第70話 検収
引き続きデデリさんからの馬具の受入検査を受けている俺、クルトンです。
付与の内容は概ね問題ないようで、意図していた効果が十分に発揮されているようです。
これ以上は使ってもらって改善点を教えてもらうしかないでしょう。
次にデデリさんに訓練用から戦闘用の馬具に交換してもらいます。
「ほう、これも・・・この鮮血の様な赤は魔獣寄せの為とは思っていたが、それでなくてもなかなかに良いではないか」
今回も俺が取り付けの最終確認を行いOKを出すと、デデリさんがグリフォンに飛び乗り同じように空を駆けます。
やっぱり赤は目立ちます。
しかもガードが付いてるのでゴツイ。
これでタップリ戦場でヘイトを稼いでもらいましょう。
・・・なかなか降りてきませんね。
仕事が押してしまうので降りてきてもらう様にフォネルさんに合図をお願いする。
手旗信号みたいな合図を使い、それを見たデデリさんがやっと降りてきた。
ちょっと時間が押してきたので最後の式典用は俺が取り付けます。
細かい装飾品も有るのでデデリさんに説明しながらサクサク取り付け完了。
まずその姿を見てもらいます。
「良いではないか、この真珠で出来ている様な質感。良いではないか」
各パーツごと編み方を変えて織った象牙色の生地は鞍に張られることで立体的になり、見る角度で様相を変えていつまででも眺めていられる一品。
そして障泥にはサンフォール家侯爵家の紋章が入っています。
一目で誰の騎乗動物かわかる様にしましたが・・・グリフォンはデデリさんしか持っていない様なのでその辺は微妙な感じになってしまった。
でもデデリさんはご満悦の様なので水を差すようなことはしない。
大人だから。
「汚れるのは仕方ないとしてもそれは今ではないでしょう」と一言告げて、これには跨らずにお手入れの仕方をレクチャーして検査終了、これをもって検収完了としてもらいました。
取扱説明書を手渡し書類に受領のサインをもらう。
それと引き換えに納品書、請求書を渡します。
後程俺の口座に振り込みお願いします。
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引き渡しも無事完了し、グリフォンに再び訓練用の鞍を付けて空へ向かったデデリさんを見送ると帰り支度を始める。
書類をバックにしまっていると誰かが俺の前に立ちます。
ああ、パメラ嬢ですね。
サンフォール侯爵家、デデリさん直系のお嬢様で精霊の加護持ち。
盾とショートソードを主に使っている正統派騎士スタイルで、成人前という事もあり小柄、しかしむっちゃ強い人。
ってかショートソードは囮で盾で殴り倒す戦闘スタイルなんだよなこの人。
血は争えない。
この人も羨ましそうにグリフォン見てましたから俺からひと言伝えます。
「デデリ大隊長の了解頂ければ複座式仕様の鞍も作りますよ」
その時は声をかけて頂ければありがたいです。
空を飛ぶってのは翼を持たない我々の夢でもありますからねぇ。
デデリ大隊長が羨ましいです。
コクリとうなずくと少し躊躇う様な仕草を見せて口を開きます。
「お金を準備すれば私にもグリフォンを連れてきてもらえるのかしら」
えっ、( ^ω^)・・・無理じゃないでしょうかね。
今更ですけど俺、宝飾職人ですし。
あのグリフォンを捕獲できたのは完全に運でしたし。
「あなたならドラゴンでもここに連れてこれそうなのだけれど・・・違う?」
いやいや、そもそも見た事ありませんよ、ドラゴンなんて。
何ならスレイプニルは?
マーシカなんか丁度良いと思いますが、パリメーラ姫様にならお貸ししても構いませんよ。
「言質は取ったからね。ふふっ、早速マーシカの馬具をお願いすると思うから準備を進めておいてね」
そう言うと跳ねる様に厩舎の方へ走っていった。
ちょっと焦って要らんことを言ってしまったか・・・。
焦った理由は日に日に増す俺のDPSを認識していたから。
ゲームで言うDPS=Damage Per Second。
瞬間最大火力とでもいった方が分かり易いか。
俺はガチ攻略勢よりは1段も2段も下のランクでエンジョイ勢としてMMORPGをプレイしていたが、無駄に時間はかけていた為にスキルレベルは全てカンストしていた。
クラス、職業の制限によって取得不可能なスキル以外は全て。
その為か転生してスキルの存在を認識した時点でべらぼうな火力(物理)の攻撃を放つことができたし、
この世界で幼少から続けているトレーニングは今でもその効果を上げ続け、結果俺のDPSの上限を未だ確認できていない。
この前なんか久々にガチ正拳突き放ったら愛用していた籠手が空気の摩擦で炎を上げる間もなく炭化し霧散した。
勿論上着の袖もいっしょに。
これは俺の手に余る力なのではないかと真剣に考えたよ。
華麗に日本刀を振るうどころか片手で持った木の枝で金属鎧を粉砕してしまうのだから恐ろしい。
正拳突きを放った時に籠手は消滅しているのに、この枝はノーダメージってのが理解できない。
ゲーム内ではエンジョイ勢の俺でも亜竜のワイバーン位なら単独討伐が出来た。
今、この力を持ってすればこの世界の竜をも倒せるかもしれないと少しでも思ってしまったから、
そんな驕りを見透かされるのではないかと焦ってしまったんだ。
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