第83話 仕上げ
集中を切らすことなく作業を続けている俺、クルトンです。
先日準備完了した腕時計の部品を再度1個づつ確認しながら最終組み立てを進めています。
部品の取り扱い時もそうでしたが汚れや指紋が付かない様に薄さ優先で厳選した革を使用した手袋とステンレス製ピンセットを使って確実に、丁寧に・・・。
部品一個一個に魔力を込めて刻印の動作もチェックしながら、わずかな齟齬も無いように組み上げていく。
これに刻んだ付与の効果がチェルナー姫様の今後の人生に影響を与える事になると思うとさらに集中力が増す。
焦らず、しっかり、丁寧に、そう心を込めて。
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ようやく組み上がった。
部品選定時は1日有れば組み上げれたが最終組み立ては5日を要した。
これから最後の仕上げをする・・・が、それは明日だ。
今の疲労困憊状態だと仕上げの作業無理だろうから。
「どうだい?今の仕事の調子は」
上手くいってます、叔父さん。
明日には完成しそうです。
「そりゃあ良かった、じゃあまた王都に行かないとな」
そうですね、今度はもうちょっとゆっくりしてこようかと思います。
それで帰ってきたら故郷に一旦戻ろうかとも思います、仕事が順調な事も伝えたいですし。
「そりゃあ良い!レビンも喜ぶだろう」
今日はかなり疲れました・・・食事が済んだらすぐに布団に入ります。
「・・・ああ、そうした方がいい。明日もしっかりな」
はい、手は抜きません。
次の日予定通り昨日の続きを行う。
といっても最後の仕上げは魔力の充填です。
ケースとバンドをオリハルコンにしていて付与効果を動作させる為の魔力の充填。
バッテリーへの電気の充電みたいな感覚。
実際は大気中の魔素から魔力への変換術式を刻んでいるので動作はするのだけど何か問題が起こって魔力を充填できないと詰んでしまうという可能性が無いわけではないから。
来訪者の加護持ちは体内魔力がかなり低いから尚更だ。
よって予備バッテリーの役割をしてもらう。
オリハルコン、アダマンタイトの加工は予想通り俺のスキルで問題なくできた。
魔法の付与の為の刻印も。
オリハルコンには術式が刻めれば魔力の充填、放出、魔力への変換、最終的にはトリガーとなる術式刻めば直接魔法を放つ事も出来た。
そう、MMORPGで見た様なファイヤーボールとかサンダーアローみたいな魔法も放つ事ができた。
発現させる為にはその事象のプロセスをかなり細かく刻印する必要があって、その結果かなりの文字数が必要になる。
尚且つ術式を一定時間内、超短時間で作動させなければならず、その為刻印している物質内を通る魔力の速度を上げるというか通過する経路の抵抗を減らすというか、そう言った障害を取り除く必要が有ったのだろう。
オリハルコンにはその障害となるものが感じられなかった為、効率よく魔力を魔法に変換出来たようだ。
その結果今まで発現できなかった魔法を放つことができたみたい。
試しに触媒なしで魔法を使ったところ物凄く時間と魔力がかかるし効果も思った程でない。
触媒代わりに鉄の棒を持ってやってみると赤く発熱しだした。
魔力は通るがオリハルコンと比べて抵抗が大きいのだろう、この時は当然魔法の発現はしなかった。
どうやら俺が思い描いていた魔法は適切な触媒に魔力を通してやらないとすこぶる効率が悪い様だった。
12歳の時の魔法がショボかった理由が分かってちょっとすっきりした。
今まで使用してきた付与と違い、外に放つ魔法にはかなり特殊な条件が有るんだろうな。
アダマンタイトは硬いという圧倒的な特徴があるが、今回分かったのは魔力を込めるほど高い比重がさらに高くなる、ようは重くなるという事。
上限有るんだろうけど魔力を込めれば込める程重くなる。
原理は良く分からん
これでメイスや斧作れば相手へのインパクトの瞬間だけ重量増やすって使い方もできるんじゃなかろうか。
魔力込める為の術式刻印必要だけど。
投石機のウェイトとしても使いたいときだけ魔力込めて運搬時は軽い状態ってのも良いんじゃなかろうか。
多分小スペース化できるだろうし。
軽さを求める事が多いが重い方が有利な事もある。
フレキシブルに比重を変えられるってのは場面次第でかなり有効な使い道があると思う。
と、まあそんな事を考えながら魔力充填しているのだが一向に終わらない、まだまだ充填出来そう。
今日、終わらないとかないよね?
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