第109話 出来る事から順序良く
出来上がった腕時計の仕上がりにニヤニヤしている俺、クルトンです。
やってみるもんだな、極端な話し石で腕時計出来るんだから。
ファンタジー様様だな。
一応これは俺が四六時中身に着けているカバンの中に死蔵する事を伝えたら、親方は見なかった事にして部屋から出ていきました。
ダイヤモンドと言ってもカラーレスからピンク、レッド、イエロー、グリーンと部位によって色を変えていき、グラデーションを持たせた趣有る姿でなかなかの出来ではなかろうか。
ふう、少しは満足した。
これから馬車の設計に入りたいところではあるが、忙しくて後回しにしていた狼達の小屋を作らねばならない。
なんだかんだ言って外は可哀そうだと夜は裏口から中に入れてくれて、雨風はしのげているがこのままと言う訳にはいかない。
こんなもんかな・・・。
紙に図面を引く。
この位なら図面は無くてもサクサク作れるのだけど、仕事の履歴を残す為にも図面、設計図は必要だろうと引いている。
次は材料調達しに行くか。
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パン工房の脇で木工のクラフトスキルの恩恵を受け製作を進める。
狼達の大きさは前世で言う大型犬クラス。
しかも3匹だから小屋はなかなかの大きさになる、店の軒先に設置するにもちょっと気を遣う。
外見はスタンダードな犬小屋を横長にしたような感じだが床を少し浮かせて夏は床下に風が通る様に、冬は藁なんかを詰めて底冷えを軽減する様に。
狼なので寒さにはかなり耐性が有るだろうが、本来の巣穴の様な掘り下げた土の上と比べると都会の地面は結構底冷えするから。
屋根は雨漏りしない様にしっかり木を重ね合わせニスを塗り、外壁は雨が直接入らない様に角度を付けたうえで百葉箱のように少し隙間を開ける。
夏は風が通り、冬は囲いを追加して風を防ぐ様にして過ごしやすく。
出来るだけ俺の付与効果に頼らずに、人からの世話を受けなければ生きる事が出来なくなる、そんな事が無いように。
なので小屋のメンテナンスを軽減させる為の防水、防腐だとか劣化し難くするような付与のみとしている。
あとはトイレ用の砂を入れる大きな桶、屋根付きで。
これには消臭の効果を全力で付与。
食品(パン)を扱う店のすぐ近くで獣の糞尿の臭いは絶対にNGだからね。
ニスが乾いたころ合いに小屋を設置、人の手で簡単に移動できない様に、風で飛ばされない様にしっかり杭で固定。
最後にボアブランケットを使った薄手のクッションを中に敷き狼達を招き入れる。
狼達は小屋に入るとそれぞれ居心地のいい姿勢になると体の緊張が解けて寛ぎだした。
良かった、気に入ってくれたようだ。
後は名前を付けてやらないとな。
これは叔父さん達に頼もうか。
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次の日はカサンドラ宝飾工房の作業場で馬車の図面を引く。
構想はかなり固めていたのでこれもサクッと引けたが現物を作る前にノンスケールの模型を作成し部品同士の嵌め合い具合を入念に確認する。
初めての作品だからだろう、やっぱり細かい箇所で上手く組み上がらないところが出てくる。
3DCADでもあればいいんだろうが、無いものねだりは出来ない。そもそも有っても俺じゃ使いこなせないし、今は現物確認が一番確実。
これをこうして、内装と収納はこうして、これは重くなるから素材を別の物にして・・・なんて検証踏まえた細かな修正をしていると親方が馬車の模型を覗き込んできた。
「ほうほう、面白い事やってんじゃねえか」
ええ、とても楽しいです。
こういったのはおもちゃ感覚ですよね。
笑いながら俺が答えると
「コレだけでも売れるんじゃねえか?繋ぐ馬もブロンズで拵えて体裁整えりゃあ立派な美術品になりそうなもんだが、どう思う?」
との事。
・・・とても興味があります。
趣味と実益を兼ねた儲け話は大好きです。
置物であればガラス細工なんかでも良いんじゃないでしょうか。
「・・・ガラス職人らからなんか言われそうだが、お前がやる分には止めねえよ」
言われますかね?
「まあな、縄張り荒らすようなもんだからな。でもお前の腕なら黙らせられるんだろう?」
芸術的なセンスはありませんが模型の様な物なら得意ですからそちらの方面でどうでしょうかね。
普通にグラスとかデキャンタなんか作ったらギルドに睨まれるんでしょう?
さっきの話じゃないですけど馬と猫とかグリフォンとかならどうでしょうか、なんか創作意欲が湧いてきた。
とりあえずは馬車を一段落させてからですけど。
「ああ、やる分には何も言わないが一応根回し済ませてからやれよ」
そうですね、根回しは大事ですからね。
親方の話を聞いて早速ムーシカ、ミーシカに似せた木彫りのスレイプニルを彫った。
足が8本だから結構大変だったけど模型の馬車につないだら、あら、いい感じ。
途端にリアルさが増して見える。
これは良いものだ、是非とも自慢したい。
誰か俺のこの作品を誉めそやしてくれる人は居ないものか・・・いた。
デデリさんなんかどうだろう?
馬車に興味は無くても木彫りのスレイプニルには食いつきそうだ。
いや、待て。以前フォネルさんがデデリさんは動物好きと言っていたじゃないか。
ポポをモデルにブロンズで像を作れば買い上げてくれるんじゃないか?
・・・ダメもとで試してみよう。
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「ポーズ違いを追加で二つ注文しよう」
はい、商談成立しました。
4日間の製作期間を経て一抱え程ある大きさの、グリフォンとそれを駆るデデリさんの像が完成した。
公開訓練時にデデリさんが乗って俺に急襲するさまを思い出し正確にトレース。
色々躍動感を表す為に盛った所もあるけれど、今まさに獲物に襲い掛らんとする一瞬をとらえたなかなかの作品(だと思う)。
最初は俺の作品を自慢する相手を探していたのに、デデリさんへこのブロンズ像を披露しに行ったらいきなり値段を聞かれ即お買い上げ。
いや、買ってくれればいいなーとは思っていたけれど。
とっさに大金貨1枚(日本円で約20万円)って答えちゃったけど実は安いのか?
「安いな、この大きさでも高名な彫刻家に依頼すれば大金貨100枚と言われてもおかしくない」
はー、そうなんですね、まあ俺はこの分野では無名ですからね。
銘を入れちゃいましたけど問題ありませんでしたか?
「構わん、と言うか銘は入れんとまずいだろう。出自を表す大事なものだぞ」
あ、いやさっきの通り今のところこの分野で俺は無名ですから、逆に価値下がるとか言われたらへこんでたと思うんですよ。
そうはならずにホッとしていたところです。
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