第98話 新規受注

ようやくお呼びがかかり登城の最中の俺、クルトンです。


思いのほか時間がかかりました、7日間。

どんだけお祝いの言葉を考えていたんだろう陛下は。


まあ、それまで王都外でムーシカ、狼3頭と運動・・・俺の鍛錬・・・と狩り、近くの川で水泳なんかもした。

村にいた時にも溜池で泳いでいたから問題なく泳げましたよ。


この寒い時期に泳ぐのは自殺行為なのだが俺には関係なかった。

MMORPGでは地形ダメージが発生する特殊なマップでない限り極寒の湖で泳いでも体力減らなかったので、その能力が引き継がれてるんだろうな、多分。



この世界の人は性別問わず筋肉量が多いのか体が水に浮きにくく意外と金槌が多いんですよね。

俺程度の泳力でもカワウソの様だと小さい頃から褒められてました。

幼少期はガタイ以外では泳ぎがうまい事で有名でしたよ、村の中でですけど。


そんなバカンスの様な充実した生活を過ごした後の呼び出し、リフレッシュして気力は十分です。




馬車で門をくぐりアスキアさんと陛下の執務室まで向かいます。

「あの、クルトンさん。相談したい事が有りまして」


はい、なんでしょう。


「先日戴いた祝いの品の件なのですが、どう管理してよい物か難儀しておりまして・・・とりあえず警備の者は増やす手筈は整えたのですがそれでも心もとなく、何か良い知恵はありませんでしょうか」


金庫作りましょうか?

アダマンタイトの使用許可取れればですけど、それを使えばかなり頑丈なものが出来るでしょうから。


アダマンタイト、オリハルコンは今まで使い道がなく死蔵されていた素材、なので今なら極端な話プライスレス。

言い値が市場価格になるような状態。

戦略物資に相当する素材ではあるけれど加工ができなかったので使い道のない物に『希少価値』だけで値段は付けれなかったみたい。

まあ、国で独占していたし流通もしていないから市場そのものが無かったのだけれども。


価格が高騰するであろうこれからを考えると、今のうちに事情説明すれば許可下りるんじゃないですか。


まあ、魔法付与施せば普通の鉄でも十分でしょうけど。


「ぜひ、お願いします。正直夜もゆっくり寝れないのですよ」

そんなにですか?


「ええ、ソフィー様曰く大層な宝石との事でしたので」

へー、そーなんですねー(棒)




執務室に到着、

「よく来た、まずは茶でも飲みながら話そう」

陛下のこの言葉を受けロルシェさんがお茶を準備してくれました。

相変わらず美味いんだよね、このお茶。(ズズズーーー)

俺の側では骨を貰ってそれに夢中の狼達。


「とりあえず儂からの祝いの言葉はこれに書いておいた」

陛下のお言葉が書いてある紙を頂戴し中身を確認。

うん、文字数はそこそこあるが問題ない。

早速印刷するか。


印刷と言ってもシルク印刷みたいなもの。

樹脂というかプラスチックというか石油製品の様な物は再現できていないので、極薄の金属板に文字を切り絵のように抜いていく。

切り絵に出来ない形状の文字は型のシートを2枚使って文字を分解して切り抜き、別々に印刷して処理する。


作業台の上に金属板を置き、レーザー加工機の魔法でサクッと抜いてしまう。


その金属板を腕時計ケース、蓋の内側にしっかり固定して緑色の塗料を塗りつける。

1回目の塗料が乾いた後に2回目の金属板を同じように固定、同じく塗料を塗りつけて板を取り外すと綺麗に印刷された文字が現われた。


「その魔法もその印刷とやらも便利なもんじゃの」

そうですね、これも丸パクリなのですけど。


これで正真正銘の完成。

アスキアさんがまたウルッとしてる。


納品書と請求書を手渡し、宝飾職人としての俺が最初に受注した仕事が完了した。



「ときにクルトン、今抱えている仕事はあるのか?」

いつの間にか脇にいる狼達を撫でながらそう聞いてくる陛下。


いえ、特に大きい仕事はないです。

これからは指輪なんかの宝飾品やオルゴールを受注、販売していこうかと。


「そうか、では儂からの注文を受けてはくれまいか」

ええ、大変光栄な事ですしこちらからお願いしたいくらいですが・・・ちなみに何を御所望でしょうか?


ムッフーと鼻から息を吐いた後、陛下はこう言った。

「王笏じゃ」





王笏ですか?もう持ってますよね。

知らんけど。


「持ってはおるよ、代々受け継がれておる大切な物を」

何故に二つ目が必要で?


「あの伸縮式棍棒だがな、儂も使ってみた。良い出来ではないか。」

はあ・・・もったいなきお言葉。


「反応薄いのう・・・。しかし魔法に関して言えば棍棒より杖じゃろう?で、儂が持つとなれば王笏じゃ」

オモチャが欲しいんですね。はい俺、完全に理解しました。


「話が早くて助かる。儂もバシバシ魔法撃ちたいんじゃ。あの棍棒は儂に報告上がって来た時には国の管理物になる寸前じゃった。手続き完了してしまうともう儂の一存だけで勝手に使う事も出来んからのう」

へー、結構管理しっかりしてるんですね。


「勿論じゃ、王権でなんでもできれば愚王の時代は国が亡ぶ」

「今回も登録手続き前にギリギリ触ったんじゃ」との事

まあそうですよね。


しかしオリハルコン使わないと結構厳しいと思うんですが、陛下の我がままで使用許可出ますかね?


「儂が説得する」

でしたら良いのですけど・・・。

俺の隣でアスキアさんが頭抱えてますが本当に大丈夫なのか?


「頼むぞ、カッコいいヤツをな!」

とりあえずピッカピカに光るので、そこんところ覚悟しておいてくださいよ。

網膜死んでも責任取りませんよ。


「そこは、ホレなんとかできるんじゃろう」

やってみないと分かりません。

このフィールド内で魔法を放つ行為は色々な条件クリアしないといけない様ですから。


で、どこまで本気出せばいいんですかね?

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