第140話 まだある準備

王都で色々な手続きもいっぺんに済ませてしまおうと横着こいている俺、クルトンです。


再確認だが王都の道中は通常の馬車で1週間程、俺の馬車ならその半分くらいで到着する。

何事も無ければね。


以前ニココラさんの話に出ていた資産の登録の話。

そんな事も知らなかったものだからダイヤモンド製の腕時計を拵えてしまった。

教えてもらった後もすっかり忘れてしまってて手のひらサイズではあるが同じ材質で狼の置物も作った。

母さんのゴージャスネックレスも。

馬車も資産登録しないと面倒くさい事になるのか不安、アスキアさんに聞いてみよう。


なのでとりあえず現物を持って行く。

母さんのゴージャスネックレス以外。



その辺も踏まえて王都の事業所では管理できる人を雇った方がいいな。

ニココラさんかソフィー様あたりから紹介してもらえんだろうか。




今回王都に行くにあたりデデリさんから国王陛下、宰相閣下宛の上申書を預かる予定だ。

俺が作る馬車や馬具、宝飾品、衣類等の付与を施した製品、宝石なんかの希少価値の高い物の今後の取り扱いについても協議する様記載してあるらしい。

前例ないだけで絶対戦略物資に引っかかるだろうってのもある様で、取り合えず俺が出来る事を王都の法律の専門家立会いのもと洗い出してリスト化、重要度に応じて法整備しろってところまで踏み込んだ内容だそうな。


でも規制で自由が利かなくなるとデメリットも当然あるだろうからその辺の落としどころを探る為ってのもある。

政治的判断が必要になるだろうから最低でも宰相閣下の立ち合いは必要だろうとの事。


ちょっと直ぐに帰ってこれないかもしれない。

王笏のデザインの提案含めた打ち合わせもあるし。


国王陛下との打ち合わせが多岐にわたりそうだったので先にアスキアさんへ内謁の申請をお願いの為手紙を送っている。

王笏の件などは材料の申請も必要だから王城内の話題としてはオープンな状態みたい。

あんまり面倒な事になりませんように。




さて、王都では白狼印の宝飾品は順調に知名度を得て、ちょくちょくカサンドラ宝飾工房経由で俺に宝飾ギルド本部長のシズネルさんから宝飾品の仕事の依頼がある。

だが内容がちょっと変わっていて宝飾品の製作ではなく魔法付与の修理、復元作業の依頼が殆どを占める。


この国の歴史は長く凡そ1万年、特権階級の貴族様が選出されたのも建国当初らしいから王家と同じ位長い歴史を持つ貴族も結構ある。


実はそう言った太古から続く家柄には『来訪者からの贈り物』と言われるアーティファクトの様なアイテムが家宝としていくつか資産登録されているそうだ。


殆どが指輪やネックレスの宝飾品で、その中で付与効果が弱くなったり発揮しなくなった物の修復を俺に依頼してくる。


この修復作業を行える職人はそれなりに居るのだが、かなり高齢の人が殆どで尚且つ完全に修復するのがそもそも難しいらしい。

そのせいもあり仕事がすこぶる遅いとの事。

今のところ『来訪者からの贈り物』の現存数自体少ないから何とかなっているが暫定的な処置しかできない事もあって各々1年~10年間隔で修復を繰り返しているんだそうな。


そんな事だったのでダメもとだったのだろうがシズネルさんから「これ修理できる?」って手紙と一緒に物が送られてきたのが最初だ。

物が物だけに王都の騎士団直々に輸送を担当して結構物々しい感じで来たからなんかやらかしたかと思って冷や汗をかいたのは内緒。


ホイホイ行けないけどなんかのタイミングで俺が王都に行った時で良いのにって思ったりもしたが、来てしまったものは仕方ないと実物を確認。


指輪状の魔道具?でいいのかな、正直良く分からなかったので手紙に書いてあるシズネルさんからの現物の説明を読んでいくと、何でも人の感情が色によって凡そ判別できる指輪らしい。


怒っていれば赤、喜んでいれば黄色、嘘をついていれば黒・・・ってな具合で程度によって色の濃さも変わるみたい。


スキルを使って観察すると指輪をした人の目を通じて脳波を観測、感情を判別しているみたい。

『目』の網膜に映る光の情報をもとにしている訳ではなくて、あくまでも指輪が必要とする情報を受け取る為のアンテナ代わりの様だ。

だから直接対象に触れた方が精度が増す仕様。


なるほど、良く分かりませんな。

でもクラフトスキルに内包する付与スキルは「大丈夫、問題ない」と答えてくれているので身を任せレーザー刻印機の魔法で修復の為付与を彫り込んでいった。


結果、機能は復旧したが同じ効果を発揮してはいても従来の付与を俺が施した付与で上書きしてしまったので少々焦った。


厳密に言えば同じものではなくなったのだから。

クラシックカーの故障したエンジンを現在の技術でレストアした様な物。

同じ仕様、性能、機能であっても交換した部品は現在の材料や加工技術を駆使して別メーカーが再製作した様な状態なのでオリジナルではなくなってしまう・・・ってな感じ。


希少価値が下がるんじゃないかと焦って状況(言い訳)を出来るだけ詳細にまとめ、品物の返却と一緒に報告書を提出したところ「直っているから全く問題ない、むしろ新品再生したんじゃない?これ」とのシズネル本部長から返事が来てホッとした。


報酬も結構な額頂いたので結果オーライだ。



こんな事があったもんだから俺が王都に行く期間すれ違いになるといけないので「こういった理由で近々王都に伺いますよ」

と、シズネル本部長へ事前に手紙を出したら「なら会わせたい人が居るので必ず本部へ寄ってね」って返事が来た。


改めて面倒な事になりませんように。

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