第53話 名前も聞かずに
ウォーハンマーの乱れ打ちを披露している俺、クルトンです
自前のハンマーで精錬作業してたところ坑夫の一人が
「それじゃ終わらんだろう」
といってウォーハンマーを渡してきた。
俺の体格からしたら普通の人が使うウォーハンマーでも片手で扱えるので二刀流の連撃スキルでの乱れ打ちを披露しているのが今の状態。
連撃と精錬スキルの重ね掛け出来るんだね、やってみてから気が付いた。
何故かわんこ蕎麦のお給仕さんよろしくどんどんクズ鉱石を運搬、金床併用供給してくれる人が助手に付いて、いつの間にか10人くらいになってしまった。
そして餅つきの返し手のように抗夫長自ら金床に鉱石を供給し続けてくれる。
流れるような淀みない作業。
そこそこの鉄とわずかばかりのミスリルが精錬され、鉄はタイミングを見て金床から弾き出しミスリルのみ金床に残したままそこに鉱石を置き、俺の連撃で精錬を繰り返すと徐々にミスリルが肉眼でハッキリ確認できるくらいに現れてきた。
それを見ていた抗夫達が「おおお!!」と歓声を上げ、さらに金床に供給される鉱石の量が増えていく。
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およそ2日間、累計18時間程連撃と精錬のスキルを発動し続けた成果を今鉱山長が確認している。
まだまだクズ鉱石の山は残っているが、それは凡そ400年の蓄積の結果。
2日そこらではこの山の解消は無理と言うもの。
でも5~7年分くらいのクズ鉱石は処理できた・・・と抗夫長さんが言ってる。
そして鉱山長が比重、重量、純度も含め確認し終わった。
固唾を飲んで皆が注目すると
「純度99.97%、合計重量197,236g・・・市場価格で大金貨3000枚以上になるだろうな」
「「「「「おおおおおおおおおお」」」」
結構取れました。
ミスリルの比重は鉄の半分以下だそうなので凡そ200kgでも見た目の大きさは鉄の2.5倍くらいあります。
これだけのミスリル見るのも初めてでしょう。
俺も初めて。
抗夫さんたちの興奮がまだまだ冷めませんがさすがに俺は疲れたので先に休ませてもらいました。
俺が作業にかかりっきりになっている最中は馬具を外し、鉱山周辺で自由にしてもらっていたスレイプニルたちへ「おやすみ」と告げると宛がわれた部屋に入り、床に敷いた毛布に横になるとそのまま朝まで眠りについた。
ここに限らずベッドが小さいのよ。
翌日、珍しく抗夫さん達が寝不足の様です。
興奮で寝付けなかった人が多かったみたいで今日は臨時休業にするそうです。
今朝から鉱山長との打ち合わせを行います。
「それで君への報酬の件だが、ここまでとなると正直どうしてよいか分からない」
そうですね、俺も考え無しにハンマー振るってしまったので後の事はよく考えていませんでした。
そもそもミスリル取れる前提で鉱山が運営されていませんでしたからねえ。
「どうしたらいい?」
宰相様に丸投げでいいんじゃないですかね、いい塩梅に調整してくれますよ、きっと。
窓口は近衛騎士団広報部アスキアさんでいいと思います。
その位しか頼れる人もいないですし。
「そうしよう、このままミスリルを市場に出しても混乱するだろうし。」
あ、報酬は現物(ミスリル)でお願いします。
「承知した、国次第だが要望は必ず伝える」
宜しくお願い致します。
打ち合わせを終え、昼食をとったらコルネンへ出発する旨を伝えます。
準備の為スレイプニルに櫛を入れ毛の手入れをしているとそれを見ていた抗夫長が近づいてきました。
「見事なもんだな、3頭いっぺんにってのもそうだが頑丈そうでまるで大地から生まれたようだ」
そうでしょう、そうでしょう。
ここまで懐いてくれるの大変だったんですよ。
「そうだろうよ、ここまでのもんとなると金じゃ買えないからなぁ。羨ましい限りだ」
ほぅ、とため息にも似た息をつくと牡馬の首にポンポンと軽く触れる。
ん、抗夫長さんには体当たりしないですね、特に警戒心強いんですけどこの牡馬。
「っは、俺も技能持ちだからな(ニカッ)」
へえ!ビーストマスターとかそんな奴ですか?
「そのビーストなんとかって言うのは良く分からんが・・・俺のは大したもんじゃねえ、俺自身が弱い事を知らせる技能だよ。相手が人でも獣でもな」
「俺が格下って事をな」とお道化た様な表情になる抗夫長さん。
でも、本当に弱いわけじゃないんでしょう、そのガチムチ筋肉ダルマ体形で。
「それはどうかな(ニカッ)」
弱いわけありませんよ、抗夫長さんに何かあったらここの抗夫さん達が黙っちゃいない事は昨日までの様子で分かります。
それだけで脅威ですよ。
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