第51話 馬(スレイプニル)がいる生活

とにかく高速で手を動かしている俺、クルトンです。


今は馬具の制作に集中しています。

例のごとくスキル全開で。


馬具と言っても色々あって、とりあえず最低必要なものを揃えます。

鞍、鐙、轡や手綱など。


金属、木材、革、布を打って切って縫って彫って・・・。

サイズは牡馬の方にちょくちょく合わせに行って微調整を行います。

この辺はスキル使ってても飛ばせない工程。


馬具は騎手の意図を馬、今回はスレイプニルに正確に伝えるインターフェース機器の様な物。

それでありながら付け心地、乗り心地、肌触りなど長時間装着、騎乗していても不快にならない、疲れない、馬躰の毛や皮膚に負担を掛けない様に機能、性能重視で製作します。


結局は俺の目的の為ですが、協力してもらうスレイプニルへのストレスを出来るだけ減らす為に心を砕きます。

これ大事。



・・・結局6日かかりました。

ちゃんと白狼印の銘も打ってありますし魔法の付与もしてあります。


「なんだか地味な色使いに見えるけど・・・とんでもないわね」

とセイラさん。

お眼鏡にかないましたでしょうか。


「全く問題ないわ、これが有れば騎馬での魔獣討伐の効率凄まじい事になるんじゃない?」


そうかもしれませんね。

姫様への品の魔法付与の練習も兼ねて作りましたから。

多分俺を乗せて走る牡馬より、併走する牝馬の方が先にバテると思います。


「あまり無理はさせないでね。また元気なスレイプニル見せてほしいから」

ええ、なので仔馬、牝馬に疲労軽減を付与した面掛もついでに製作しました。


「あなたはもうちょっと自分のやっている事を自覚した方がいいわね」

自覚はしています。

でもこの事業では手を抜きたくないので。


「・・・そうね。姫様の為、しいては人類の為だもの」

その通りです。


早速馬具を取り付ける。

サイズ調整なんかでちょくちょく取り付けていたので警戒感はもう無い。

有難い事に俺を信用してくれてるみたいだ。

お、やっぱり障泥を付けて良かったカッコいい!


牝馬と仔馬にも面掛を取り付けて今日は王城へ伺う。


パカラパカラとスレイプニルに乗って道を歩くと相変わらず皆が注目してくるが、それでも最初よりだいぶ落ち着いた、良かった。



王城入口でに通行証提示して・・・ああ、いいの、そうだねスレイプニル乗ってるの俺しかいないもんね。

顔パスで通れました。

城の門兵さんに「お仕事お疲れ様です」一言挨拶して入城。


今日はあらかじめ伺う旨申請しているので時間に合わせてゆったり進みます。

面掛を付けた仔馬がいつもより楽しそうにキョロキョロしています。

可愛いのう。


いつもの控室を使わせてもらい今日は宰相さんに挨拶に来ました。

しょっちゅう陛下と会うわけにもいかないし、何故かアスキアさんも来てるし。


「それで段取りはどうじゃ」

今の所順調です、それでそろそろコルネンに戻ろうかと思いまして。


「そうか、陛下の期待もかなりのものだ。くれぐれも頼むぞ」

心得ましてでございますです、ハイ。


「私からもどうか」

ええ、きっと大丈夫ですよアスキアさん。


それで行きがけに恐縮なのですがこの金属がもし手に入るのであればお願いしたいのですが。

と、3種類の金属を記した書類を渡す。

シズネル本部長監修で製作した書類。

「・・・手続きをしましょう、大丈夫だと思います」

アスキアさん、お願いします。




材料、前金、鉱山までの地図も頂き準備は一応できた。

ひとまず近場の鉱山によってコルネンに戻ろう。

魔獣の肉もあるし、なくなれば途中で狩りでもすればいい。


急ぎはするが無茶はしない。

スレイプニルを手に入れて大分余裕ができた。

牡馬の首をひと撫ですると早速またがって王城を後にした。


その後、もう一度宝飾ギルドとポックリさん、そして兵舎でスージミ大隊長に挨拶とお礼をして王都を出発する。


鉱山はここから馬車で4日程、意外と近い。

鉱山と言っても山と言うより丘で、緩やかに地面に潜っていくような坑道になっているとか。


入口には常に土嚢が積まれているが、たまに大雨が降ると坑道に雨が流れ込み閉じ込められる事も有ることから、局地的でははあるがその辺一帯の天気を予測する専門の魔法使いが常駐しているらしい。


必要に駆られたとはいえ凄いな、魔法で天気予報。

どうやるんだろう。




サクサク軽い足取りですがそこはスレイプニル。

風のように進んでいく、しかも上下運動が殆ど無い。

この速度でどっかり鞍に座っていられるほど安定している、凄い。

スージミ大隊長が言ってたが俺が乗る個体は特に大きいようだ。

通常体高2.5m程らしいのだがこの牡馬は3mを越えていて体重も2t近いから本当にバケモノクラス。

・・・ヘッドロックしていた俺も俺だな


馬具の付与効果も相まって絨毯に乗っている様で、このままなら1日で着くな。

明日の昼には間違いなく到着すると思う。


これから行く鉱山は鉄、スズや磁鉄鉱が採れるそうだ。

1箇所から複数の鉱石を発掘できるのが普通なのかは分からないが、それはまあいい。

とにかく着いたら早速必要な鉱石、金属が有るか確認しよう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る