第52話 何気に鉱山は初めて
思った通り次の日の昼前には鉱山に到着して手続き中の俺、クルトンです。
鉱山では落盤含め事故をゼロにはなかなかできません。
なので坑道に入る時と出る時に必ずチェックします。
戻って来ない人がいないか確認のためです。
まあ、入坑札をひっくり返すんですが。
俺の入坑手続きと一緒に入坑札も今作って貰ってます。
鉱山都市ハルメル。
ハルメルさんが発見したそうだ。
ここはかなり古い鉱山で既に鉱山都市として機能して400年以上の歴史がある。
地球の鉱山の常識からしたら考えられない凄まじい歴史の鉱山。
ここでの採掘は殆どが人力の為、坑夫の疲労の状態にも気を使い入坑時間も1日累計6時間までと決められてます。
疲労により事故を誘発することも広く認識されてるので夜更かしや規定以上のお酒もご法度。
厳しい。
なので前世では荒くれ者のイメージある坑夫もこちらの世界では自主的に規律守るかなり理知的な人が多い。
金銭収入も結構有るとか。
良質な職場には良質な人材が集まってくるのんだなと改めて思う。
さて手続きが終わり坑夫長が話しかけてきます。
「まずは鉱石置き場に案内する、それから坑道案内するよ」
お忙しいところ恐れ入ります。
「なーに構わんよ、もしかしたらクズ鉱石に価値が出るかもしれないんだろう?ダメもとで見ていってくれ」
そんな話をしながらクズ鉱石置き場に向かいます。
おお~これはこれは・・・結構な規模ですね。
ここは比較的古い巨大な鉄鉱石鉱山で、その為クズ鉱石と言われる純度の低い鉄鉱石を保管、放置しているスペースがあり、かなりの山がいくつも出来ている。
純度が低いとはいえ鉄鉱石なのでチマチマ再利用しているそうな。
通常の鉄鉱石は石灰石、石炭を使い手順を踏んで巨大な炉でガンガン製銑しているが、このクズ鉱石は一度細かく砕いてから必要な分を選別して高純度の鉄鉱石に混ぜてやるんだそうです。
気の遠くなるような話に思えますが、砕く作業も比重を測り選別する作業も自動魔法道具が有るそうで、人間はその道具のオペレーションと保守作業に携わるとか。
しかしそれなりに時間はかかるそうでちょっとづつではあるけどクズ鉱石は溜っていく一方・・・と抗夫長の談。
・・・俺の馬力に任せてやってしまおうか。
スキルを使って外観を眺めると本当にうっすらとではあるけれど白い光を発している。
ぼんやりだけど。
ここにも・・・ミスリルが有る。
王都の兵舎で魔獣の分け前の話をしていた時に俺のテンションを抑えるためにスージミ大隊長が話してくれたんだが、通常ミスリルは鉱山で取れるんだとか。
そうだろうとは思った。
ただ、魔獣から素材としてとれるミスリルの方が純度が桁違いに高く、最初から魔素を限界まで蓄えている状態で手に入る為に大変貴重なのだとか。
だとしても鉱山からとれるミスリルの価値が低いわけではない。
未だにミスリル鉱山の調査、発見の為に国の予算が付く位貴重だそうな。
それが少ないながら目の前にある。
少ないとは言っても一つの鉱石に対しての含有量の話だからこれだけの山になるとそこそこの量が取れるんじゃないだろうか。
早速坑夫長に話をする。
こういった話は単刀直入に誤解をさせない様に話すのが後々トラブルを回避するコツだ。
だからこう言った、「あそこにミスリルありますよ」って。
最初は無表情に見えた坑夫長の顔か縦に長くなり目が見開かれる。
「ほ、ほ、ほ、ほ、ほ、ほ、本当か?」
含有量は少ないですが確かにあります。
あの山、俺の技能で精錬しても問題ないですか?
「ち、ち、ち、ち、ちょっと待ってくれ、鉱山長に指示を仰ぐから」
そう言って坑夫長は事務所建屋に走って行きました。
鉱山長とはこの鉱山を取り仕切っている各ギルド連合体の出向役員みたいなもん。
鉱山はそもそも国の所有物なのだけど、一定期間の発掘権をこのギルド連合体が買っている。
つまりこの鉱山では一番偉い人で何かあったらこの人の責任になる、とても重要な人。
はい、鉱山長がやってまいりました。
背筋がピンとした初老の男性です。
「鉱山長のマクアイヤです、宝飾ギルドのクルトンさんでしたな。早速ですがあそこにミスリルが有るとか」
クズ鉱石の山を指さしそう話します。
ええ、含有量が少ないので現状ではいくらミスリルとは言え精錬する手間に見合わないと思います。
が、確かにあります。
「そう話して頂いたという事は見合うだけの手間で精錬できる方法が有るという事でしょうか?」
ええ、かなり乱暴な話なのですけども。
「教えて頂いても?」
構いません、秘密でもないですし。
俺の技能でそれが可能です、ああ、魔法に近いものと認識してもらっても構いません。
ただしそれを行えるのは知ってる限り今の所俺一人の様なのですが。
「一度拝見させてもらっても宜しいでしょうか」
良いですよ、ちょっとやってみましょう。
金床が無いので鉄のインゴットを数個用立ててもらいトンカン、トンカン金床を製作。
そして山から鉱石を抱えられるだけ持ってきて金床の上に乗るだけ載せる。
後は狂ったようにハンマーを振るだけ、ただし魔力を込め、スキルもしっかり使う。
ハンマー一振り毎に不純物が飛び散ります。
鉄、ミスリル以外は不純物とみなしてるので大部分が飛び散り埃のようなミスリルとビー玉程度の鉄が残りました。
これを何度も何度も繰り返してミスリルが小指の先ほどまでに集まるとそれをつまみ上げ鉱山長に渡します。
「・・・・」
99%以上の純度はあるはずです。
ここからさらに純度を高めていけます、続けましょうか?
「・・・必要ありません、この山の精錬をお任せしても良いでしょうか。代金はこれからの交渉ですが納得頂ける額を約束します」
ん、即決ですが宜しいので?
「構いません、責任は私がとります」
・・・ではそうしましょう。
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