第63話 付け合わせの氷菓
一生懸命ミルクを加工している俺、クルトンです。
低温で殺菌処理して生クリームになる成分を分離させる為に少々振る。
そして分離した生クリーム成分を掬いだしてホイップ。
・・・といった工程を出来るだけ正確に意識してスキルの恩恵を受けます。
はい、できました生クリーム。
ちょっと緩いですがスポンジの付け合わせには十分でしょう。
因みに金貨に物を言わせて砂糖を買ってきてもらいました。
たっぷり使いますからね、生クリームは。
スポンジケーキを作るのはちょっと時間が無かったので卵、牛乳、小麦粉を使ったいたってシンプルなホットケーキを焼きます。
揚げパンの次はドーナツだとちょっと重いかと思ってこちらにしました。
一応卵白はしっかりホイップしてふわふわにしましたよ。
これに付け合わせとしてたっぷりめのホイップ生クリームを添えて試食します。
「「「「「・・・・・」」」」」
感想が聞きたいのですがどうです?
「美味いとしか・・・いえんな、特にこの生クリーム」
叔父さんがそう言うと首が落ちそうなくらい皆うなずきます。
いや、女性陣はガン無視で食べ続けてますね。
そうですか・・・砂糖たっぷり使うので結構なお値段なりますけど売れると思います?
「財力の有る家なら間違いなく常連になってくれるだろうな」
・・・では、店の一角に軽食コーナーでも設けて、事前に予約注文受けた方に店内で召し上がってもらいますか?
当初の届けるって話とは変わってしまうのだけど、極端に日持ちがしないので仕方ない。
軽食コーナーもテーブル一つで2席でいいと思いますし。
「やってみないと分からんが・・・試してみようか」
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ハイ、そのおぼっちゃまが釣れました。
アイザック叔父さんと相談した後に準備を進め、店内に俺が描いたポスターを張り付けたところ、事前予約とお値段のハードルを易々と飛び越え注文してきた強者がこのおぼっちゃま。
準備後最初の水曜日の午後早々に現れ揚げパンの人の列の脇を悠々と歩いて店内に入ると飲食コーナーに誘導、ちょこんと飲食コーナーの椅子に座っています。
いいだろう、やってやろうじゃないか。
初弾からブチかましてやろうじゃないか。
パンケーキを作りますが予定より少し小さめにしました。
ただしタップリのホイップ生クリームを添えておぼっちゃまの前にお出しします。
一応サービスで紅茶も。
お茶、皿、ティーカップもステンレス製のナイフとフォークは当然俺謹製です。
白狼印の銘入り。
コトッ・・・
「どうぞ、最初のお客様ですので後程もう一品サービスします。なので今回はちょっと小さめです」
「おお・・・これがパンケーキか、では早速頂こう」
言い回しがやっぱりお貴族さまだな。
ちょっと大きめに切り分けたっぷりのホイップ生クリームで一口頬張りました。
「!」
一心不乱に食いついてますね。
ってもうすぐ無くなる、次のを急いで作らないと。
一旦窯の方に戻って仕込んでいきます。
追加で作るのはクレープです。
タップリクリームでかぶりつくあれですね。
アクセントで無花果のジャムを添えます。
なのでクリームの甘さは控えめで。
鋳物で仕立てたフライパンを使って生地を薄く焼く。
出来上がったらクリームとジャム、そして牛乳アイスクリーム。
うん、調子に乗って作った、アイスクリーム。
だって予約の時、前金で倍のお金支払っていくもんだから頑張ったよ。
チップの文化ないのにね、この国。
「どうぞ、クレープというお菓子になります、手で持ってお召し上がりください」
とっても美味しいですよ。
コーヒーは大変だったのでたっぷりの茶葉でかなり濃い目にした紅茶を熱々の状態でアイスクリームにそっとかけてから皿を置く。
昨日の試食では今日使う材料無くなりそうになってたからね。
それくらい凄まじい食いつきだった。
「・・・ほう、お菓子とな」
ちょっと躊躇してましたが両手でつかんでガブリといきました。
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「良かったな、あの調子だと毎週予約してくるぞ」
有難いんですけど大丈夫でしょうか、あそこまでとは正直思わなかったもので。
俺が王都に行ってるとき問題起きませんかね。
「・・・そうだな、危ないかもな(笑)、でも何とかするよ。昨日の話だと保冷庫作ってくれるんだろ、保存も効くし。かえってなんだか悪いな」
大丈夫です。付与の練習もかねて次の王都出発まで準備しますよ。
明日からちょっとづつ皆で作り方練習していきましょう。
慣れですからね。
後にアイスクリームはこの店の目玉商品になった。
クレープは大変だったから、
保冷庫が有れば作り置きも簡単で日持ちもしたからまとめて作れば結構利益率も良いし。
氷菓なのに冬でも売り上げ落ちないくらいの人気になってね、
パン屋なのにどうしたもんかなって叔父さんが笑ってたよ。
皆が笑顔になるのは大歓迎だって言いながら。
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