第141話 金庫を作る
まったくもって失念していたことを恥じ入るばかり。
少々反省している俺、クルトンです。
忘れていた、マジすっかり忘れていた。
アスキアさんから依頼受けた金庫の製作。
ニココラさんから情報聞いた今となってはレイニーさんの分も作らないといけないだろう。
俺が譲渡した宝石の保管用の金庫。
頑丈に作っても金庫ごと盗まれるなんて間抜けな事が無いようにしないといけない、どうしよう・・・。
希少金属は今回使用できない、確保できないから。
いや、青銀は使える、今俺の手持ちに有る。
開錠の魔法が有るらしいから魔法その物を無効化させる為の対策として使用決定。
べらぼうに重くしたり、又は家屋に直接備え付けて移動できないようにする・・・どうだ?現実的か?
重くしすぎると俺がここから持って行けない、却下。
備え付けた部屋の床が抜けるかもしれないし。
アスキアさん、レイニーさんの屋敷そのものに直接備え付ける・・・ありっちゃありだが下手すりゃ改築を伴う大事になりかねない。
『ここに保管してますよ』ってな情報も盗賊連中にいずれ広まってしまうかもしれない。
・・・どうしようか。
特定の人しか開けられない様にすることは出来る、何とでもなる。
でも盗賊団の様な数で押してくる悪党に狙われて人質でも取られたらどうしようも無くなるんじゃないか?
結構な価値らしいからどこぞの国が盗賊を利用して盗りに来てもおかしくないんじゃないか?
考えが纏まらない、条件を決めないとキリがなくなってくる。
いっそ王城に保管して貰う様に進言するか?
いや、資産登録しているとはいえ個人の資産を王城保管庫へ・・・税金で管理警備してもらうのは問題ありそうだ。
金払えばいいってもんでもないだろう、前例なさそうだし。
うーんどうしたらいい?頑丈な金庫作れば万事オッケーってはなりそうにない、困った。
親方に相談するのはなしだ、この世界、国の個人情報のコンプライアンスに関わる認識の緩さから想像するに情報が漏れてもおかしくない。
本人にそんな気が無くてもだ。
うーん、困った。
・
・
・
図面を引く期間も含め7日ほどで金庫は完成した。
結果から言うと金庫を開けること自体すこぶる面倒で、尚且つ『金庫の位置、および開けた情報』を見える化、撃退機能を追加する事にした。
まずはダミーの金庫を作成。
これは『いかにも』ってところに置いてもらう。
これに盗賊が食いつき持ち去ったり開けようとすれば警報が鳴る仕組み。
金庫と対で強化ガラス製ボードを製作し、それに同縮尺の地図を当てれば金庫の位置も表示、確認、追跡できるようにしている。
当然なかなか開けられない様に金庫その物のカギへの細工も忘れない。
それでも開けたら麻痺の付与が発現し盗賊を無力化する。
重ねて言うがこれはダミー。
本命の金庫は超頑丈に作ってはいるが見た目は普通の衣装箱の様な感じにしている。
『木を隠すには森に』をコンセプトに製作。
機能はダミーとほぼ同じだがさらに1点機能を追加している。
それは『自爆機能』。
衣装箱に擬態させた金庫ごと盗まれ屋敷の外に持ち出された場合、別で用意しているボタンを『ポチッとな』とすると対人地雷程度の爆発が起こる仕組み。
これは持ち出している盗賊本人以外に仲間も巻き込んで足止めする為。
中の宝石に影響が無いように頑丈な内箱を別に準備してそこに入れているし自爆時の爆発には外向きに指向性を持たせているので現物がどうなるという事は無い。
この爆裂の付与、威力調整だけで4日間を要した。
足止めが目的だから殺す訳にもいかないから。
あくまでも盗賊の足止め用だ。
地球人より遥かに頑強な人類で尚且つ貴族の屋敷の警備を突破できる盗賊ならここまでなら耐えられるだろう威力まで調整。
その実証実験で犠牲になった野生動物、主に大型の鹿は実験後我々が美味しくいただいた、有難う。
こんなものだろうか・・・。
俺に対盗賊のノウハウが有る訳ではないので盗まれ難くする事と盗まれたときに後追い出来る事、足止め出来る様に付与を施した。
これ以上の事は思いつかない。
こじ開けた瞬間に即死魔法(に相当するような強力な攻撃魔法)を展開すれば抑止にも繋がるかもしれないが間違いが有った時に取り返しがつかなくなる。
それはマズイ、非常に。
この辺の倫理観やら安全基準に対する考え方が未だに前世の思考に引っ張られこの世界の常識に馴染めていない様にも感じるが仕方ない、これが今の俺なのだから。
せっかく製作しては見たものの防犯上の理由もありこの情報は引き渡す両貴族様にしか知らせる事は出来そうにない。
なので親方のいつもの反応を見れないのでなんか物足りない。
もっと自慢したい、誉めそやしてもらいたい。
・
・
・
「で、俺に自慢しに来たと」
ええ、デデリさんなら情報漏らしてしまって何か有っても自分で責任取って盗賊どもを殲滅してくれそうだったので。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます