第80話 結構働く国王陛下

国王陛下の駄々っ子をようやく落ち着け話を進める俺、クルトンです。


で、今日、今この時のご用件は何でしょう?

これには宰相様が答えてくれます

「当初予定から少々変更が有って、もう分かっていると思うがクルトンの地位は曖昧にするつもりだったがそうも行かなくなってしまってな、その件だ」


ええ、その辺聞きたかったんです。


「鼻の効くやつらが口出ししてきおって少々面倒な事になりかけた。お前には短期間に魔獣計5頭単独討伐の功績もある。今回正式に公表こそしなかったがデデリのグリフォン捕獲の功績も合わせればいっそ男爵に叙爵したらとまで考えたがそうなると別の意味で責任、国の仕事などが発生してしまう。

今までの様な動きが取れなくなるからな、お前もそれは不本意だろう。楽観論だがお前の様な人間は自由にさせることが国と王家に最も利益をもたらすだろうとの結論だ」

ただし明確な地位と後ろ盾が必要なので『騎士爵』と『王都民』を褒美にしたと。

それをもって面倒な奴らを黙らせたと。


「王都民は建国当初の太古までさかのぼれば王家に必ず辿り着く、例外なく。

しかも王都民で貴族となれば、これも例外なく男系の血筋だ」

どこぞの皇室ですか、それ何気に凄い事じゃないですか。

建国時に功績を上げた人たちの末裔って事は聞いてましたが王家の血筋でしたか、そうですか・・・でも、これ俺が知って良い話なんです?


「ああ、構わん。手続き中だが公開訓練のあの場からお前は騎士で王都民だ、公然の秘密だがこれで王家が後ろ盾になったという事になる」

あ、そうなんですね。

でも王家の血筋となる王都民に俺の様な異分子が入り込むのは別の方面からかなり反発有ったんじゃないんですか?

それこそ王都民からとか。


「ああ、だから最初は王都民貴族の娘をお前に降嫁させて王都民にと考えたんだが・・・今度は別の所からちょっかいが有ってな・・・」

「ふうーー」と深いため息をつきながらデデリさんをちらりと見る宰相様。


「そもそも王都民が王家の血筋でなければならないという根拠はないのだよ、建国当時の偉人達に匹敵する功績をあげたものが今までいなかっただけだ」


「この面倒事が公開訓練前のお前との謁見後から訓練始まる直前まで調整が必要だった事案だ。さすがに疲れた、陛下も私もあれから寝ておらんのだよ」

おう、大変そう。


「他人事じゃないぞ」

と宰相様からチクリと言われる。




「それでこれからはもっと積極的にお前の力と知恵を貸してほしい。魔獣に怯え、狩られていく人類がまだまだいるのだ。それとは別に1歳の誕生日を迎えられずに大地に帰らざる得ない来訪者の加護を持つ者も多いだろう、とても、とても辛く悲しい事だ・・・」

陛下が目を閉じ静かに、呟くように俺に伝えます。

『国民』ではなく『人類』という事は何れ他国にも俺の存在を公開するつもりなのでしょう。


こちらからあえて言う事は無いでしょうが、正式に依頼が有れば断る理由はありません。


すると今まで一言も発していなかったフンボルト将軍が口を開きます。

「でなクルトン、儂もグリフォン欲しいのだ、何とかならんか?」

相変わらず話の流れぶった切る!

そこにシビレない、憧れない。


「おい、フンボルト!わしの方が先じゃぞ!!」


場が混沌としてきたのでメイドさんが気を使い「こちらにどうぞ」と俺たちを促してくれて部屋から出ていった。

メイドさんありがとう。



デデリさんと二人、部屋を出てから改めて修練場へ向かいます。

その道中、

「そう言えばクルトン、お前に許嫁はいないのか」

お、センシティブな話を振ってきますね、まあこの世界では何の問題も無いのですけど。


「恥ずかしながら未だに。なんか故郷の村の女性は俺を避けてる様で」

泣いてなんかいない。


「そうか、これでも私は侯爵。それなりに伝手はある、相談にのるぞ。」

その際はぜひお願い致しますマジで、言質は取りましたからね!


「力、知恵、財力、権力を持つものは弱き者、それを持たぬ者への模範となり、それを示し、災いの際には盾として働かなければならない。これは強き者の宿命だ」

ええ、そういう文化ですもんね、ここは。


「逃げる事はならんぞ、首だけになっても守らねばならん者がいるのだ」

覚悟の話ですね、正直実感はないのです。


「まだ若い、そうだろう。だから早めに所帯をもて」

話がそう繋がりますか。

言ってる事は分かりますが、お相手に巡り合えたらですかね・・・。


「そうだな、お前の格で言えば・・・取り合えず嫁3人とその子供を養える様な稼ぎをしなければな。今の状態が続けば全く問題ないだろうが」

・・・なぜに3人?


「強き者の宿命だ、救いを求める者は皆救う。」

真面目な顔でそういうデデリさん。

貴族の未亡人もそれなりにいる様ですしね。


修練場に着きムーシカの手入れを行い、ここの厩舎に世話をお願いし俺は宿のピッグテイルに向かいます。

いつも通り認識阻害全開なので何事もなく宿へ到着しました。


明日は宝飾ギルドへの顔出しと皆へのお土産購入、明後日コルネンへ出発しよう。

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