第73話 再びの王都

なんか懐かしさのかけらも感じない、再び王都に来た俺、クルトンです。


魔獣4頭を討伐しコルネンに帰還した後、結局それを伝える為、デデリさんが伝令として王都に行くことになった。


討伐結果だけなら鳩便や電信に似た魔法道具ででも王都の近衛に知らせればいいのだけど、群れに成りかけていた事と討伐した4頭全てが角付だった事もあり、せっかくグリフォンがいるのだから説明しに来いと連絡あったそうな。

・・・既にグリフォンの情報王都に行ってたんだな、当然か。

なのでデデリさんが王都に飛んで行った。

4頭分の魔獣の首を持って。


因みに魔獣の内臓はグリフォンの餌になった。

物凄いがっつき様だったよ。


それで終わりかと思っていたらフォネルさんから

「追っかけクルトンも登城しないとね、すぐ出発しないといけないだろうから準備して」

と言われ、また下宿先に戻りアイザック叔父さんに事情を説明。

「相変わらず忙しいな、お前は」

と呆れた顔で送り出された。

なんだかんだ言っていっぱいパン焼いてくれた。

まだ保冷庫完成してないのに、ありがとう。


そして今回はムーシカのみで移動。

4時間ぶっ通しで移動、途中食事休憩を取った後また4時間の移動。

その間ムーシカはほぼ全力疾走で、疲労、重量、空気抵抗軽減の馬具の魔法付与以外にも背の上から俺が直接治癒魔法で摩耗して熱を持つ関節や筋、筋肉の冷却、細胞の修復を絶えず行い通常1週間の所を2日掛からず走り切る。

念のために持ってきたムーシカの飼葉を俺が背負子に背負った状態で騎乗しているのではたから見たら結構異様な姿で。


それで、王都着くとすぐに食処ピッグテイルに部屋を取り早速王城に向かいます。

このクラスの宿屋の料金にもビビらなくなった俺エライ。


王城に向かうと言っても用が有るのは修練場の方。

多分そっちにデデリさんいると思ったから。

居なければ騎士団員の人に聞いてみよう。




王城フリーパス証使用して門をくぐる。

門兵が俺の顔覚えていたから手続きはすんなり終わった。

俺、平民なのにこれどうよ?とは思ったが今はそんなこと気にしても仕方がない。


「おお、もう到着したか。さすがはスレイプニルだな!」

修練場に入り目立つグリフォンと一緒にいたデデリさんを見つけ近づく。

物凄くニッコニコだ。

それに対して脇にいたペンちゃんことフンボルト将軍は羨ましそうにグリフォンを眺めている。


「良いのう、良いのう、良いのう・・・わしにも乗せてくれんかのう?くれんかのう?」

この赤い鞍もイカすのう、とか言ってデデリさんにチラチラ視線を向けてウザい事なってる。


グリフォン自慢しまくっているようだな。

気持ちは分かる。

俺も羨ましいもん、グリフォン。


とりあえずフンボルト将軍は無視してデデリさんにこれからの段取りを確認する。

「取り合えずこれからの予定は・・・」


俺が到着したのは登城した際に伝令行ってるだろうから、基本デデリさんと一緒に行動すればいいらしい。

正式に報告してくれるそうだがその後あてがわれる部屋での待機が基本。


実際はデデリ大隊長、フンボルト将軍と一緒に修練場で他の団員との武器での練習試合をするとの事。


・・・聞いてませんよ、俺宝飾職人ですからお断り致しまする。


「儂は宝飾職人でも構わんぞ、一向に」

いや、平民の宝飾職人にいう事じゃないですよ、ペンちゃん。


「騎士団ではな魔獣の討伐数とその戦場で生き残った回数は勲章の様なものなのだ。公式に記録され退団後の年金の額にも影響する大事な記録でな。

お前はこの短期間に単独で合計5頭、しかも1頭は大型強顎魔獣、4頭は角付。私の感覚でしかないが騎士団員に何人か死人が出てもおかしくない規模の討伐だ」

?話の脈絡が見えませんが。


「お前が成し遂げた事は巡り巡って国民、騎士団員の命を守った事に他ならない。そして何れも一人で成し遂げた、これが周囲にどういう影響を与えるか想像がつくだろう?」

ああ、言わんとすることが分かってきた。


「我々もお前の心情を少しは理解してるつもりだ。インビジブルウルフをことさら喧伝する気はないが、嘗められたらいらん厄介ごとが湧いてくる。それはお前に敗北した私や・・・フンボルト将軍も望むところではない」

・・・そうですね。


「姿を消す・・・そんな技能を習得してるんだろう?

その影響だろうな、インビジブルウルフが実在している事すら怪しむ輩がチラホラいる様だ。しかも面倒な連中にな」

文字通り面倒くさい事なるでしょうねぇ。

俺のスキルの事もなんか感づいて様ですし・・・。


「いずれにせよ王家、騎士団以外の者にもお前の事を認知してもらわねばならん、諦めろ。改めて言うがこれからの厄介事を減らす為だと思え」


なんか説得力がある様に感じます。

二人の思惑に乗るのは正直癪に障りますが反論できません。

俺より遥かに貴族社会を知っているでしょうし・・・今回は諦めます。


「では準備は進めておく。4日後の午後に私のポポのお披露目と合わせて公開訓練を開催するから準備を進めておくように。それと武器を用意しておけ、素手でも十分なのは分かっているが暗殺を連想させて騒ぐ輩が出てくるからな」

「今回は弓は駄目だぞ」と聞くより先に言われてしまったので武器の調達をしなければならなくなった。


木の枝でもいいんだけどそれを話すと「勘弁してくれ」と言われた。

もうちょい見栄えの良い武器にしてほしいとの事だった。


そうは言われましても・・・。

パッシブスキルの効果で下手なフルスケールメイルよりも頑丈な体を持つ俺は革の軽鎧位しか着用しませんから、見栄えを考えれば大きめの武器だとアンバランスになるだろうし、どうしようか。

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