第69話 出来栄えを評価

ピリついた雰囲気の中ちょっとドキドキしている俺、クルトンです。


そんな中、サクサク馬具を取り付けていくデデリさん。

途中「コレはどうすれば?」とか聞かれて都度レクチャーして付け終わりました。


「轡や手綱は無いのか?」

との質問を受けます。


空を飛ぶって事はかなりデリケートな運動です。

翼に限らず首や尾、四肢に制限を持たせると失速、墜落の原因になりかねません。

それを兼ねて訓練させるという考え方も有るでしょうが、それは乗り手に合わせる為にグリフォンの能力を制限させているだけです。(多分)

実際裸のままのグリフォンを自由自在に扱っていたデデリさんなら分かっていると思いますが内ももと体重移動で飛ぶことへの指示は問題なくできたでしょう?


なので移動時のデデリさんの疲労軽減の為に鞍の前に持ち手を拵えました。

通常はこれをつかんで今まで通りにグリフォンに指示出してください。


鐙が有るだけでも今までよりかなり楽になると思いますよ

そう説明して前世のオートバイの操縦方法に似た体重移動と鐙の使い方をレクチャーしました。


戦闘時は両手がふさがるでしょうからこの操縦方法はぜひマスターしてください。

「なるほど・・・」

と空を飛ぶシュミレーションを脳内で始めた様。


腹帯の締め具合など細かい箇所を点検、問題ない事を確認して乗って試して貰う様に伝えると今まで潜っていた思考の海から急浮上してサッと鞍に跨るデデリさん。


伏せているとはいえ2mを越える高さをものともせずに飛び乗り、直後そのまま宙に舞い上がる。


何が有るか分からないのでまずは「慣らしで無理はしない様に」と伝えるも今まで通りに縦横無尽に飛び回る。

相変わらず凄えな。


・・・というか段々スピードが増している。

持久力はともかく空を飛んでいるグリフォンの速さは地を駆けるスレイプニルを遥かに凌ぎ、少なくとも『重量軽減』と『空気抵抗の軽減』の魔法付与は正常に起動しているのが分かる。


しかし、ちょっと飛ばしすぎじゃないでしょうか・・・速さに思考が追いついていないと困るので『思考速度上昇』の魔法付与も必要かな、しかしあれは脳にかかる負担がハンパないから飛んでる最中失神したらまずいよな・・・なんて意味のない矛盾した思考を整理していると”ブワサァァァ"と翼をいっぱいに広げでグリフォンが下りてきた。


翼をたたんだ後にグリフォンと一緒に俺に首を向けるデデリさん。

鼻の穴が広がっています。

ドヤ顔です。


「素晴らしい、ただただ素晴らしい」

お褒めに預かり光栄です・・・って言えは良いんでしたっけ、フォネルさん?


「うん、間違ってない」

また苦笑いしています。


「この鞍の座り心地が抜群だ!そこらのソファーより疲れないのでは無いか?滑りにくく、かといって滑らないわけではないこの絶妙な塩梅も良い」

ああ、訓練用、戦闘用はスウェード調の本革にて仕立てましたので。

アルカ〇ターラを意識した肌触りも良い一品に仕上がっておりますです、ハイ。

魔法付与も関係してますけどね。


俺の説明良く分かっていない様だけど「うんうん」と満足そうに頷くデデリさん。


「それに鞍に尻が張り付いている様だった、宙を舞う時の安心感がすこぶる良い。どんな体制でも振り落とされるイメージが湧かない、素晴らしい」

安全面には特に気を使いましたから。

魔法陣の術式の量で言ったら『強化系術式』よりこちらの方が圧倒的に多いですからね。


「因みにそれってどんな付与なんだい?」

フォネルさんなら分かりますかね、緩めですが鞍の座面に向かって重力が発生する作用が付与されています。

合わせて大地と自分の姿勢の位置関係によって強さが変わる優れもの。

これだけでも大分違います。


この魔法を付与したバケツに水を入れて、ぐるぐる回して何回も実験を繰り返しました。

最終的には森に行って魔法付与したブランコを木に取り付け、俺が座って試しましたので実証実験済みの自信作です。


「重力・・・だと?」

やっぱり知ってました?


「いや、全く。どんなもんなのかな、重力って」

・・・まあ、一定方向に引っ張られる力の事ですかね。

地面に物が落ちる理屈もこれが関係するんですけど詳しく説明できるほど自分も良く知らないです。


「良く知らないのに付与って出来るもんなの」

俺の感覚で感じた事ですけど良く分からない、世界の摂理に関わる様な細かい事はこの世界が辻褄合わせる様に補完してくれてるみたいなんですよね。

確証はないんですけど。


「・・・それ、誰にも言ってないよね?」

ええ、それが何か?


「何とも言えないけど国王陛下と宰相様以外にはその話は控えた方がいいかもね、それこそ確証はないんだけど」


・・・そうですか、注意しておきます。

面倒事には巻き込まれたくないので。

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