第62話 デザイン

鞍のモックフレームを製作している俺、クルトンです。


まだデデリさんからデザインの承認取っていないのでまずはサイズ確認の為のモックフレームを製作しています。


木と革を使用してザックリ作るので工房の設備を使えばすぐに仕上がりました。

これを持って訓練場に行きデデリさんを呼んでもらう。



そうしたら警備の騎士さんがバツが悪そうに

「それが・・・まだ降りてきてなくてですねぇ」

そう言って空を指さした。



俺の目でも確認できませんがグリフォンと一緒に飛んでるんですね。

・・・馬具いるのか?


これまたフォネルさんが出迎えてくれて、またお茶と茶菓子を頂く。

「もうね、毎日だよ」

苦笑いするフォネルさん。


「でもデデリ大隊長がグリフォンで戦場に向かったら魔獣討伐の効率は凄まじいだろうね」

この世界、自力で飛べる人間はいません。

・・・いないよね?

なので人間を狙う魔獣も空への攻撃手段を持っていない。

宙から降り注ぐ弓での攻撃に意味が有る理由の一つです。


精霊の加護持ちであるデデリさんが空から急襲する状況を想像し

「でしょうね」

としか言えなかった。


そんな雑談を暫くしているとやっとデデリさんが帰ってきた。

「スマンな、時間を忘れてしまった」

・・・1年もしないうちにカサンドラ工房から懐中時計の発表されるでしょうからそれ持ってた方がいいですね。

ぜひ購入してください、かなり高価だと思いますけど。


「ん?考えておく、それで馬具の話だとか」

時計にはあんまり興味なさそう。

フォネルさんからは「後でその話し詳しく」とか言われたのでそっちにアピールしよう。



侯爵様へのプレゼンなので上等な紙と絵具を使用して式典用と戦場用のデザイン画を何枚か広げます。

練習用は飾りは無しで俺の仕様に合わせてもらうので無視です。


「ほう、これもクルトンが描いたのか。器用な・・・どれも良さげで目移りしてしまうな」

結構悩んでます。


なのでデザイン画は預けるので3日後に改めて返事を聞かせてほしいと告げて鞍のサイズを測らせてもらう。


モックフレームを担いでグリフォンがいる厩舎に行きます。

リラックスしていたグリフォンの目が見開かれて筋肉が緊張したのが分かります。

速攻でデデリさんの脇に寄って行きました。


「そのまま大人しくしていてくれよ」

モックを背に乗せて背との当たり具合を確認。

もうちょい広めにするか。隙間がゼロってのも何かあった時調整が利かないから。

細かいところも併せて確認して今日は終了。

後日デザインの決定案を聞きに来よう。





革工房に再度お邪魔してまずは訓練用のカーボンフレームをスキルで製作。

精製したカーボンを大きな革袋から少しづつ出して触媒用の糸に合成し、糸巻きの要領で紡いでいく。

2時間ほど紡いで今日は終了、帰宅します。

明日は繊維を生地に織っていこう。




「ただいま」


「お帰り、明日は揚げパンどうする。今の仕事結構大事な時なんだろう?」

アイザック叔父さんが心配してくれています。


有難う御座います。

でも大丈夫です。スキルの熟練度も上がってきたので時間的には問題ないです。

ちょっと朝は工房行きますけど。


「そうか、無理はしないでくれよ」


明日の為にこれから大豆を引いてきな粉を作って行こう。

叔父さん達も作ってくれているけど臼を引くのは嫌いじゃない。

意外と気持ちが落ち着くんだよね。


ゴーリゴーリゴーリゴーリゴーリゴーリ

揚げパンやラスクも良いけどドーナツとかカロリーマシマシのも作っていきたいな。

砂糖よりハチミツの方が安いからそっちメインで甘味を試してみようかな・・・。


「それは美味いのか?」

ハッ!ああ、叔父さん。ドーナツですか?ええ、美味いですよ。

バリエーションも色々ありますけど、やっぱり甘いのがメインなので単価がちょっと厳しいですけどもね。


「実はな、怖くて確認してないんだがお貴族様が一人、揚げパン販売の時に購入する人の列に並んでいるみたいでな・・・」


なんか普段着っぽくはあるんだが、明らかに仕立ての良い服を着てる男の子が来るらしい。

尚且つその男の子が列に並んでいる時はショートソードを腰に差したボディーガードみたいな人が何人か周りをウロチョロしてるんだとか。

お陰で変な人は寄ってこないんだが他のお客さんが気を使ってしまっているのでなんとかならないか、

この(おそらく)お貴族様に定期的に揚げパンや今話した新しいドーナツとか言うのをお届けにあがれば解決するんじゃないか、

と言う事らしい。


だから多少値が張っても構わないとの事。


でも、なんかそれだと今まで贔屓にしてくれてたお客さんに悪い様な気がする。

幾ら封建社会でもスジは通さないと見限られると思うんだよね。


「そうだよなあ、なんか良い案ないか?」


別に特別なパンやお菓子なんかは受注生産だから事前に注文してくださいって事で良いんじゃないですか?

バースデーケーキなんかそんなもんだろうし。


「バースデーケーキについて詳しく」

余計な事言ってしまったかもしれない。

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