第107話 馬車を作ろう
聴取もサクッと終わりようやく下宿先であるパン工房に帰ってきました。
やっといつもの日常に戻れると安堵する俺、クルトンです。
「お帰り、王都はどうだった?おう!」
アイザック叔父さんが出迎えてくれました。
狼に驚いた様です、当然ですね。
ええ、仕事も無事完了して俺の事業立ち上げの手続きも終わって今思えば順調だったんじゃないでしょうか。
あとこの狼なんですか王都行く途中で懐かれてしまって。
「今更驚かねえが店は食品扱うから家の中は駄目だが飼うのは駄目じゃねえぞ」
であれば軒先にでも。
大人しくしていてくれよ。
狼を軒先に残し店の中に入ります。
小屋を作ってやらないとな。
「しかし、無事に仕事が終わったか、そうかそりゃよかった。という事は一度故郷に戻るのか」
はい、そうしようかと思います。
コルネン内での事務処理済ませてからですけど。
「ゆっくりしてくると良い。なんせ騎士様で王都民になったんだレビンも喜ぶだろう」
喜んでくれるといいのですが。
「これで喜ばなかったらどんだけ子供に期待してるんだって話だ、正気じゃねえよ」
そうですね。
そして今晩も王都での出来事を土産話として披露した。
宝石の話になった途端、女性陣の圧が凄まじくて製作した推定20カラットのカラーレスダイヤを披露させられる。
それを見つめる女性陣の鬼気迫る雰囲気というかなんというか・・・。
これを市中に流すのは不味いとの事だったので見本用に作成した1カラット程のピンクダイヤを『お土産』として渡した。
いや、もうね耐えられませんでしたよ。
早速指輪に仕立ててくれと頼まれたがアイザック叔父さんが
「指輪にしてどうするんだ?そんなのしてたら強盗に腕を落とされて持ってかれるぞ」
とたしなめられ事なきを得た。
作るのはたいした手間じゃないんだけど、それを狙うやつは出てくるよね。
これで不幸になるのは宜しくない。
一応保管用の箱作ってそこに保管してもらおう。
他にはいつも買ってくる焼き菓子と砂糖、バニラビーンズ、シナモン。
それに今回は皆のシャツを買ってきた。
王都の最新デザインの真っ白い襟付きのシャツ。
白の生地は念入りに漂白する必要あるから意外と値が張る。
皆に2着づつ渡したら大そう喜ばれた。
「いつもスマンなぁ、そんなに気を使わなくてもいいんだぞ?」
いえいえ、いつもお世話になっておりますし、今回は大きな仕事が無事完了した事もありますので。
その後も明日の仕事に障るからと、叔父さんが場を切り上げるまで王都の話は続いた。
次の日の朝、久々に俺が窯に火を入れ準備を進める。
ここ最近は寒い時期にも関わらずアイスクリームの販売が好調で、昼から夕方の凡そ3時間だけ近所のおばちゃんにお願いしてお手伝い来てもらっているそうだ。
売り上げに貢献できているならうれしい。
始末をつけて今度はカサンドラ宝飾工房へ。
狼と一緒、ただし軒先で待っていてもらう。
「よう、どうだった?」
扉入ってすくに親方がいてそう聞かれる。
無事終了しました。それで皆の工賃の支払い手続きをしたいので請求書が欲しいんですけど。
「分かった。準備しておく、2日間くらいで渡せるようにしておくよ。」
では、次に新たに受けてきた仕事の話をしたいのですが。
「今度は何を受けたんだ?この工房でも対応できるのかね」
どうでしょうね難しそうですが。
でも作業部屋を提供いただいているので一応報告はしておいた方が良いかと思って。
「そうだな、同じ工房内なのに何やってるか知らんようではまずいからな」
俺の作業場に入りこれからの説明の為に依頼内容を箇条書きにしていく。
陛下からの王笏
レイニーさんからのヒーターシールド
ニココラさんからの宝石
個人用の馬車製作
クラフトには関係ないが新規事業の為の騎乗動物の確保。
どれも期限を決められてるわけじゃないが、のんびりしてると全部の仕事が共倒れしてしまいそうだ。
優先順位を付けて熟していく。
「しかし節操ないな、ってか騎乗動物の確保は王都の騎士の仕事じゃねえか?」
そうですよね、俺もそう思います。
でも直近でスレイプニル、グリフォンを捕獲してきた実績が有る以上、最初に俺へ話が来るようで。
まあ、狩りをしながらの森の散策は好きなのでやりますけども。
「俺としちゃあ宝飾に専念してほしいところだが陛下の肝いりの事業なら仕方ねえか。で、この中なら俺らが手伝える仕事はなんだ?」
そうですね・・・王笏のデザインとかどうでしょう、数点くらい候補をだしてもらって。
あと宝石の研磨ですかね。
「おお、良いぞ、良いぞ。そうか・・・王笏かぁ、うちの工房の実績に王笏製作が加わるのか・・・」
親方がニヤニヤしてます。
大きな仕事に加われるのがうれしいのでしょうね。
腕時計の時も何か仕事無いかと聞きに来ましたから。
で、最初に馬車製作に手を付けようと思います。
「おう、いきなりだな。なぜに馬車?」
近いうちに一度里帰りしようと思いまして。
その為にスレイプニルにつなぐ馬車を仕立てようと。
「故郷にはスレイプニルで行くんだろう?お前の故郷までなら馬車が必要な距離でもないだろうに」
気分の問題です。
マーシカはいつの間にかパメラ嬢専用になってしまったので、その他スレイプニル2頭立ての豪華馬車を作ろうかと。
「必要あるか?」
騎乗動物の確保なんかで各地を回る可能性も出来てしまったものですから今のうちにと。
「なるほどねぇ。確かに優秀な騎乗動物は人里近くにはいないからな。正直な所お前が作るその馬車に俺も興味が有る」
期待してください、思いっきり俺の趣味を詰め込んだロマン仕様にするつもりですから。
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