第138話 馬車談義
訓練施設内にある奥の部屋でデデリさんと馬車の打ち合わせをしています。
無理難題が飛び出してこないか警戒している俺、クルトンです。
「大きさはお前のより二回り小さくていい、色は黒で統一してもらおう」
はいはい。
「矢避けの付与だったか、あれは是非とも欲しい」
はいはい。
「ワインセラーも付けて、そうだな御者とを繋ぐ伝声管あれも付けてくれ」
はいはい。
「頑丈さはお前の馬車レベルの物を頼む」
はいはい。
「ベアリングだったか?あれは素晴らしかった、乗り心地にもかなり影響するんだろう、必ず付けてくれ」
あ、それは標準装備ですから心配しないでください。
走る、曲がる、止まるの基本性能と安全装備は込み込みですから。
「ほう、それは期待してしまうな。何気に椅子も上質な座り心地で素晴らしかったあれも標準装備とかいうやつか?」
あれは標準ですね、希望有ればそれ以上の物も出来ますよ、長時間乗っても腰が痛むことは無くなるシート状のヤツです。
「ほう!興味がある。一度見せてはくれまいか」
はい、今度仕立てて持ってきましょう。
あと馬は何頭立てにしますか?軽く作る様にしますから1頭からでも引けるでしょうけど2頭以上の方がいいでしょうねえ。
「本当のことを言うとお前のムーシカ程のスレイプニル1頭立てが希望なのだが・・・難しいか?」
難しいでしょうね、もう事業立ち上げますから捕獲したとしても俺から直には卸せないと思います、建前上は。
「・・・今は2頭立てにしよう、後に変更は出来るのだろう?」
問題ありません、拡張込みで設計します。
こんなやり取りも楽しいのかデデリさんの顔が生き生きしています。
俺も楽しいです、他人のお金で馬車が作れますから。
今回は馬抜き、馬車のみで予算大金貨100枚(日本円で凡そ2千万円)との事。
前世なら結構な高級車が購入できます。
当然こういった物の値段は天井知らずで細部への彫刻、シートへの刺繍なんかも施せば大金貨1000枚以上ザラらしい。
騎乗動物も馬車も貴族のステータスを表すツールの一つだから皆見栄を張るんですな。
俺の馬車なんか結構な価値になるんじゃない?俺専用だからちょっと微妙なとこあるけど。
「お前の馬車は見た目はあれだから式典には向かんが遠征、戦場ではちょっとした拠点になるな」
「別の意味でとんでもない価値がある」と笑うデデリさん。
「・・・そうだな、お前の馬車と同じ仕様の物を王家で1台購入する様に宰相閣下に進言しておこう、チェルナー姫様の移動用にな」
大変光栄な事でございます。
ぜひお願い致します、色も含めて姫様にご満足いただける物を製作いたしますので。
あ、肩でも揉みましょうか。
「騎士団でもシンシア用に1台予算を付けるか」
シンシア用ですか?
「ああ、腕のいい治癒魔法師に何かあってはいかん。遠征時の移動には万全を期さねばな」
はー、VIP待遇ですね。
「これくらいは普通の事だぞ?俺らと違って体の鍛え方は一般市民と変わらん、戦闘の訓練も受けてはおらんからな」
まあそうですよね。
戦闘時の生命線ともいえる大事な治癒魔法師を何の対策も取らずに狙われたら一発でやられてしまいます。
なら防御結界みたいなのを張れるようにしておきましょうか。
「出来るのか?」
まあ、矢避けの付与が出来ましたからね。
防御とは言っても壁で守る訳ではなくて馬車に命中しない様に投石とか矢の進行方向、ベクトルをズラすやり方なんですけど。
「良く分からんがつまり攻撃が当たらないという事か?」
その理解で概ね間違いありません。
念のため魔法も対象にしておきましょう。
放出系の魔法で攻撃受ける事はまず無いと思いますけど精神干渉系はあってもおかしくないですから、青銀使用すれば魔力使わなくてもディスペルするみたいですし。
「・・・受注あった際にはチェルナー姫様の馬車にも付与してくれ」
はい、その際は間違いなく全力を尽くしますのでご安心を。
でも要人警護用としての需要も見込めそうだ。
今までの会話から察するに馬車なんかとは別に通常の洋服への付与も需要あるんじゃね?
防弾チョッキじゃないけど要人用のパワースーツ・・・とまでは言わないが下着の長袖シャツなんかに青銀糸とか編み込んだり、刺繍で光学迷彩とかの付与を施したり、逃走用に有効じゃないですか?
「それも出来るのか?」
多分。
「・・・宰相閣下、いや陛下に進言しておこう」
ビッグマネーの香りがします!
ぜひお願いします。
この後も色々馬車談義に花が咲き、部屋までシンシアが俺を迎えに来ると言う一幕もあったりした。
ごめんね、待たせてしまって。
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