第108話 現状を把握しよう
諸々の手続き、書類の提出、役所との打ち合わせと暫く宝飾の仕事をしていません。
浜田◯吾の『マネー』を歌い出しそうになる俺、クルトンです。
コルネンに戻ってからはすぐに宝飾の仕事を再開することは出来なかった。
材料代、工房への人件費、俺の工房の賃借料の支払い、銀行に振り込まれている俺の作品への対価の金額確認。
つまりは収支のまとめをやりながら納めなければならない見込みの税金を計算、予定納税の手続き。
その後納税額が確定して還付金が出るかもしれないが、お金が有るうちにやってしまう。
多分もっと忙しくなるだろうし、納税のタイミングで手持ちの資産が無い状態だとかなり不味い。
そうなってもニココラさんに融資してもらえば解決するだろうが、そんなことで迷惑をかける訳にはいかない。
・・・手が回らんな、事務員雇った方がいいな。
給料払える位は儲けが出てる、むしろ雇った方が税金安くなりそう。
2年の出稼ぎを終え、俺が村に帰ってからも宝飾工房、ニココラさんとの繋がりは残るだろう、その為にも経理含め運営を管理してもらえる人材を探そう。
うん、そうしよう。
しかし税金って高いな、利益のきっちり半分持ってかれる。
ステンレス鋼、オルゴールのライセンス料、国王陛下への腕時計、デデリさんへの馬具とオルゴール、フォネルさんへのオルゴール、懐中時計の設計費用とそのライセンス料、初回討伐した魔獣の素材料等々。
一番デカいのは腕時計の売り上げだが、その他合わせて大金貨750枚程(日本円で凡そ1億5千万円)の売り上げ。
あと4頭の角付魔獣の対価はまだ入金されていないから今まとめている会計からは除外。
スレイプニルを利用した運搬業も別法人なので会計には入れていないが経費や人件費、材料費、俺の報酬、税金差っ引いて純利益が大金貨130枚、売り上げの17%くらいか・・・良心的だと思う。
徴税官がどう感じるかは分からんが。
そんな評価をしているのはこの世界、この国では純利益2%とかが普通らしいから。
オーナーが売り上げから報酬をガッポリ差っ引いて、そのオーナー個人が税金払うんだと。
自分の発言力を高めるために。
まあ、店の資金が不足したらそのオーナーが補填するんだけども。
面倒くさいことするもんだ。
因みに俺の報酬は大金貨100枚にした。
実作業の殆どを俺が対応したしね。
その内7割は故郷への仕送り、妹たちの結婚資金として渡すつもりだから実質俺の取り分は大金貨30枚(日本円で凡そ600万円)。
成した仕事の大きさを考えればもっと貰ってもいいんだろうが最初だから利益は事業継続の資金としたい。
貧乏性なので現ナマが無いと落ち着かないってのが本音だけど。
取り合えず妹たちの結婚資金の目標額は稼いだ、ホッとした。
けどこの一連の手続きに3週間かかってしまった。
マジ面倒くさい。
もっと建設的と言うかクリエイティブな仕事がしたい。
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「って事でコレをこさえたわけだ。・・・なんか妙に静かだから見に来てみれば、訳分かんねえよ」
カサンドラ宝飾工房の俺の作業場で親方が一人ごちります。
いや、俺の今の技量がどこまで上達したか確認したくてですね。
クラフトのRTA(Real Time Attack)にも挑戦したかったですし。
「アールティーエーってなんだよ、『確認したくてですね』じゃねえよ、どうすんだよコレ。お前が来てから領主様が衛兵と騎士団の人員割いてここいらの工房の警備強化してくれたから安心してたのに、殺されるリスク取ってでも強盗入ってきそうだぞ」
それって命より大切な物ですかね?
「あわよくば狙ってくる奴いてもおかしくねえって事だよ!」
うーん、いや分かるよ、親方がそう言うのも理解する。
俺も久々のクラフトで舞い上がってたのは反省する、それでも確認したかったんだよ。
本当に作れるか。
それに俺も気を使ってこっそり作ってたのに親方が部屋に入ってくるからぁ。
「俺のせいか?」
「しかしよう・・・置物じゃなくて本当に動いてんじゃねえか」
はい、そう作りましたから。
俺の作業台の上には、いつかパメラ嬢に胸倉をひねり上げられながら話したダイヤモンド製の腕時計が時を刻み、差し込む陽の光を部屋中に振り撒いていた。
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