第122話 とりとめのない話

コルネンから持ってきた革で靴を作ってます。

何気にやっと取り掛かる事が出来て安心している俺、クルトンです。


村への滞在も残りわずかとなってしまったのでちょっと急がないといけない。

まあクラフトスキルのアシストあるから全く問題ないんだけれども。


・・・ほら出来た。

クレスと妹たちに出来た靴をプレゼント。

踝上まであるブーツでちゃんとサイズと形を測定して作ったからぴったりのはず。

しっかり馴染むまでそう時間はかからないだろう。

表面には撥水の付与もしているから使い勝手は良いと思う。


革は多めに買ってきたので続けて父さん、母さんの分も作り渡す。


丈夫でしなやかな革を使っているので手入れをしていれば相当長く持つはず。

やっぱり新品の靴は良いよね。


他には何かあるかな・・・ああ、姿見も作っておこう、意外と鏡は高価なんだよな。




妹たちの結婚資金は貯まったので今はコルネンの銀行に預けてあると父さんと母さんに話している。

こっちに戻ってくるときまでに必要な物が有れば、その資金を使って色々準備するから手紙で連絡してほしい旨も伝えている。

一応これで目標は達成、始末が付いたとしておこう。


これからの1年は受注してしまった未完了案件をこなしていくのと騎乗動物の繁殖場の立ち上げに費やされるだろう。

・・・クラフト案件は問題ないだろうが繁殖場立ち上げは1年で済むのかな、済みそうにないよな?


まあいいか。なる様にしかならん。




それとは別の話として新たに感じたのは農耕用の家畜も必要だろう事。

俺が村に戻った時には一緒にスレイプニルが付いてくるからこれで良いかと最初は思っていたが、実際連れてきて分かったのはこの馬躰では大きすぎるなって事。

畑に入れるには大きさも重量もデカすぎる。

馬力は十分以上だが歩くだけで蹄がかなり沈むし小回りが効かない。

前世の大陸の麦畑くらいの規模なら違和感ないだろうけど。


森を切り開く開墾作業は凄まじい効率なんだがね。

切り株の除去なんか軽々やってしまう。


もう少しコンパクトな農耕用の家畜を用意した方がいいな。

あと一年ある、何かいい家畜が無いか色々聞いてみよう。

家畜にひかせる犂とか農具が有れば俺じゃなくてもかなり楽になるしな。


今でも村長管理で馬、農具はあるが共同で使用しているし、俺から見てもくたびれている感じがするから新しくしたい。


頑張って働いてくれた馬も肉として潰すんじゃなくて余生を全うしてほしいから放牧地も整備したい。

ああ、これは完全に俺の我がまま、エゴだけど。



村の温泉施設も拡張したい。

最近魔獣の出現頻度が上がってきているらしいから、村の柵ももっと丈夫なものにしたいし竹林も整備したい。



竹林は魔獣対策用。

村の脇、それなりに離しはするが竹林を整備しておくのは魔獣を発見、襲来してきた時に竹林に火を放つ為。


地面に落ちた葉から直ぐに燃え広がり弾ける竹の音も相まって燃えさかる竹林めがけて魔獣は自ら飛び込んでいく。


完全に倒せる訳ではないが時間稼ぎが出来るので、その時間を利用して避難するのが一般人の魔獣への対処法。


人と炎に寄ってくる魔獣の特性を利用したトラップなのだが、そもそも竹林はそれなりに手入れをしないと隣接する土地がえらい事になる為、植えたくてもできなかったりする。

竹じゃなくてもよくね?って話もあるが葦や茅は生える場所を選ぶし、この辺にある樹木では燃えにくいし燃やした後に植え替え、成長するまでが遅く次まで間に合わない事があり得る。


なので実現させるための予算を何とかしたい。

こういった備えを無駄という人もいるが、震災の被害を記憶として持っている前世日本人の俺は安心できないんだよ。

出来る事はすべてやる。



後は何だろうな・・・この村に新たな移住者が来れるだけの雇用を生んでいかないといけない・・・のか?

『開拓村』だから開拓するのが一番の目標、仕事なんだがそれなりに仕事はキツイ。

そもそも開拓するのに単純な人手、頭数も必要だし。


特に新たに畑を拡張する時の労力はかなりのものだ、2年以上は農地として役に立たない土地に手を入れ続けなければならないんだから。

この厳しい状況を自らの手で切り開いていかないといけない訳だから開拓村に入植する事に対して二の足を踏むのも理解できる。


・・・やっぱり耕作労力の軽減を最初に考えないといけないか。

トラクターなんて無いからやっぱり家畜とそれが引く農具の充実から始めないといけないのかな。





俺が自前の家畜に始まり開拓村の拡張の話まで、とりとめのない独り言をブツブツ呟いていると

「お前にはもうここ(開拓村)は狭すぎるな」

父さんが笑ってそう言う、少し寂しそうにも見えるのは気のせいか?


「そんな事ないわ、私たちの子ですもの。結局はここに戻ってくるわ」

そう、大丈夫。必ず戻ってくるよ母さん。


「まだ教えてもらわないといけない事もあるし」

クレスはもう大丈夫だと思うぞ?自分のやりたいようにすればいい。


「次来るときはお嫁さんを連れてきてね(笑)」

「私たちの旦那様も紹介してもらわないと、なんたって兄さんは騎士様なんだから」

イフにエフはもう少し言い回しを考えような、ぞんざいな扱いを許してくれるのは家族だけだぞ。


夕飯も終わり暖炉の前に敷いているカーペットの上で寛ぐ狼達を眺めながらのんびりしながら会話を交わす。



・・・そう言えば狼達にも名前を付けないといけなかったな。


「?もうつけてるわよ」

なんですと!


「名前がないと不便じゃない」

そうなんだけども・・・誰が付けた?


「母さんと私とエフ、3人で考えたわ」

そう・・・、なら是非もない。

因みにその名前は?



「この子(雄狼)がポム、この子(雌狼)がプル、この子(子狼)はぺス」

うん、呼びやすい名前で良いと思うよ。



じゃあ、改めてよろしくなポム、プル、ぺス。

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