第58話 グリフォンを呼ぶために

グリフォンで自在に飛んでいるのを羨ましく見ている俺、クルトンです。


マジ羨ましい、俺も自在に空を飛んでみたい。

でも俺が乗るとグリフォンの足が震えててんで役に立たなくなる。

やりすぎたか・・・でもあれくらいしないとこのクラスの肉食獣はいつ牙を向けてくるか分からんからな。

自分が格下だって事はしっかり躾ないといかん、最初が肝心。



ようやく落ち着いたのか泣き止んだデデリさんが下りてきた。

で、俺の手を自分の両手でがっしりつかむと

「ありがとう、本当にありがとう」

と言ったそばからまた泣き出した。


はい、感謝は受け取りましたので、ええ。

何気にこの人侯爵様だからね、平民の俺にここまでされると別の意味でまずい事になる。


グリフォンも賢いもので、

デデリさんといる事で自分が俺の影響受けなくなる事が分かったみたい。

ずっとデデリさんから離れない。


・・・まぁ、いいけどね。


スレイプニルとグリフォンを従え関所を通り訓練施設に併設している兵舎に向かいます。


当然ですが注目されまくりです。

今日はグリフォンが。


デデリさんもずっとニコニコしています。

こんな笑う事あるんだな、この人。

まあ、100歳前にしてやっと自分の騎乗動物を手に入れたんだ。

もしかしたら一生無理かもしれないと思っていただろうしね、そうなるか。


一応早めに分かっているグリフォンの事をデデリさんに話しておきます。

当然肉食。

1日に1回羊や山羊程度の家畜か野生動物を一頭分程度与えた方がいい。与えなくても我慢はするみたい。

内臓から食べるので与える時は枝肉ではなく丸々一匹。

体毛は犬で言うダブルコートになっていたので季節によって毛の生え変わりが有るだろう、毎日ではなくても良いのでブラッシングは定期的に。

排泄物は野獣避けになるみたいなので活用してはどうか。

等々。


あとは一番大事な事、

後先考えずに捕獲してきたもんだから国王陛下の紋章とダブってしまった。

献上・・・とはいかないまでもグリフォンを陛下に報告、お披露目した方がいいのでは?

とのアドバイス、フォネルさんからの受け売りです。


『献上』の言葉が出たとたん物凄い悲しそうな顔になったデデリさんだが

「お披露目は必要か・・・」

と気持ちを切り替えたようだ、キリッとしているさすが侯爵様。


「自慢したいだけですよ」

と、フォネルさん。

なるほど、そういう事ですか。


あと馬具・・・グリフォンも馬具と言っていいのか分からんが、これが必要になるだろう。

ついでだし製作しましょうか?との提案を行う、当然お代は頂戴いたしますが。


「因みにスレイプニルの馬具はお前が作ったのか?」

ええ、そうです。


「おお、そうか、ではぜひ頼む。誰の作品か気になっていたのだ」

では、兵舎でその辺の話を詰める事としましょう。



スレイプニルは厩舎へグリフォンは念のための目印・・・あの革ベルトを首輪のように括り付け空に放す。

デデリさんが「えっ!」って感じで慌てたが「大丈夫です」と宥める。


しかしずっとアワアワしてたので、こちらから始末をつけることにした。

厩舎に戻りスレイプニルの積み荷から携帯用の金床とステンレス鋼を持ってデデリさん達のいる応接室に戻る。


そこで改めて心配そうにオロオロしているデデリさんを宥めて作業を始めます。


トンカン、トンカン、トンカン、トンカン

1mm程度の板状に伸ばし必要分をカット、そこから筒状にまるめつなぎ目をろう付け。

周波数、音量に合わせて長さを決め切断、切れ込みを入れて口を添える所、指で摘まむところに帯状の板をろう付けし厚みを持たせる。

首にかける革紐を通すリングを追加し各部のエッジを削り研磨を施す。


肉盛りした部位に拡声等々、諸々の魔法陣を意匠として遜色ないように丁寧に刻み込んで、仕上げの研磨を施して・・・白狼印の俺の銘を打つためだけに作成した魔法を使いレーザー加工機の要領でそれを刻印。


完成しました俺謹製『犬笛Ver.グリフォン』

この間凡そ40分、まさにクラフトスキルはチートだな。


「これはサービスで差し上げます」

一旦外に出てデデリさんに犬笛を渡し吹いてみてくださいと伝える。


犬笛を口に添えいっぱいの空気を吹き込み、あたりにその音が響き・・・渡らない。

犬笛だからね、人には聞こえないだけで・・・ほら、あれ。


そんなに高い建造物が有る訳ではありませんが庭木や建物同士の間隔もありソコソコ真上に来ないと分かりませんがグリフォンが戻ってきました。

デデリさんの前に降り立ちます。



「おおお、よしよしよしよしよしよし」

ムツ〇ロウさんですか。

しかし、良くなついてますね。


これで大丈夫な事が分かって頂けたと思います。

仕事の話に戻りましょう。

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