話になっている事もあり皆が皆とても丁寧に優しく指導している。


弟のクレスと比べると上達は遅く感じるがそれはクレスが凄かったから、多分シンシアの上達具合は普通に早いと思う。

足の治療終わってから軸もぶれずに体感も大分良くなって来たし、弓兵の皆さんだけじゃなく騎士団員さんの指導も的確。


ほら、もう矢がちゃんと的に当たりだした。

・・・もう当たりだした?


なんか俺の周りの子供たちの能力高すぎないかね?



王都への出発前日、実際の狩りにはまだ不十分に感じるがシンシアの弓の腕前はかなりの速度で上達している。

特に急がなくても練習を続けていればこのまま上達していく事だろう。


護衛の為に同行する騎士団員の訓練も総仕上げを終え、準備は万端だ。


今日、明日の朝で俺達用に保存のきく固めのパンを焼き、貯蔵庫からハムを取り出せるようにこちらも準備を進める。

今回は鹿の腿のハムも作ったからそれも持って行く。

ちょっと大きめのチーズも購入して胡椒や塩の他にハーブ類、ジャガイモや根菜、ピクルスも収納箱に詰めた。

なんだか今から食事が楽しみ。


騎士団員たちは自前で食料準備してくるが同じ仲間だ、彼らの為にも多めに食料は用意している。


水は俺が魔法で出せるので水瓶と木桶を積む。


天気がいい事が条件だけど外で食べる食事はそれだけでおいしい、皆と一緒ならなおさら。




仕事の道具、案件の資料、毎回突然必要になる鉄とステンレス鋼は予め持って行く。

財布の中にも銀貨、銅貨を多めに準備。

革に裁縫道具、ちょっとした生地も持って行こう。

使わないかもしれないが転ばぬ先の杖。


その他にもシンシアと合わせて二人分のふかふかの寝具とポム達お気に入りのクッション、食器に料理道具、馬車の屋根には念のためのムーシカ達の飼い葉を乗せて括り付け、雨対策で防水処理を施した帆布をかぶせる。


資産登録の為に俺のバッグに死蔵している例の腕時計と宝飾工房に飾っていたあれで設えた狼の置物、以前王都で作ってそのままバッグに死蔵している例の宝石2点を確認、忘れない様にして。



手持ちのバッグ、食材以外の荷物を馬車に積み込み準備完了、後は当日下宿先に寄って食材積み込み出発だ。


デデリさんから預かった陛下への上申書もちゃんとバッグに入れてある、よし。


今までにない完璧な事前準備、素晴らしい。

でも愛用の背負子も積んでいこう。


「クルトンさん、コレ・・・」

おう・・・ドレスを忘れてた。正装用の靴にシンシア用の宝飾品も。

危ない、危ない。



しかし馬車が有ると積載量が段違い、今までにない快適な旅が出来そうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る